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旅07-KracとHrad、スピシュ城にて

中欧を南下するコースでちょっと変わったコースを取った理由は効率的にスピシュ城を訪れたかったからだった。山がちなスロバキア東部、その象徴のように山の上に立つ城である。

ここ最近雨がちだったのだが、バスから“スピシュ城まで3km”の標識が見えたところ辺りから晴れ始める。バスは幹線から横道へ。目の前に飛び込んできた城の迫力。丘の上にポツンと立っているイメージだったが、ドカン、である。歩いて丘を登る。登り道はきついが楽しい。城がカッコイイ。素晴らしくカッコよく、カッコよく素晴らしい。日に照らされ、風に吹かれるのだ。

ちょっと横道に逸れます。
僕がスピシュ城に来ることを選択したのは、この城の写真を見てクラック・デ・シュバリエを思い出したからだ。ポーランド、チェコ、スロバキアでは“城”を“hrad”というが、シリアにあるクラック・デ・シュバリエの”Krac”も城という意味である。その時にブログに書いたものを載せます。“クリフ”は日本人が皆世話になるサーメルが当時いたアンマンの宿、“ハマ”はシリアの町中で水車が回っている素敵な町だ。
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僕らはクリフで出会い ハマで再会し
クラックを訪れた
ラピュタの舞台とされる城で
パズーとシータのように戯れ
城の上 自然に輪がほぐれ
ひとりひとりオモイオモイ
我先に進む者 ただし急ぎすぎず
ゆっくり行く者 ただし離れすぎず
たまに2人に そしてまた1人に帰ってゆく
ただ 風に吹かれ 景色を見廻し
そしてまた風に吹かれる
皆を見やる どんなこと考えてるのだろう
同じこと 違うこと
でも問わず 知りたくもあり
しかし 知ることを急く気はなく
聞きたくもあり しかし
聞く必要もないような
心は旅に注がれ
いつの間にか日本の生活に
いつの間にか我自身に注がれる
自分しかいないような だけど
ひとりじゃない空間
現実離れしたひととき
これが現実なのかと静かに驚く
そしていつの間にか
また1つの輪になった
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こんなことを勢いで書くくらい(20代)の心地よさと静かな感動。
だから僕は旅をしている。おそらく。
クラック・デ・シュバリエは僕の歴代の旅先でも最も重要な場所の1つ。ここから、僕の海外一人旅第2章もしくは第3章が始まったのだ。それまではその後の生活で関らない旅仲間と連絡を取ることもなく、どちらかと言えば、日本人を避けたり、単独行動を多くしていた。今、旅仲間はかけがえのないものだ。それはここから始まっている。会社を辞めて長旅をする決断の最上流に位置してるはこの日だと思う。あの風を感じること。それがつまりは旅の目的の1つである。note名の『くらっく』にはこの意味も含まれている。理由はそれだけではないので是非辞書で“crack”をひいてみて頂きたい。そして、いつか“crackpot”が “crackajack”になれますように。

現在へ。
城から眼下に見える街。この町に泊まればよかったか?と思うくらい美しい田舎町だ。明るい色とりどりの家。小川が流れている。小川がいい。
バスの時間が近いが少し余裕がある。もう一度登ろう。今度は草の茂る道を選ぶ。丘の中腹。大きな岩の上。城と町を交互に見て、同一視野に両方を入れて、その先を見ている。

風に吹かれながら。一人で吹かれる風も心地いいものだな。

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