見出し画像

第7回「大地真央と植木等」

「インディジョーンズ/魔宮の伝説」の冒頭のシーン。1930年代の上海のナイトクラブで赤いチャイナドレスを着たヒロイン役のケイト・キャプショーが歌っているのがコール・ポーター作詞・作曲の名曲「Anything Goes」
ミュージカル「エニシング・ゴーズ」の日本初演は平成に入った1989年夏、日生劇場。ナイトクラブの歌手リノ・スウィーニーが大地真央さん、神父に化けたギャングの大物ムーンフェイス・マーティンが植木等さん。演出・振付は、当時、新進気鋭の宮本亜門さん、共演は、川崎真世さん、岩崎良美さん、太川陽介さん。大地真央さんは、宝塚時代、退団してからの東宝ミュージカルの舞台を何度か見てファンでしたので、この夢の顔合わせが実現し、とてもうれしかったです。
大地真央さんは、この舞台に先立つ1987年、帝国劇場の「風と共に去りぬ」でスカーレットを演じ、お父さん役のハナ肇さんとも共演しています。レット・バトラー役は松平健さん。



稀代のエンターテイナー2人が共演する舞台は、とても素晴らしいもので、劇中2人が歌い踊り、笑わせながら「フレンド・シップ(友情)」をデュエットする場面は丁々発止のやりとりで、舞台全体を包み込むオーラをビシビシと感じました。植木さんは、「ユーウツな暗い時でもチュン チュン トラ ラララララ 明るく歌え 幸せ呼ぶ歌を けなげに歌う青い鳥」という歌詞の「ブルーバードのように」をソロで披露しています。

この舞台について、演劇ジャーナリストの扇田昭彦さんは、「爆発的活力と晴れやかなナンセンス気分が一体となった、じつに楽しく躍動する舞台をつくりだした。あまりの楽しさに、終幕近く、私は"ああ、終わってほしくない。時間よ、とまれ!"と切実に思ったほどである」と解説しています。また、小説家・コラムニストで「日本の喜劇人」の著者小林信彦さんは植木さんに宛てた書簡で「先日は、すばらしい舞台をみせて頂きました。あの歌と動きは植木さんしかできないでしょう。お世辞ではなく、植木さんは昭和・平成の最大のコメディアンです。大地真央と五分でデュエットできる人は、他におりません」との賛辞を送っています。

2017年8月にNHK総合テレビで放送された「"植木等の時代"の魅力に迫る」の中で、大地真央さんは植木さんとの共演について、次のように語っています。
ものすごく真面目で努力家の方でしたね。ピアノのそばで何度もステップと一緒に歌をやってらして。もう十分なのにと思ってもすごい努力家というか、ものごとに向かう姿勢がとても真摯で、こういう風にやるべきだなって、とても刺激を受けました。

2017年に植木さんの出身地である三重県立博物館で開催された展覧会「植木等と昭和の時代」を紹介する冊子の中でも、大地さんが「憧れの植木等さん」という見出しで、植木さんについてインタビューで次のように語っておられます。
Q もともと大変な植木さんのファンだったとうかがっていますが。
A 小学2年生の頃、クレイジーキャッツのメンバーとしてのエンターテイナー植木等さんと、無責任シリーズの中のコメディアンの植木等さんをテレビや映画で拝見して、そのどちらも大好きで大ファンだった私は、ミュージカル「エニシング・ゴーズ」でご一緒できる事を知って、嬉しくて飛び上がる思いでした。顔寄せで初めてお会いできた時は、ただただ感激していました!
Q 初共演の植木さんの印象はいかがでした?
A お稽古場では、意外にもの静かでいらして、品がおありで、とてもジェントルマンな方でした。ご実家がお寺で、ご自身も継がれるつもりで勉強していらしたと伺った時は、あの佇まいは、そういうところからきていらっしゃるのかと納得したものでした。
Q 映画でも歌い踊るシーンは多々ありましたが、このミュージカルでの植木さんはいかがでしたか?
A 「踊りながら歌うなんて、ミュージカルは難しいよ」と仰っていましたが、歌は勿論お上手で、声も魅力的でした。ダンスのステップも、歌のリズム感も素晴らしく、階段の上り下りも!とっても軽やかで驚きました。芝居の間が絶妙なのは言うまでもありません。その上、華がおありなので、舞台がパッと明るくなる様な印象でした。
Q 最後に、植木さんとの思い出をお聞かせください。
A 私が、「植木等さんが大好きで、お嫁さんになりたいくらいだった…」と言っていたのを聞かれて、出演を決めてくださったと伺ったのですが(小学2年生の時のことでしたが…).「僕は死んだふりして眠っていたのに、真央ちゃんに起こされた」と仰ってくださいました。
それから、公演の千秋楽に催した、私のファンクラブのイベントで、私にはサプライズで、お忙しい中、ボイスメッセージをくださいました。それがとっても温かく、思わず、涙が溢れ出ました。ファンの方々も涙…(笑)その会場は感動に包まれました。その時、ご一緒できた事に、改めて心から感謝したことは、今でも素敵な思い出として、私の心の中でしっかりと息づいています。

#クレイジーキャッツ #宝塚#エニシングゴーズ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?