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第6回「加山雄三と植木等」

植木等さん同様、私の子供の頃からの憧れのスターは加山雄三さん。1960年代の「明るく楽しい東宝映画」を象徴するこの2大スターの看板シリーズが同時上映(当時は2本立て興業)されたのが1968年の正月映画「日本一の男の中の男」「ゴー!ゴー!若大将」です。1月2日、正月らしい華やかな雰囲気の広島東宝の館内に入ると立ち見客で一杯。上映終了後は、非常扉を開けてお客さんを捌いていました。

この2人が映画で共演したのは、一度だけ。1967年のゴールデンウイークに当時の日本映画では画期的な一本立てで封切られた東宝創立35周年記念映画「クレージー黄金作戦」です。ハワイ、ラスベガスなどに長期ロケした超大型喜劇で、ワイキキの浜辺で植木さんが金髪美女に囲まれ、気持ちよく「二人だけの海」をウクレレを弾いて歌っていたら、美女たちの視線は波打ち際へ。加山さんの若大将がギターを弾きながら登場、「お呼びでない?こりゃまた失礼いたしました!」とかますシーンに場内大いに沸きました。後にテレビの対談で植木さんが「加山ちゃんが植木の映画っていうんでしょうがなく出てくれてね、お呼びでないってやってくれたのがうれしくて」と話すと、加山さんは「でもあれ、僕やりたくってしょうがなかったんですよ。本当に。だから結構ノッてやったと思うんですけど」と答えています。

テレビでは、1967年から1968年にかけてTBS系で放送され大人気となった大人も子供も楽しめる植木等さん初の冠番組「植木等ショー」に加山さんはゲストで2回出演、68年12月には、若大将映画でおばあちゃん役だった飯田蝶子さんと共に出演されています。

平成に入ってからも、1991年から1992年にかけてTBS・毎日放送系で放送された「植木等デラックス」に加山さんがゲストで出演。


この番組は、その後ブック化されましたので、植木さんと加山さんの対談の模様を一部抜粋して紹介します。
(植木)お互いシリーズものを映画でずいぶんやったけど、加山ちゃんは2枚目で僕は3枚目というこの1枚の差がね。すごい人生の差になったったというか。あ、でもね共通点が一個あったんだよ。若大将と無責任男の。学生服!
僕は四十四、五歳まで着てた。
(加山)僕は二十九歳から三十歳くらいまでですから、そりゃ相当上ですよ。
(植木)アハハハハ。いやいや、共通点と言っても、学生服着たっていうだけで、芝居の質が全然違うじゃないの(笑)
(加山)でもやってることっていうのは、つまり映画の中でヒーローをやってるわけでしょ。歌をうたってお客さんを楽しくさせるところは同じですよ。ただシチュエーションが違うだけで、共に人間としての魅力っていうのはあると思います。
(植木)お父さん(上原謙さん)の七十七歳のお祝いを帝国ホテルでなさったときに、親父を讃える歌っていうのを加山ちゃんが歌って、お父さまが隣でうれしそうな顔して、立派に成長している息子を見てる、その笑顔がまたこれねえ、いいの。今日はこの会に出席させてもらって良かったなって、僕は帰るときにね、加山さんよかったよって思わず握手したけど。
(加山)本当にうれしかったですよ。その言葉。

加山さんは2013年6月20日にニューアルバム「MESSAGE〜加山雄三J-Standardを歌う」を発表。その中に「スーダラ節」を収録していますが、植木さんが以前録音したトラックに加山さんが新たに歌声をレコーディング。時を超えた夢のデュエットが実現、加山さんの植木さんに対する想いが感じられます。

#東宝映画

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