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伏線回収としての解剖生理学 三木解剖学への誘い(1)

 医学における基本と言えば、なんといっても解剖生理であることはいうまでもありません。しかし、実に冗長なこの知識体系は、ただ教科書を漫然と読んでもなかなか興味が出にくいのも事実。今週末は、統合医療学会主催の認定講習会で「解剖生理」を講義するのですが、する側もまた一苦労です。そこで一つの提案、工夫を述べてみたいと思います。

 解剖生理学に関しては、細かなことを網羅的に知ることよりも、一つ一つの事柄を記憶に留めやすい形で理解するために、大きな物語(ストーリー)が必要です。
 そうした流れを持っているのが、いわゆる三木解剖学(三木成夫による解剖学)だと感じました。試験などでは個々の要素(知識)が重要ですが、自らの健康増進に役立てるには、全体を一つの物語として理解することはとても重要です。
 そのためには、「進化」の視点を盛り込みながら、植物性と動物性という二極の相互作用(陰陽)として説明する三木成夫の視点が最適であると考えました。(先日、進化生態医学を先導される未来医療研究機構の長谷川敏彦先生にお会いしてきましたが、進化という視点は今後の人口動態変化に基づいた新たな医療体制を考えるに当たっても不可欠であるというお話を伺い、ますますその重要性を感じました)

 三木はまず、生命の基本構造として一本の管「土管」の構造を示します。そしてそこでの機能を植物性として吸収・循環・排泄の順に解説していきます。ついで、それが逃げる、闘うといった動物性の機能を有するようになり、それを受容・伝達・実施として解説しています。そして、進化の最終形として人間は二足歩行し、文化・社会を形成します。
 そこで問題となってくるのが、動物性器官の植物性器官への介入です。これにより狭心症や脳卒中などの疾患が生じてくるしくみも三木は説明しています。そして、これは逆に癒しの方法論として、動物性器官によって植物性器官へ介入することが可能である、ということも意味しています。それが呼吸法で、健康法の代表といってもよいでしょう。

 このように統合医療という、通常の医療よりも広範な医療を射程に入れるには、三木成夫の解剖学の視点が最適であると思います。まずは、解剖生理の概略をみてみましょう。
 それぞれの「系」では、細かい説明は成書に譲り(つまり細かな事柄の学習は各自のテキストなどで自習してみてください)、膨大な解剖生理の世界で迷子にならないように、大きな道筋としての一つの「物語」を提供してみたいとおもいます。これにより全体像がつかみやすくなると思います。

 昨今、分かり易い世界史の本が多く出版されていますが、現代社会における国際事情や、地理的な知識など、時間軸を動かして理解すると分かり易いのはいうまでもありません。とくに現在の国際問題などは、世界史的知識を伏線として考え、伏線回収として理解することでかなり分かり易くなりそうです。身体に関しても同様です。現在の完成形である解剖生理を、進化的知識を伏線として回収していく。こうした時間軸を含めた理解は、医療に幅広い解釈を可能にするのではないでしょうか。

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