小池統合医療クリニック

日本ではまだなじみの薄い「統合医療」という概念を紹介することを目的にしています。統合医…

小池統合医療クリニック

日本ではまだなじみの薄い「統合医療」という概念を紹介することを目的にしています。統合医療とは、ただ「代替医療」を適当に取り入れた医療ではありません。 関心のある皆様とともに「統合医療」を通して現代医療のもつ様々な問題を考えていければ幸いです。

最近の記事

マトリックス医学の概略

 様々な観点でマトリックス医学を描出してきましたが、ここで現状での概略をまとめてみたいと思います。そもそもマトリックスは生物学的には細胞質などの表現として用いられていますが、一般的な意味での基質、母体、内容物に対しての梱包材など、幅広い意味を持ちます。ここではそうした広い意味でとらえていきたいと思います。梱包材(実体・実内容)といった形で列挙してみます。 1)ファシア<collagen, fascia, fibrosis> ⇔(組織・臓器) 2)物理・化学・環境<温度・気圧

    • マトリックスとしての微生物の存在 細菌・真菌・寄生虫

       マトリックス医学の展開の一つとして、病態形成におけるマトリックスとしての微生物について、メモ的に考えてみたいと思います。  以前から、外傷のない蜂窩織炎の発症を何度も経験しているのですが、時折テレビなどではブドウ球菌等の細菌が「なぜか」詳細不明で、蜂窩織において炎症を生じるといった説明がされています。またはどこか見つからないところに、小さな傷が出来てそれが原因、といった説明がされることもあります。  ただこれらに関しては、発症の経過を観察していると、血中に存在する細菌が、

      • ファシアの病態についての考察(神経堤・EMT・関連痛など)

         線維化病態を含めたファシアの病態についての考察のメモです。  「コラーゲン➡ファシア➡線維化」といった階層で考察していきます。まずはコラーゲンからの変化についての介入として、ビタミンC点滴や栄養療法などが挙げられます。次いでファシアから線維化への流れは、コラーゲン線維周辺の水分子の状態(これ自体がエバネッセント光など生気論的な生命観とも強く関係)と、その異常が集合した形でのファシアの重積病変もしくは血管病変(ビタミンC欠乏による壊血病も考えられる)、またはフィブリン網(フ

        • 外縁としてのマトリックス医学再考 「外辺医療」を考える

           マトリックス医学の概略を考える中で、人類学の新しい見解から大きな示唆を得ましたでの少しメモしておこうと思います。  世界史・人類学に関しては、これまで騎馬民族を起点として全世界史を概説した栗本先生の説が最も納得のいくものだったのですが、これをさらに補強する視点の解説が『反穀物の人類史』(みすず書房)です。  狩猟採集民から発展して農耕民となり、国家の形成へとつながるという従来の定説?とされる常識を覆すようなスリリングな内容です。本文においては、狩猟採集民を野蛮人とし、農耕

        マトリックス医学の概略

          カフェのもう一つの参考図書 「過剰医療の構造」

           統合医療含め、コロナ禍を経過した現在、あらためて「医療」の問題を強く問いかける本です。同業には受けないというより、まさにタブーに近い内容かな、とも感じますが、我々は改めてここでの著者からの問いかけを何らかの形で実行すべきだ、と強く感じさせられる内容でした。  そのため今週のジャングルカフェの前に、もう一つの参考図書として下記のものを挙げたいと思います。雑誌の特集を書籍化した内容なので、全体としては解説あり、対談あり、の読みやすい内容だと思います。  今度の課題図書は、幕末

          カフェのもう一つの参考図書 「過剰医療の構造」

          統合医療総論の構築 (総論の脱構築による組織運営論への第一歩)

           前回、少し記載した統合医療の総論について解説してみましょう。内容が内容ですので、分かり易いとは言い難いのですが、出来るだけ簡易に述べてみたいと思います。  内容の性質上、以下、である調で述べます。  統合医療の総論の骨子として、大きく三つのカテゴリーに大別して考えることにする。 第一は、統合医療が「統合医療」であるための最低限の要素、つまり「原則(プリンシプル)」。  第二は、実際の在り方、つまり診療を中心とした医療としてのモデル、さらには実社会への適用としての社会モ

          統合医療総論の構築 (総論の脱構築による組織運営論への第一歩)

          組織運営論としての「統合医療総論」という考え方

           最近、統合医療総論の作成に係っており、そのために内面で統合医療とは、という問いに向き合うことが多くなっています。そうした中で、診療とは別に、色々な組織やらカンファレンスに関わる機会も増え、次第に、組織の運営にも統合医療総論が役立つのではないか、と思うようになりました。  何も統合医療は別に万能だという考えや実感もないのですが、硬直した組織や考え方、もしくは新たな方向性の模索をするにあたっては実に有効な面が多くあるのです。  その第一が、原則の1でもある「補完性」という概念

          組織運営論としての「統合医療総論」という考え方

          身の維新 ジャングルカフェの4月課題図書と参考図書

           来月4月のジャングルカフェの課題図書が決まりました。会員や関係者の方々にはすでに連絡が行っているかと思いますが、今回は珍しく医学史関係です。それもいろいろ厄介な「幕末維新」です。  課題図書は一見とっつきににくそうですが、主人公的な和方医はなんと「るろうに剣心」でもおなじみの赤報隊隊長、相楽総三の右腕と言われた人物なのです。ここまで読んで興味を持った方は、是非、御一読を! また、みんなで読みたい方は、カンファレンス協会までご連絡を(笑)(当協会にご興味ある方は「ジャングルカ

          身の維新 ジャングルカフェの4月課題図書と参考図書

          お城コラム 犬山城

           城郭検定を受験するか否か、思案の毎日(笑)なのですが、その過去問に、天守最上階が赤絨毯の城は?という問題があり、久々に思い出したので、今日は犬山城です。ちなみに検定なんて受けてどうするんだ?という声も聞こえてきそうなのですが、これはやはり結果ではなく、プロセスだと!というくらいしか理由はないですね。合格証書をクリニック内にはってもしょうがないし(^-^;  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  現存最古といわれる国宝天守、犬山城(43・愛知)です。押印は平成23

          お城へ To Go (二条城)

           京都の城らしくない城といったイメージの二条城(53・京都)です。押印は平成22年9月18日ですが、京都の高雄病院の研究会に参加する折などに数回立ち寄っているので、結構訪問している印象です。歴史に興味がないと「鴬張り」の記憶しかない、という知り合いもいます(笑)  かつては五重の天守が聳える堅固な要塞でもあり、縄張り的には輪郭式の平城になります。一般に城の印象が薄いのは世界遺産にもなった国宝御殿のインパクトが強いからでしょうか。  幕末最大のイベント大政奉還の行われた場所と

          お城へ To Go (二条城)

          立花宗茂残照

           昨年の今頃は、熊の脅威におびえながら鎌刃城を雪の中、登城しておりました。それ以降、世知辛い資格の取得などに追われ、城にあまり行けない一年でした。  そんな中、年末に、最強の誉れ高い戦国武将、立花宗茂の小説を読んでおりました。新書などの解説でもとびきり興味深い武将なのですが、小説だとまた少し味わいが異なって、また良いのです。  『尚、赫赫たれ』という小説なのですが、全盛期の宗茂ではなく、江戸時代になってから、つまり晩年の回想も交えた内容になっています。雰囲気はちょっと違いま

          統合医療の総論を考えるということ

           マトリックスの記事を年末年始にかけて書いてから、しばらくこちら開店休業でした。m(__)m  12月の統合医療学会から、統合医療とは、という総論の作成に時間をとられておりました。まったくもって一般の方々には、関心がないであろうテーマなのですが、実は、統合医療に携わる人にとっては避けては通れないテーマでもあるのです。  統合医療って何、と聞かれたときに多くの方(有名な先生方も含めて)はなんとなく代替医療や伝統医療などを含めた、優しさあふれる医療、みたいなイメージを持たれる

          統合医療の総論を考えるということ

          マトリックス医学への道(4)

           いよいよ慢性炎症の行きつく先、線維化にいたる道筋です。近年、流行りのテーマでもある線維化へ、ファシアの病態がどのように接続していくか。先端の基礎医学と、補完代替医療系の大きな溝により、ほぼどこもコメントしていない状況ですが、丁寧に思考していけば、特に大きな隔たりもなく、連続した概念であることは明白です。しかし、我が国でのファシア研究とエネルギー医学系との隔絶などを考えると、この二つの概念が同時に語られるには、まだまだ時間がかかりそうです。ここまでの議論と現状を併せて見ていこ

          マトリックス医学への道(4)

          マトリックス医学への道(3)

           前回はファシアにおける病態の基礎を形成すると考えられる「ファシア瘀血」の概念を解説しました。  これにより、ファシア重積など、マクロ的にボディワークによって解消される病態の原因が推測され、それは本ブログにおいては「Bファシア」と称してきました。一方、ミクロ的に、エネルギーワーク的な微細な介入によって改善される病態の基礎を「Eファシア」としました。つまり末梢循環における病態を示すファシア瘀血という概念は、このBファシアとEファシアの境界に位置し、双方の説明原理ともなるものだと

          マトリックス医学への道(3)

          マトリックス医学への道(2)

           コラーゲン線維周辺の水分子の状態から、慢性炎症への準備段階へとつながるミクロの環境について前回は解説しました。今回はそれに引き続く、末梢循環のミクロな環境において、どのように循環不全の火種が生じるかを考えていきます。  末梢循環のモデルとしては動脈が枝分かれして次第に毛細血管へ移行し、ガス交換の後に、静脈へと合流していく。そこではガス交換に限らず、栄養やホルモンといった物質の移動も行われ、組織外液は一部、盲端となっているリンパ管に吸収され静脈へと環流される。これが通常の解

          マトリックス医学への道(2)

          2024年 新年あけましておめでとうございます!

           新年あけましておめでとうございます!  昨年末は統合医療学会静岡大会でした。ジャングルカンファレンスや、基礎医学検定、統合医療総論の哲学などを発表し、新しいメンバーも参加してくれました。本年は、宇都宮大会です。また新たな発表に向けてスタートしたいと思います。  本年もよろしくお願いいたします!

          2024年 新年あけましておめでとうございます!