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ファシアの病態についての考察(神経堤・EMT・関連痛など)

 線維化病態を含めたファシアの病態についての考察のメモです。

 「コラーゲン➡ファシア➡線維化」といった階層で考察していきます。まずはコラーゲンからの変化についての介入として、ビタミンC点滴や栄養療法などが挙げられます。次いでファシアから線維化への流れは、コラーゲン線維周辺の水分子の状態(これ自体がエバネッセント光など生気論的な生命観とも強く関係)と、その異常が集合した形でのファシアの重積病変もしくは血管病変(ビタミンC欠乏による壊血病も考えられる)、またはフィブリン網(フィブリン増加のメカニズムに関しては後日別稿にて)との連関による重積の増悪が考えられます。

 この中で、とりわけ線維化病変は、機能障害をもたらすのみでなく、周辺の神経や血流の障害にもなりうるし、また視点を変えれば、線維化という現象が生じていることから「上皮間葉転換(EMT)」として付近の「がん化」も考えられます。

 この際ファシアが神経堤細胞由来でもあることを考えると、周辺の血管との相互関係の中で、リプログラミングにより線維芽細胞へと先祖返りして別物へと転換する、というシステムも想定できそうです。つまりファシアの病変は、これまで想定した重積による神経・血管障害によるものだけではなく、神経堤細胞由来(ファシアすべてがそうだというわけではありません)であるがゆえにEMTにより、がんの悪性化にも関与しうるのではないかと推測されます。

 また線維化自体が引き起こした慢性炎症が、ファシアを経由して他の部位に飛び火することも考えられます。これに関してはダニエル・キーオンも、関連痛と従来考えられている痛みも実は、神経弓の反射により体表に投影されるモデルではなく、ファシアによる直接的な連携(おそらく神経線維の流れと関係)により痛み物質が拡散しているモデルを想定しています。液性因子としてのプレリンパの関与が濃厚でしょう。確かに狭心痛などの痛みを、体表の感覚神経だけで考えるよりは、胸壁へと接続したファシア全体の痛みとして捉える方が合理的な気がします。

 また、ファシアという概念からだとどうしても整形外科的な領域の考察に留まる傾向がありますが、これも発生における神経堤細胞の重要性を考えれば、あらゆる内臓の調整システムと深い関係があることは容易に推測できます。鍼灸の多彩なメカニズムの説明としても、十分な理由になります。つまりファシアというある種原始的かつ地味な組織は、あらゆる調整系を介して内臓全てに影響しているわけです。経絡・経別の言わんとしていることはここにも立証されているように思います。

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