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マトリックスとしての微生物の存在 細菌・真菌・寄生虫

 マトリックス医学の展開の一つとして、病態形成におけるマトリックスとしての微生物について、メモ的に考えてみたいと思います。

 以前から、外傷のない蜂窩織炎の発症を何度も経験しているのですが、時折テレビなどではブドウ球菌等の細菌が「なぜか」詳細不明で、蜂窩織において炎症を生じるといった説明がされています。またはどこか見つからないところに、小さな傷が出来てそれが原因、といった説明がされることもあります。
 ただこれらに関しては、発症の経過を観察していると、血中に存在する細菌が、末梢において目詰まりして、発症しているようにしか思えない例にあたります。つまり、血中は完全な無菌とされていますが、実はそうではなくて、ひっそりと共存するいわば「静菌」状態に近い状態にあるのではないかと思うのです。

 ここから考えると、リーキーガット症候群などの発症モデルとして注目される、カンジダなどの「深部真菌症」もこれに似た状態と考えることが出来そうです。
 通常、腸管での生息が想定されますが、新鮮血の観察でも時折、カビ状の構造物が見られますので血中の可能性も否定できないのかもしれません。
 またこれらの真菌は、消化管細胞の結合部に割り込み、その接合を壊しすき間(穴)をあけ、そこから内部のものを漏出させるきっかけとなります。栄養物の漏出のみならず、白血球のように、細菌などの微生物がファシアへ移行することも出来るはずです。また治療法として、抗真菌薬のみならず生薬の黄ゴンやオリーブの葉などが挙げられますが、これらによる揺り返しとしてダイオフという強い反応を引き起こしやすいことも特徴的です。オウゴンの副作用として挙げられる反応のいくつかには、こうしたダイオフの関与も無関係ではないのかもしれません。

 そして新鮮血観察において気づいたこと、というか驚いたことの一つが、寄生虫とりわけ線虫様の構造体が時折観察されてくることです。
 糞線虫症として明らかな発症をしていなくても、我が国でも南西部を中心に健常者においても、軽微な症状ながら線虫の存在報告がされてきました。とくにフィラリア症におけるリンパ管の閉塞といった病態は、その虫体自体のファシアでの存在が強く想像されます。また新鮮血観察をされている先生方からも、線虫らしき存在が観察されているようです。さらに学会報告などでも、ファシアほどの内部ではありませんが、膀胱内や膣内での自由生活線虫が観察されています。
 また体内での常在性を示唆する傍証としては、近年話題のがんにたいする線虫検査の存在です。確かに機序としては、嗅覚の鋭敏さで説明出来るのでしょうが、あれほどまでに反応するのであればこれまでの遺伝上において、がん細胞との相当の遭遇機会があったと考えても不思議はないのではないでしょうか。また線虫の赤血球内部への侵入を示唆する観察例と合わせると、解糖系に引き寄せられる可能性も否定できないでしょうし、それゆえにワールブルグ効果ともリンクしそうな気もしています。
 また、線虫自体のどのような活動がきっかけとなっているのかは不明なのですが、末梢の新鮮血においてフィブリン増多が観察される機会が多いようにも思います。それゆえにネットに細胞が捕捉され、血流悪化などの契機にもなりそうです。つまり好酸球増多ともあいまって、ファシア重積さらには線維化の促進につながる可能性も考えられます。臨床的には根深い瘀血病変のようにも感じています。

 これら以外も微生物、とりわけ線虫に関してはいろいろと考えられるのですが、概略としてこの辺にしておきます。つまりヒトの多彩な病態の中には、背景、マトリックスとしての微生物の存在が示唆される例が、意外に多く存在しそうです。従来の医学的常識の枠に大きく抵触することなく、治療に向けたヒントが多く含まれているように思うのです。メモ的なものなので雑駁な内容になりましたが、また改めてまとめてみたいと思っております。

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