コイケジュンコ

美術作家。 ★作品集「となりのカフカくん可不可・紙服・妄想服」パラボリカ・ネットショッ…

コイケジュンコ

美術作家。 ★作品集「となりのカフカくん可不可・紙服・妄想服」パラボリカ・ネットショップ・一部書店にて取扱中!

最近の記事

少女小説界の浮世絵 ー花井愛子的宝塚入門『夢行き階段』<1>

突然だが、私はスポーツ漫画が好きだ。スポーツすることは苦手だが読むとなったら話は別。 スポーツ漫画は成長物語であり、チームメイトやライバルが多数登場するだだっ広い群像劇である。また、試合中の緊張感ある攻防戦、ピンチ時での覚醒など、日常と非日常のメリハリや高揚が読み手として駆り立てられるからだ。 少女漫画でそれに当てはまる非スポーツ漫画がある。それが演劇漫画だ。 その代表中の代表が『ガラスの仮面』だろう。美内節も相まって、どんなスポーツ漫画よりスポ根であった。文字通り血が滲む

    • 少女漫画の「1ミリ」事情

      昔から少女漫画が好きだが、作品のために2000年代からセリフ表現に注視するようになって、ある単位が気になり始めた。 「1ミリ」である。 この15年ほど、私はさまざまな少女漫画に触れてきた。そこで感情の大きさを表現するときの共通点に気付いた。 感情を、殊に否定的に表現するとき「1ミリ」が多いのだ。 なぜミリメートルか。なぜ長さなのか。 例えば、愛情を表現するとき「大きい」とも表現するが、(これまた否定的なときが多いが)「重い」という表現もある。 形ないもの・精神的な加重と考え

      • 『サンリオ男子』を読んで、サンリオピューロランドに行ってみた

        前回は、『サンリオ男子』の存在、そこから派生したノベライズの新感覚について書いた。 今回は、リアルでのサンリオ体験、サンリオピューロランドの魅力を私なりにお伝えしたい。 ノベライズ第二弾の「勇気と奇跡のサンリオピューロランド」でピューロランドへの想いが強くなった、と前回記したが、実はそこを強く後押ししてくれた存在がすでにあった。2018年に放映されたサンリオ男子のアニメーションである。 雨に打たれながらポムポムプリンへの愛をぶちまけたり、冬でも庭先で稽古をつける寡黙な父親

        • コバルト文庫『サンリオ男子』におけるサンリオ世界の深度

          サンリオのキャラクターは老若男女だれもが見たことがあるほど有名だが、70年代生まれの私には殊に大きな存在だ。 サンリオグッズを取り扱う直営店「ギフトゲート」は1971年に一号店が誕生、店舗が広がる最中に幼少期を過ごしていた私にとってハレを手に入れる場所はいつだってギフトゲートだった。 サンリオは他の雑貨やおもちゃメーカーとはちょっと一線を画しているように思う。自社で生み出したキャラクターのみで商品を構成しており、そのキャラたちは性格・生い立ち・それを取り巻く仲間などかなり深掘

        少女小説界の浮世絵 ー花井愛子的宝塚入門『夢行き階段』<1>

          愛子と音楽と女と男 - 花井愛子『YOKOHAMA 2・14』 -

          本日は2/14。ハッピーバレンタイン❣️ というわけで、今回ご紹介する花井愛子作品は『YOKOHAMA 2・14』だ。 花井作品といえばかわちゆかりの挿絵の印象が強いが、今作はさとう智子の挿絵である。 私が2冊ほど読了したさとう挿絵作品はいずれも「別れを匂わせる描写から始まり出会いから現在までの長い回想に入る」展開になっており、かわち挿絵では未だ出会ったことのない構成であった。これはウエットな情景を描くのがうまいさとうの挿絵とも合っており、花井作品を読み重ねていくと挿絵との

          愛子と音楽と女と男 - 花井愛子『YOKOHAMA 2・14』 -

          今こそ花井愛子を語ろう -『夢の旅』編-

          今から30年前、X文庫ティーンズハートで大人気だった花井愛子作品の代表作といえば『山田ババアに花束を』だろう。 ドラマや舞台などメディア化されたこの作品は花井作品の中においてストーリー性が高い。 しかし、私の中での花井愛子ランキングの位置は低い。なんというか、花井愛子が足りないのだ。 中年になって花井愛子を読み始めた私にとって、花井作品群の最大の魅力は句読点を含めた語彙力とテンポにあると思っている。話の展開が単純であればあるほどそれを堪能できる。ストーリーが目まぐるしく動くと

          今こそ花井愛子を語ろう -『夢の旅』編-

          今こそ花井愛子を語ろう -プロローグ-

          2020年、ありがたいご縁があって『大人だって読みたい!少女小説ガイド』に花井愛子のコラムを寄稿させていただきました。 数年前の私からは想像できなかった業でございました。 今日は、ここに至るまでの私の歩みを長々と語らせていただこうと思います。 ********* 漫画雑誌で作品をつくるうちにセリフに着目するようになった私は、ふと花井愛子のことを思い出した。 私が中学生だった1980年代後半、少女小説が大ブーム。クラスの女子は全員と言っていいほどこぞって読んでいた。 私

          今こそ花井愛子を語ろう -プロローグ-

          少女漫画における主人公の変化〜ドジっ子からフェチ子まで〜

          少女漫画の主人公とは、時代を反映するものー。 突然思い立ちまして久々のnote更新です。 今年4回目の年女を迎えたワタクシですが、歳を重ねた女だからこそ見えてきた少女漫画の主人公について勝手ながら語らせていただこうと思います。 まず、私が初めて出会ったラブコメが80年代を代表する少女漫画『ときめきトゥナイト』であることを前提として、ここからの系譜を見ていこうかと。 この作品は、吸血鬼属性の女の子が主人公なファンタジー系ラブコメなんですが、 ・天真爛漫なドジっ子 ・クラス

          少女漫画における主人公の変化〜ドジっ子からフェチ子まで〜

          昭和のりぼん読者が『きらめきのライオンボーイ』を読んでみた

          あたし、ジュンコ。女子中学生。(を卒業してもう30年経つんだ☆) というわけで絶賛中年な私ですが、作品制作のためにティーン向け少女漫画を読む機会が多い今日この頃、小学生時の愛読書『りぼん』を20年以上ぶりに読んだ2009年以来、断続的に本誌をチェックしております。 読者再開した時は衝撃でした。私のりぼん脳は昭和50年代で止まっており、付き合ったその後の描写や事後的表現に「これが平成…!」と震えたものです。 そんな私も耐性が付きまして、今ではりっぱな中年りぼんっ子。現役作家も

          昭和のりぼん読者が『きらめきのライオンボーイ』を読んでみた

          漫画雑誌の紙を考察する

          はじめまして、どうも、コイケジュンコと申します。 紙をこよなく愛するあまり、紙であれやこれや作っております。 たとえば、こんな風に漫画雑誌でドレスを作ったりしています。 ちなみに、こちらは『別冊マーガレット2009年11月号』を1冊丸ごと使用。 背表紙だけ残してあとは全部ドレスに。(量が多いのでかなりの苦行) そしてこちらは、『りぼん2011年9月号』。 と、ここまで見てみなさんお気付きですか・・・? そう! 雑誌によって紙のカラーラインナップが違うんです!!!

          漫画雑誌の紙を考察する