蝶のように舞え

「心配のネジを外した男」として親父のことを書いているのと相まって、

僕の中でちょっとした「マイブーム」担っている格言みたいなものがあります。

『あなたが、私に対して、”なって欲しい”という者に、私はなる義務がない』

史上最強のボクサーとして名高い"ザ・グレーテスト”モハメド・アリの言葉。

もともと、モハメド・アリのことは詳しくはないけど大好きで、

ボクシング・マガジンで追悼号が出ているのを目にしたときは、即買いしたぐらい。


元々、「Impossible is nothing.」というアリの格言が好きだったのですが、

ちょっと前にTABI LABOの記事でこの言葉を見つけて、

また、「アリ熱」が再燃しつつある今日この頃。

こういう「自分のアイデンティティーを守るために”戦っている人”」って写真や文字を読んでいるだけで、魅力に見えるから不思議です。

このままアリの話をしたいけど、親父の話へ。

今日は、「考えすぎない」という噺。もとい、心配のネジの外し方。


広告代理店を退職後、「アメリカに行きたいな、なんか格好いいし」等と漠然と思いつつ、半年程はフラフラ遊びながら過ごしていた親父。

とある縁から、ある工業系の機械製品を販売する会社に営業マンとして就職することになります。

ただ、かなーり古い体質の社風に馴染めず、ここでも親父は相変わらずで、入社少々上から目をつけられていたそうで。

「お前、このままでここには置いとかないからな」みたいなことを上から言われていたんだとか。

僕なんかは、そんなこと言われたらカーッとなって喧嘩するか、

気になってオドオドするかどちらかなのでしょうが、

親父は「知ったことか」とあっけらかん、としていたのだと言うから、この辺はもう性格なのでしょう。

ただ、そんな会社にも当然、良くしてくれた先輩はいたそうです。


親父にとても親切にしてくれた先輩の一人に、

英語がペラペラの方がいて、海外からのお客さんの相手をする仕事をされていました。

親父とは、部署が異なるにもかかわらず、何故だかかわいがってくれていたそうです。

ある時、その先輩が海外から来たお客さんを案内している最中、急に体調を崩してしまいました。

「すまん、君ちょっとお客さんをホテルまで送ってあげてくれ。」

当時、親父は文字通り「一言も」英語をしゃべれなかったそうです。

でも、どうにかこうにか、身振り手振り交えつつ、会社から駅へ、電車に乗って、ホテルまでお客さんを送り届けたそうです。

暫くして、勤めていた会社が海外の会社と合弁で子会社を作ることになりました。

そこの営業要員として、何故か親父が選ばれたのです。

「君、英語しゃべれるんだろ?」と色々な人から言われる親父。

「いや、しゃべれない、ホントにしゃべれない」と言うも信じてもらえず。

どうやらその仲の良かった先輩が、例の海外のお客さんをホテルまで送り届けた親父を評価してくれて、(かなり話を盛った状態で)色々な人にそのことを話してくれていたようで。

「参ったなー」と思っていた親父ですが、上司から言われた言葉をきっかけに決心がつきました。

「子会社に移る前に、1ヶ月間アメリカに研修に行かせてやる」


アメリカ!?

期せずして親父は夢を叶えてしまいました。

この時思っていたことは、「アメリカに行きたいという夢が叶うのだからこんなに良いことは無い。もし子会社の仕事がつまらなければ、アメリカから帰ってきたら辞めてしまえばいいや。」


私も転職活動をしていく中で、「将来のキャリアプラン」とか「必要なスキルアップ」とか色々考えたのですが、結論としては「何年も先のことは分からん」というものでした。


「将来、なりたい自分の像から逆算して、今身につけるべきスキルを磨く」のは、勿論大切なことではあるのですが、あまり考え過ぎても身動きが取れなくなって、チャンスを逃すことになるのでは、と思っています。

時には、たとえ予期していなかったイベントでも「面白そうだ」と思ったら、難しく考えすぎずにやってみる。ダメだったらダメだったでその時考える、という気楽さも必要な気がします。

親父も、「アメリカに行ける」という非常に短絡的ではありますが、

恐らく最高に刺激的で面白い体験が出来る、と直感があったのでしょう。

こうして、「余分な将来の心配」は一切せず、子会社へ移る辞令を受け、意気揚々と親父はアメリカへ旅立っていったのでした。

ちなみに、親父はこの時25、6歳。

後に70歳で英語を駆使して単身ヨーロッパに行ってしまうようなオジさんになるのですが、英語をちゃんと勉強するのは、これより15年ぐらい後の話。

人生、計画的になりすぎないのも、幸せに生きるコツなのかもしれません。





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