400字前後エッセイ/4/苦虫

苦虫を噛み潰したような顔って言いますけど、虫を噛み潰したという時点で既に心は最悪なのでもうどんな味かなんて関係ないと思うんですよね。仮に苦虫じゃなくてあんまぁ~~い甘虫だったとしても、きっと表情は苦虫を噛み潰したようになってるはず。以前ある漫画で「女郎蜘蛛はチョコレートの味がするよ」っていう降参級のセリフを読んだことがあるのですが、例え味がもろゴディバ!でも、もはやこれはリンツ!でも、その「チョコレート味」は「自分いま女郎蜘蛛むしゃむしゃしてる」のインパクトには絶対に勝てないと思う。ちなみに「脚は硬くて食べられない」そうです。そうでしょうな。
まあ虫だけでも最悪なのに更に苦い、と言う駄目押しによってその苦悶をいっそう際立たせているのかもしれませんね。もしこれが苦魚を噛み潰したようなとか苦菜を噛み潰したようなだと、下手したら大人が楽しむほろ苦さ、鮎のはらわたふきのとう、ああ旬だねと一杯やりたくなってしまう。やっぱりここは苦虫が最適任者なのかも。そしてまさかの味で括られた苦虫って何なんだろう。個人的にはカメムシかタガメあたりを想定しています。苦そう。