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メガネ初恋【毎週ショートショートnote】

鯖江さばえではメガネ同士が恋をする。
メガネフレームの全国シェア95%を誇るメガネの聖地、福井県鯖江市。100年の伝統と品質の高さで有名な鯖江の眼鏡だが、その看板がメガネ間の恋と結婚・出産に支えられている事は知られていない。
「やっぱりレスやハーフじゃ駄目。フルでリムってくれなきゃ」
「バイブスよりクリングス。最後はパッドの相性よ」
海外ブランドの進出やコンタクトの台瞳たいとうにより縮小しつつある商圏と出生数を維持すべく、各メーカーはメガネマッチングを展開、眼鏡に適う出会い作りに必死だ。

「……どうだった、例のお客様?」
「不成立。よろい君は堅すぎるって」
「前のブリッジ氏はズレるだけで外れないって。レンズが落ちる様な一眼鏡惚れなんてそうそうあるもんですか」
「恋に恋する恋子レンズちゃんね。そんなメガネ鯖江中探しても売ってやしないわ」
「そのうち色眼鏡が外れるでしょう。お嬢さんは不良品に憧れるものよ」



副題:恋活メガネ

用語解説
リム:フレーム(枠)のうちレンズを支える部分。レス(縁無し)・ハーフ(上半分)・アンダー(下半分)・フル(全面)など種類がある。
クリングス:メガネを固定する鼻パッドを支える金具。パッド足とも。
パッド:鼻パッドもしくは鼻当て。多く透明のプラスチックで作られ、直接鼻に接してメガネを支える部分。
智(ち/よろい):リムと耳にかけるツル(テンプルとも)を繋げる要の部分。
ブリッジ:リムの左右を繋ぐレンズの間の部分。橋の様に見える事から命名。