創樹(もとき)

自称、物書きもどきの樹人変人。 前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、小説…

創樹(もとき)

自称、物書きもどきの樹人変人。 前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、小説投稿サイトを中心に活動。 X:@motoki_koiwa

マガジン

  • ねこの日ショートショート

    2月22日のねこの日にちなんだ、猫にまつわるショートショートまとめです。

最近の記事

ラジオ番組で朗読いただきました【毎週ショートショートnote】

たらはかにさん&毎週ショートショートnoteご参加の皆様、いつもお世話になっております。 2024年4月29日(月)配信 大原さやか朗読ラジオ 月の音色~radio for your pleasure tomorrow~ 第258回のミニ朗読コーナー『月の文学館』にて、 拙作の400字ショートショートを朗読いただきました📻 声優の大原さやかさんがパーソナリティーを務める、隔週月曜配信の朗読番組です。 毎月1回『月の文学館』と題した、リスナー参加の朗読コーナーを設け、テーマ

    • 雪解けアルペジオ【毎週ショートショートnote】

      「明日が発表会か、どうしよう……」 新学年が始まって1週間。僕は放課後の図書室で頭を抱えていた。 春休みの自由研究。AIでズルをした僕は、先生から1週間後の再提出を命じられた。 オンライン栽培の春ギターを演奏し、クラス皆に聴かせる事。AI任せで中身も知らないのに、無理に決まってる。 「観察日誌だから、弾かなくてもいいんじゃ……っくしゅん!」 誰か噂してる? 鼻をこすって見渡すと、あちこちでくしゃみが連発している。 ――これだ! ひらめいた僕は猛然とネットを検索した。 発表

      • 春ギター【毎週ショートショートnote】

        春休みにも宿題があるなんて知らなかったんだ。 新学期の初登校前日、先生のLINEに青ざめた僕は、あわててネットショップを検索した。 ドリルや感想文ならまだしも、よりによって自由研究か。今からできそうな課題を片っ端から探す。最短1日で音色が芽吹く、春ギター栽培キット――これだ! 配達だと間に合わないのでオンライン栽培にする。 基本光度に春一番の進行表? 和温の合計600℃? めんどくさいから全部おまかせで。AIカメラのレポート機能で観察日誌をつけ、ムービーの自動編集で仕上げ

        • 花冷え全員集合【毎週ショートショートnote】

          いわゆるローカルルールだが、花札に『花冷え』という役がある。 配点の高い役に使う光札や種札、短冊を除く、カス札あるいは素札と呼ばれる札で作られる。花冷えの語源については、春の花が咲く頃に気温が下がる従来の語義の他、役立たずの冷や飯食い、素寒貧からの連想など諸説ある。 十二ヶ月からなる札のうち、二月の梅、三月の桜、四月の藤、五月の菖蒲、六月の牡丹、七月の萩、九月の菊、十二月の桐、計八種の花のカス札を一枚ずつ集めて作る。 一月の松、八月の芒、十月の紅葉、十一月の柳は葉に位置付け

        ラジオ番組で朗読いただきました【毎週ショートショートnote】

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        • ねこの日ショートショート
          13本

        記事

          オバケレインコート【毎週ショートショートnote】

          破れ長屋が軒を連ねる横丁の入口で、オバケレインコートは迷っていました。 日本のおばけが住む通りがあると聞いて訪ねたものの、門構えから昔風で敷居が高そうです。 雨具のおばけなら唐傘小僧もいる。歴史の浅い横文字オバケに身の置き所があろうかと、遠慮がちに裾を畳んでおりますと、 「やれ着いた。アイルランドまで里帰りも一苦労だ」 洋化け猫のケットシーが、長靴の足で脇を過ぎて行きました。 「最近はドイツにも黄砂が飛んできてね」 サンドマンが痒そうに目を擦り、壁の様にそそり立つゴーレムがガ

          オバケレインコート【毎週ショートショートnote】

          花冷え全員集合【毎週ショートショートnote】

          「今日は冷えるわねぇ」 桜吹雪に唐傘をつっかけて、西隣の卯月さんが言いました。 「花冷えですよ。角の弥生さんちに桃が咲いたんですって」 綿入半纏の袖を締め、お向かいの如月さんも言いました。こちらの庭では遅咲きの梅が名残り雪を降らせています。 「今年は春先が寒くて、いきなり暖かくなったでしょう。うちも牡丹が咲いたわよ」 「んまぁ牡丹雪。大根おろして雪見鍋でもやろうかしら」 東隣の皐月さんは襟巻きの首をすくめ、藤棚のある斜向かいのメイさんが白い息を弾ませます。私もかじかむ手を擦り

          花冷え全員集合【毎週ショートショートnote】

          桜回線【毎週ショートショートnote×ショートショートガーデン・プチコン5~遊園地】

          周回遅れですが💦 先週のお題『桜回線』とショートショートガーデン『プチコン5~遊園地』のコラボ作です🌸 プチコン5~遊園地は4月21日まで募集中。 田丸雅智先生のサイン本プレゼント&電子書籍掲載のチャンスもありますので、振るってご参加いただければ幸いです🎢🎡🎠

          桜回線【毎週ショートショートnote×ショートショートガーデン・プチコン5~遊園地】

          錦鯉釣る雲【毎週ショートショートnote】

          釣仙の太公望が雲海で釣りをしておりました。 いつもの様に竿を垂れ、空鱈や雷魚、鰯雲など釣っていた最中、伸ばし過ぎた釣り糸が雲を抜けてしまいました。 雲の下には周の国があり、時の文王が城の池に数多の鯉を飼っております。太公望の釣り針は丁度池の中へ入り、丸々と肥えた錦鯉がかかりました。 竿を引いた太公望は目も絢な釣果に喜び、幾度も竿を下界へ投じます。さすが釣仙と申すべきか、三百六十五匹あった池の錦鯉をすっかり釣り上げてしまいました。 庭師に報告を受けた文王は、空になった池の上

          錦鯉釣る雲【毎週ショートショートnote】

          命乞いする蜘蛛【毎週ショートショートnote】

          ペットボトルの底に、透明な蜘蛛が死んでいる時がある。 飲料の種類を問わず八分の一の確率で這入っていて、飲み切ったボトルを窓際へ干しておくと、午の間に蒸気の雲になって天へ還って逝くが、これまた八分の一の確率で、往生し損ねた擬死の輩が混じっている。 渇き死にしてなるものかと、ボトルの縁の僅かな滴を搔き集め、頻りと頭を垂れて嘗め取る姿は、命乞いでもしている様だ。幾らか哀れを覚え、干すのを止めにして新しく水を汲んでやる。 すると今度は八分の八の確率で、夜を待たずに溺れ死んでしまうの

          命乞いする蜘蛛【毎週ショートショートnote】

          桜回線×魅力的な台詞ではじまるお話【毎週ショートショートnote】

          「今週末には、各地に桜の便りが届きそうです」 ――と、朝の天気予報で聞いたので、部屋の窓を開けておく事にした。 机に白紙の便箋を広げながら、今年もこの時期が来たなと思う。 季節の便りは日々方々から届くけれど、桜の便りはやはり格別の趣がある。咲きがけと散り際に合わせて交わす桜との往復書簡。手紙好きならずとも楽しみにしている人間は多いだろう。 午後の風が便箋をはためかせ、ふと気付けば匂やかな消息がしたためてあった。 春靄けぶる様な薄墨の散らし書きで一文、 『津々五つ桜開くさ

          桜回線×魅力的な台詞ではじまるお話【毎週ショートショートnote】

          三日月ファストパス【毎週ショートショートnote】

          ショートショートガーデン『プチコン5~遊園地』とのコラボSS、書いてみました。 ※ガーデンの方は『遊園地』がテーマならしばりはないので、よろしければそちらもお気軽にご参加を。 上サイトに作品を投稿。トップページのリンクから、応募作の選択・必要事項の入力・応募をお願いいたします。

          三日月ファストパス【毎週ショートショートnote】

          ねこ吸い~ねこの日ショートショート

          最近流行りの『ねこ吸い』を堪能すべく、売り出し中の和ねこカフェに来た。 「いらっしゃいませ。どちらでお出しにしましょう?」 割烹着の店員さんが畳席にお品書きを広げてくれる。基本の柄だけで20種類以上、どれも美味しそうだ。 「うーん。白、黒、茶トラ……やっぱり三毛で」 「三毛一杯ですね。ただ今ひいて参りますので、少々お待ちください」 流行っているだけあって、店内はねこ吸いを楽しむお客で満員だ。 「にゃ~ん」 「ふにゅ~」 「ぐるるる……」 客達のとろけそうな声に期待を膨らま

          ねこ吸い~ねこの日ショートショート

          鍵猫ホームズ~ねこの日ショートショート

          猫のかぎしっぽは福招きだが、うちの猫は謎招きらしい。 ボブテイル・キャット。鉤爪の様に曲がった短い尻尾の猫で、その曲がった先に幸運を引っ掛けて運ぶと言われる。 しかしうちのワトソンときたら、かぎはかぎでも錠前に差し込む方なのだ。複雑怪奇にひねくれたギザギザのしっぽをアンテナに、とがった毛先で絶えず事件の気配を追っている。 浮気調査、失踪、窃盗事件に暴力抗争。人の手に負えない難事件も自慢の鍵しっぽをひとひねり、猫なで声と必殺猫パンチで解決に導くワトソンは、我が鍵猫ホームズ探偵

          鍵猫ホームズ~ねこの日ショートショート

          家猫軒、本日も営業中につき~ねこの日ショートショート

          「こちら、本日のスペシャルでございます」 とばかりにコックさんが差し出したのは、ある意味夏の終わりの風物詩、路上のミンミン蝉だった。 朝採れほやほやで活きの良い蝉は、コックさんが咥えた口を離した途端、バタバタ悲鳴を上げて飛んで行った。 「ありがとう、ごちそうさま」 一応合掌して礼を述べる。コックさんは長い尻尾でお辞儀をし、満足げにニャアと鳴いた。 家猫が飼い主に獲物を持ち帰る事はままあるが、我が家のコックさんにとって、それは腕によりをかけたご馳走なのだった。 白い毛皮の、頭

          家猫軒、本日も営業中につき~ねこの日ショートショート

          切符切り絵~ねこの日ショートショート

          「またたび駅へようこそ!」 歯切れの良い掛け声と、パチンと響く爪の音。渡世線またたび駅には、脚絆に三度笠で切符を切る名物駅長がいる。 駅名で察しがつく通り、齢三十年、三つ又尻尾の化け猫だが、名物なのは姿形ではない。白手袋ならぬ白靴下の猫肢が、パチンパチンと爪で切り取る切符窓。これが見事な切り絵になっている。 肉球一つの小さな窓に、ある時は満開の桜吹雪、ある時は紅葉の錦織りといった具合に、季節の風物を巧みに切る。客の行き先や旅の思い出をぴんと伸ばしたヒゲ先に感じ取り、即興で

          切符切り絵~ねこの日ショートショート

          ツノがある東館×一行目で惹きつける【毎週ショートショートnote】

          明日の遠足は神獣博物館と聞き、クラス中がツノ突き上げて沸いた。 神話や伝説の動物を展示する博物館だ。申し込んでいたイベント抽選に当たり、リニューアルオープンの一日体験に特別招待されたのだ。 「新しくウマ舎ができたんだよね。西がユニコーンで、東が」 「逆だよ、ペガサスが西。ツバサがある西館と、ツノがある東館ってニュースで見たもん」 「かっこいいよねユニコーン」 「おれペガサスの方が好き」 神話のスターに早く会いたいらしく大騒ぎだ。毎度の事ながら教師の説明なんぞ聞きやしない。適当

          ツノがある東館×一行目で惹きつける【毎週ショートショートnote】