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触覚は感情に影響を与える

「かわいい」という言葉は何となく見た目で判断しがちな感情ですが、意外なことが分かりました。

要は、
ヒトまたはロボットが直接触ると、触られたもの・触った主体両方に対して「可愛い」という感情が高まる、
という話です。

ロボットもそうですが、触った主体へのかわいさまで高まるというのは面白いです。

今回はマスクをすることで笑顔に影響を排しています。確かに今の時代は「かわいさ」を表す笑顔など顔の表情が分かりにくく、その意味でも実用的な実験かもしれません。

今回の「触れる」という行為から「グルーミング」を連想しました。

社会行動学では以前から唱えられており、霊長類を中心とした哺乳類では多くこの行為が見受けられ、特に人間社会では「握手」は代表例ですね。

実はこういった実験は、VR(Virtual Reality:仮想現実)でも行われています。
下記の書籍では、VRを使った心理学の興味深い結果が豊富に紹介されています。

書籍の中から今回の例に近いケースを紹介します。

ある被験者にVRヘッドセットを付けて、仮想世界で仮想の握手(手のみ見える)をさせ、そのタイミングと合わせて物理世界で握手をする触感も与えました。
触感のデータは、元々いろんな被験者からセンサーで学習させて忠実に再現されていると思ってください。

複数の仮想の手と握手をさせて、「誰の握手が最も親近感を得られるか?」という実験を行いました。もちろん被験者には触感データが誰のものかは開示されません。

結果は、「自分自身との握手が(それとは気づかずに)最も親近感がわいた」というものです。

つまり、我々は、思っている以上に視覚だけでなく触覚でも感情を形成しているといえます。

そしておそらくは、視覚以外の知覚でもある程度は敷衍できそうです。

例えば直近のノーベル生理学賞では、「痛みや皮膚の刺激を感じる仕組みの解明」でした。

皮膚が刺激を感じるのは常識的で追認された感じを受けました。
面白かったのが、「辛み」を感じた時も「痛み」を感じる受容体が反応する、という事実です。
つまり、「味覚」は結構物理的な刺激とつながりがあることが分かります。


そして冒頭の実験で斬新なのが、生物だけでなく「ロボット」まで対象に含めたことです。

冒頭の発表記事の詳細を見ると、「ロボットが触ったほうが人間のときよりかわいい度合が高い」となっています。

まだまだマスクの日常化が続きますが、表情が見えないことへの社会学的な悪影響は長い期間で見ると起こりえると思います。

もちろんマスクを外せる日が来るのが理想ですが、それを待つだけでなく、「新しいグルーミング」を考案して実践するのも一案かもしれませんね。

今回の研究発表で、ロボットがその媒介となりえる可能性を感じました。

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