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⑥「コロナウイルスのパンデミックをふりかえって~ある地方開業医の視点~」                      第2章 2020.1の横浜ダイヤモンドプリンセス号のクラスター発生から2023.4の症例発生全数報告の終了まで     5 抗コロナウイルス薬を服用する意味はあるか?      

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5 抗コロナウイルス薬を服用する意味はあるか?
 
 まずは、各、抗コロナウイルス薬のターゲットについて、図でしめす。

ゾコーバもパキロピットと同じCYP3Aで代謝(併用禁忌が似ている)だが、パキロピットは活性たかめるため、さらにCYP3A代謝阻害薬成分がふくまれているので、併用禁忌薬はゾコーバよりパキロピットの方がさらに多い(他の薬は、短期的にすべて中止がいいくらい、多い)    
(参考)抗インフルエンザ薬のターゲット:タミフルは、ウイルスのヒト細胞出口に関わる酵素(ノイロミダーゼ)を阻害。ゾフルーザは、遺伝子複製にかかわる酵素(CAP依存性エンドヌクレアーゼ:人RNAからCAP-RNA を切り出す)を阻害。


 次に、ゾコーバとそのターゲットである、ウイルスタンパク質のひとつプロテアーゼ、との結晶構造を示す。
 ゾコーバは2022.11日本ではじめて「緊急承認」という形で認可されたなどの影響で、認可にあたって、様々なコメントがきかれている。
 それはともかくとして、最初の論文化は、2022.3。最初から3CL Protease Inhibitor をターゲットにして探索されS-217622として見出された。ほとんどシオノギの研究者が論文に名を連ねる。
 リボン表示されているのは3CL Proteaseというコロナウイルス内のたんぱく質。そのProtease活性部位にはまっているゾコーバを、Spacefillという球状表示した。


最近、3CL Proteaseとゾコーバの結晶構造が発表された。それと関連した、下に紹介した論文では、同じ3CL Protease Inhibitorを標的としているパキロピッドとの標的部位の微妙な違いが報告され、ウイルス変異で片方の薬剤の効果がなくなっても、もう片方の効果がありうる、ということが示唆されている。


それぞれの抗コロナウイルスの特徴について。厚労省からの紹介は、以下のよう。

 ぼく自身の考えは、以前の④「3 当院での例外的なゾコーバ投与の経験」でつっこんでのべているので、それを参照していただきたい。
④へのリンク:https://note.com/kojikoji3744/n/nc9cb6ed910ce

  ひとつだけ、補足する。
 コロナウイルスを含めた「風邪」(コロナウイルルスやインフルエンザウイルスも風邪症状をおこすウイルスのひとつだ)は、薬を使わないでも、日とは自分の力(免疫の働きで)なおすことができる。
 だから、抗インフルエンザ薬をつかう意味は「つらい時期を短くする」という意味が一番大きい。また、子供の場合は確率は低いが「インフルエンザ脳症」を予防する。また高齢者は、重症化して要介護状態にQOLが落ちたり死亡したりするリスクを減らす、といわれている。
 抗コロナウイルス薬を使う意味も、同じである。
 ただ、コロウイルス感染では、インフルエンザウイルス感染とくらべて、いわゆる「後遺症」の話が多い。
 有名なのは味覚・嗅覚障害だ。これはインフルエンザ感染ではあまり聞かない。また咳がなかなかとまらない、というのも聞くがこれはインフルエンザ後にも時々ある。だがこれらは、(ほかの風邪の場合より長い期間であるが)3ヶ月くらいでおさまってくることがほとんどだ。
 問題なのは、長く続く倦怠感や集中力だという(今は、そういう方は専門外来を紹介しているのでぼくの患者にはいない。というか、実は、私の患者で、そのような症状で専門外来を紹介したことは実は今まで一度もない。すなわち、そういう「後遺症」はぼくは、『話で聞いただけ』なのであるが)。
 
(注)「後遺症」と呼ばれるものの中には、集中治療後症候群のような、治癒後の運動能力低下や精神症状も混在していると思われる。 
 
 ひとつの仮説がある。
 それは、帯状疱疹後の持続する神経痛の予防の時の話の応用である。
 帯状疱疹ウイルスに神経細胞がさらされる時間が短いほど、神経細胞の損傷が少ない。すると、その後の再生時間を短縮(あるいは、非可逆的に再生しない細胞数を減らす)する。なので、なるべく早期に診断して抗ウイルス剤を悪化する前に投与したほうが、後遺症は減る。
 すなわち、壊れた神経細胞が再生するまでの間、持続的に後遺症の「神経痛」が続くので、なるべく神経細胞が壊れないようにすることが、後遺症予防になる、と言う仮説だ。
 この仮説に従えば、軽症のコロナウイルス感染に対しても、「後遺症」頻度の抑制のために、軽症コロナウイルス感染でも抗コロナウイルス薬を積極的に使うべきではないか?ということになる。

(注)コロナウイルス感染で損傷する細胞は、神経細胞だけでなく、例えば気管支上皮細胞なども考えられる。ひどく気管支上皮細胞がいたんだことで、再生に時間がかかっている、あるいは一部「非可逆的に」再生できない細胞もある、という説明こそが、「3か月持続する咳」という後遺症の説明になる。 
 
 ただ、オミクロン株では、デルタ株に比べ、後遺症はおおいのだろうか?
 オミクロン株になり、致死率は減少したものの、感染率が高いため感染者数が莫大なため、結果、死者数は激増した。
 これと同様、後遺症についても、発症率は減少したものの、感染率が高いため感染者数が莫大なため、結果、発症数は激増しているのだろうか?
 それとも、オミクロン株では後遺症の発症数はそれほどでもない?
 実はまだ、専門家からの「コロナ後遺症に対する」明確な報告はない。
 今後の報告待ちである。

第①話ヘのリンク:  https://note.com/kojikoji3744/n/nb40c89a413f4

第⑦話へのリンク: ⑦「コロナウイルスのパンデミックをふりかえって~ある地方開業医の視点~」                      第3章 なぜ、あなたは風邪のときに病院に行くのか? |kojikoji (note.com)

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