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主体的に学習できる環境を作ってアウトプットを習慣づける(#9)

この記事の初出は、Software Design 2022年12月号です。

はじめに

「ハピネスチームビルディング」では、新しい技術・ツール・プラクティスを積極的に施行して、得た知見をアウトプット(技術記事で情報発信)し、いいねをもらってモチベーションアップする経験を繰り返す事で、皆で楽しく成長する事を目指しています。
つまり、チームのメンバー全員が学んだ事をアウトプットする習慣を身につける事が重要になります。
そのため、前回と前々回に引き続き、学んだ事のアウトプットを習慣づける施策を紹介します。

業務時間内での学習を推奨

私は若手の頃、目の前のタスクだけをやっていました。
例えば、タスクで利用するライブラリの中に、気になるクラスを見かけたとしても、それが今のタスクを遂行するために関係なければ、自分の興味のために業務時間を使うべきではないと判断して、気になったクラスについて調べませんでした。
つまり、自分の興味にフタをして働いていました。
しかし、仕事のできる先輩たちの働き方は違っていて、今のタスクに関係ないライブラリやツールを調べたり、新しい技術の記事を読んだりなど、業務時間内であっても自分が興味を持った事に対して積極的に情報収集していました。
そして、そこで得た知見が、その後にプロジェクトに活用されるという事がしばしばありました。

当時の私は「先輩は要領よく仕事をしているな」と思っていました。
先輩からは「業務中でも、興味ある技術を調べて良いよ」とアドバイスされたので、私もそうしようと思った事もあります。
しかし、プロジェクトというのは、だいたい進捗遅れが発生するものなので、いつもスケジュールはぎりぎりのため「遅れているのに余計な事をしている場合じゃない」と思って、その後も結局目の前のタスクだけをやる日々が続きました
当時は残業もそこそこあったため、プライベートな時間を使ってまで学習を継続する事もできず、エンジニアとして成長するために必要な「主体的に新しい事を学ぶ」という習慣が身に付かないまま若手の何年かを過ごしました。

そして今、私はプレイングマネージャーとして、プロジェクトの技術も管理も裁量のある立場になりました。
自分のプロジェクトのメンバーには、自分のように興味にフタをして目の前のタスクをやるだけになって欲しくないと思っています。
だから、「主体的に新しい事を学ぶ」という習慣が身に着きやすいように、業務時間内で自由な学習を毎日30分~60分確保することを勧めています
ただ、それを1回言っただけでは、メンバーの半数は「遅れているのに余計な事をしている場合じゃない」と思って、目の前のタスクしかできませんでした
そういうメンバーも業務時間内で自由な学習をできるようになり、皆で楽しく成長できるようにするための工夫点を6つピックアップして紹介します。

1. 学習を推奨する理由を共有

まず前提として、プロジェクトの進捗が遅れていても、毎日の自由な学習時間を確保していいことを明確にしています。
そういうスタンスじゃないとなかなか時間を確保できないからです。
なぜそれほど自由な学習時間の確保を推奨するのかの理由として、以下を繰り返し共有しています。

  • 今すぐに必要ない技術でも、それが後にプロジェクトのためになった事が何度もある

  • 全員が今のタスクに必要な事だけしかやらない場合、プロジェクトの成長が滞って将来的に行き詰まるリスクがあるため、新しい技術やツールやライブラリはどんどん調べて試した方がいい

  • 「主体的に新しい事を学ぶ」という習慣を身に付けた方が、エンジニアとしての成長速度が上がり、長期的にはその方がプロジェクトへの貢献になる

  • 興味のある事を興味を持った時に調べる事は、学習の効率が高い

2. 学んだ事をアウトプットする場を作る

学習時間に情報をインプットするだけよりも、学んだことを随時アウトプットした方が効果的な学習になり、成長は加速します。
よって、アウトプットする場として、Slackに学びをアウトプットするチャンネルを作成しました。
新しいツールを調べたり技術記事を読んだりして学んだことを随時Slackに投稿してもらうようにしています。
これは、各自が得た知見をチームで共有できる上に、お互いに刺激し合う効果もあります。

アウトプットチャンネルの例

3. 投稿件数の見える化

なんらかの活動を促進させたい場合には、その活動状況を見える化する事が有効です。
そこで、アウトプットチャンネルへの投稿を促進させるために、各自の投稿件数が分かるようにしました。
具体的には、毎週月曜の朝にアウトプットチャンネルへの各自の投稿件数がSlackに自動的に通知されるようにし、それを月曜の朝会で取り上げて「○○さんは先週、学んだ事をたくさん投稿していて凄いですね」などのフィードバックをしています。
誰からもフィードバックされない活動は継続しづらいため、このように定期的にフィードバックするようにしています。

4. 全員で同じ時間に学習する

この活動を始めてから最初の1~2年は、各メンバーが自分のタイミングで主体的に時間を見つけて学習していました。
ただ、そういう時間を業務時間内で毎日意識的に確保し続けるのは難しいという意見もありました。

そこで途中からは、定期的な「学習タイム」を設定し、チーム全員で同じ時間に学習する時間を設けるようにしました。
学習タイムの時間と頻度は、毎日30分もしくは1時間を週に1~2回など、その時のチーム状況によって変えています。
もちろん各メンバーが自分のタイミングで学習する方針は維持していますが、学習タイムを設定した事で学習時間が確保しやすくなりました。

5. 会議中も学びのチャンス

学んだ事を自分の言葉でアウトプットした方が、効果的な学習になるという価値観をチームで共有しているので、私のチームでは会議中に学んだ事を各自が自分の分報に書き込んでいます
例えば、数十人が集まる月次の定例会議にて、あるプロジェクトでの課題を解決したプレゼンが発表されている時、メンバーはそのプレゼンを聴きながら各自の分報に学んだ事を書き込んでいます。
社内研修を受けた時にも、受講しながら学んだ事を自分の言葉に変換して分報に書いています。
これは、ただぼんやり聞くより疲れますが、その分、成長できるはず、という認識で皆でやっています。

6. ポジティブフィードバック

メンバーがアウトプットチャンネルや分報に学びを投稿した場合に、皆でポジティブフィードバックし合っています
例えば、便利なツールやサービスを紹介する投稿に対して「これは便利そうなので私も試してみます」と書いたり、「凄い」「流石」などの絵文字スタンプを押したりしています。

まとめ

前回と前々回に紹介したアウトプット勉強会と、今回の自由な学習活動を継続することで、アウトプットで成長が加速することをメンバーが実感するようになりました。
自分の成長を実感すると楽しくなるので、楽しみながら成長し続けるサイクルに入り、楽しくアウトプットを継続できています。
そのサイクルの中で、技術記事を書き続けることもできるようになるので、今後、楽しく技術記事を書く取り組みも紹介予定です。


連載「ハピネスチームビルディング」の次回の記事はこちら↓

前回の記事はこちら↓


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