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格闘家・那須川天心を「普通」のものさしで見ないでほしい、と力説した話

 先週、インタビュー取材を受けた。那須川天心ボクシングデビュー戦を前にした日刊スポーツの特集で、編集協力をした那須川天心の初著書「覚醒」をベースに「彼の人となりが知りたい」ということだった。


   まず自分の二重アゴ写真にびっくりしてしまった。早くコロナ太りを解消しなくてはと決意したが、それはさておき、この取材で特に強調したのが「那須川天心という格闘家を『普通のものさし』ではからないでほしい」ということだった。

 というのも、昨年のTHE MATCHの際、取材記者と彼の間でこんなやり取りがあったのだ。
 ボクシング転向後の構想を聞かれて、彼が「まだ若いので」じっくりと準備をする、という話をした時に、ある記者はこう反応した。
「24歳だとそんなに若くもないけど」

 記者の頭には「24歳でのボクシング転向は年齢的に遅い」という固定観念があるのだろう。
 いやいや、那須川天心だよ、と。普通のスポーツ選手が他競技に転向するのとは訳が違う。

 子供の頃からお父さんとマンツーマンで積み重ねてきた圧倒的な練習量と、時に自分より倍以上体重のある子供とも戦うなど豊富な試合経験がある。

 15歳でプロデビューしてから、キック、ムエタイ、MMA、ミックスルールと様々な試合形式に挑戦していまだ無敗。

 また、パンチのテクニックを磨くために早くからボクシングトレーナーの指導を受けており、ボクシングをまったくの初心者から始めるわけではない。

 まだまだ書き切れないが「天才格闘少年・少女」を数多く輩出してきた世代のトップランナーが那須川天心なのだ。
 あらゆる面で突出している格闘家を「24歳からボクシングに転向するって遅い」と「普通」のものさしではかってしまったら、到底理解することなど出来はしないだろう。

 その点を、格闘技ライターなら分かっているが、ボクシング記者たちがどこまで理解しているか。THE MATCHでの記者とのやり取りを見ていて、正直、不安に思ったし、理解不能だからと批判されたり、言いがかりを付けられるようなことがなければよいが、と思った。

 那須川天心のボクシングデビュー戦は各方面に大きな反響を呼んでいる。
 日本ランキング2位の選手に対して、持ち前のスピードで翻弄し、キレのあるパンチを打ち込み、クリーンヒットを許さず、パフォーマンスまで見せての完勝。
 それでも「倒せなかった」「大したことはない」と批判されるのだから、どれほど期待が高いのかとも思うが、まだまだ、彼はこんなものではない。

 彼が10代から見据えているのは「世界を熱狂させる格闘家」になること。彼の第二章、ボクシングでのストーリーは始まったばかりで、これから世界の頂点に向けた快進撃が始まる。

 キックボクシングでそうであったように、試合のたびに我々の想像や期待を軽く上回り「やはり那須川天心だ」というところを存分に見せつけてくれるはずだ。

 本人が雑音に惑わされることはないだろうが、くれぐれも周囲にいる人たちには「天心流」のマイペースを貫くことこそが、彼が最も自身の才能、圧倒的なスピードとたぐいまれな格闘センスを発揮する上で大事なことなのだとぜひとも知っておいてほしいと思う。

 那須川天心の今後の歩みがますます楽しみだ。



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