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TAJIRI「楽しいプロレス、クレームの来ないプロレス、嫌われない悪役。そんなプロレスばかりになればいつか世の中から消滅する」~ 「プロレスラーは観客に何を見せているのか」著者インタビュー(2020年1月15日公開)


 今、話題の「プロレスラーは観客に何を見せているのか」(草思社)。



 著者のTAJIRIは、IWAジャパンでデビューし、大日本プロレスを経て、メキシコやアメリカで経験を積み、2001年から5年間、世界最大のプロレス団体「WWE」で「日本人メジャーリーガー」として活躍。帰国後は、ハッスル(選手兼制作メンバー)、SMASH、WNC(選手兼プロデューサー)を舞台に活動しながら、KUSHIDA(現WWE)、朱里、黒潮イケメン二郎らを育てた。

 世界各国のメジャーからインディまであらゆるリングに上がり、制作、プロデュース、育成とプロレス界の裏も表も知り尽くしたTAJIRIが「現時点でのプロレス論」として上梓した「プロレスラーは観客に何を見せているのか」。昨年12月に発売されると大きな話題を呼び、各書店で品切れ状態に。発売3週間で3刷が決まり売り上げ好調である。

(*2021年7月現在、4刷)

 最近では、1月5日の新日本プロレスにおいて、史上初のIWGP、インターコンチの2冠王に輝いた内藤哲也をKENTAが襲撃。ドーム2連戦がまさかの「悪夢のバッドエンド」で幕を閉じたが、SNS上では「TAJIRIの本を読んでいたから理解できた」や「TAJIRIの本はKENTAの行動を予言していた」といった感想が多く見られ、Amazonの順位は急上昇。ドーム周辺の書店では軒並み完売という事態となった。

 TAJIRI自身、SNSで「どこもなかなか超えられなかった堅い堅い壁をひとつ壊した」とKENTAを絶賛。ファンによるKENTA批判がTAJIRI批判に飛び火する現象も起きている。
 早速、渦中のTAJIRIを直撃した。


1・5新日本プロレス「KENTA騒動」を絶賛した理由


ーー新日本プロレスのドーム2連戦がKENTA乱入で悪夢のバッドエンド。これをTAJIRI選手は「壁をひとつ壊した」と絶賛されましたがその理由は?

「ここ数年、日本のプロレス界は『楽しいプロレス』『クレームの来ないプロレス』ばかりになってしまって、お客さんも『プロレスを楽しんで、笑顔で帰ること』が当たり前になっていましたよね。だから団体側も『ハッピーエンドで気持ち良くお客さんを帰すこと』ばかりで、そこから外れて『ファンを本気にさせること』にはビビッているように僕には見えていました。だけど、あそこでKENTA選手が乱入してぶち壊したことで、ファンは本気になって怒り、本気でブーイングしましたよね。これはすごいことだなと思いました」

ーーKENTA乱入で混乱に陥ったプロレスファンが、TAJIRI選手の本を読んで「KENTAの行動が理解できた」や「あの結末を予言していた本」とSNSでつぶやき、本の評判を上げていますね。これはなぜだと思いますか?

「いや、正直、その反応は想定外でした。というのも、話題になっている箇所はプロレスファンではなく、むしろ団体側に『楽しいプロレスばかりになってしまっていいんですか?』『プロレスはもっと奥深いものですよね?』と提言したいと思って書いたんです。だから、SNSでファンの反応を見て『みんな、薄々気づいていたんだな』と思いましたね。やはり大人になると『無難な、万人向けのファミレス』ばかりだと飽きてしまうと思うんですよ。たまにはすごくニガいものや、からいものも食べたくなるものです。今回のKENTA選手への賛否両論の反応を見て、僕は『みんな、これまでのプロレスに飽きてきていたんだな』と感じました」

「このままではプロレスが消滅してしまう」という危機感

ーーそもそも「プロレスラーは観客に何を見せているのか」を書こうと思った動機は何ですか?

「プロレス界で25年間生きてきて、いろんなプロレスを見てきたので『現時点で考えているプロレス論』をまとめておきたいということですね。その中の1つには、先ほども話した『団体側への疑問』と危機感がありました。本に書きましたが『このままではプロレスというジャンルが衰退して、世の中から消えて無くなるのではないか?』という思いが僕にはあるんです。詳しくは本に書きましたので、ぜひ読んでください」

ーー発売3週間で3刷と売り上げ好調ですが、予想できていましたか?

「『どのぐらい売れる』とかは一切考えてなかったですし、どちらかといえば『全然売れないかもしれないな』と思っていました。『このままだとプロレスというジャンルが消滅するのではないか?』なんて考えている僕は、絶滅寸前の少数派で『TAJIRIは何をごちゃごちゃ考えてるんだ? 楽しければいいじゃん!』で見向きもされないんじゃないか、と(苦笑)。だから、今の、本に対する反響の大きさや、今回のKENTA選手の件でも思ったんですけど『プロレスの奥深さをもっと知りたい』『プロレスからもっといろんな刺激を受けたい』と思ってる人は、僕が想像していた以上に多かったですね。裏を返せば、団体側がもっといろんな話題を提供したり、世界中のいろんなレスラーを招聘して、いろんなプロレスを見せていけば、プロレス界はもっともっと盛り上がるんじゃないか、と思いましたね」

ーー「ここをぜひ読んでほしい」と思うポイントは?

「全部読んでほしいですけど、あえて挙げるならプロデュース論ですね。正直、この部分は日本のプロレス界が長年抱えている『弱点』だと思いますし、逆にプロデュースの仕方でもっと試合を面白くしたり、選手の個性を引き出して光らせていけば、プロレス界はもっと盛り上がると思いますから」

ーー最後に、今年のTAJIRIさんはどんな活動をしていくのですか?

「ありがたいことに、現在、いろんなオファーをいただいているので検討しているところなんです。この本のことでいえば、ぜひ英訳本を出したいです。今も世界のいろんな国から試合や指導のオファーをいただくんですけど、現地に行ってみると『キャラクター論やプロデュースの話を詳しく聞きたいからTAJIRIを呼んだ』ということも多いです。だから、この本に書いてある内容を『知りたい』という世界中のプロレス関係者やプロレスラー、プロレスファンは多いと思うんですよ。ぜひ英訳本を出したいので『英訳して出版したい』という会社があれば、ぜひ草思社さんあてにご連絡ください」
(2020年1月15日公開。データは公開当時のもの。ちなみに、英訳本はまだ実現しておらず、引き続き「英訳して出版したい」という会社を募集中ですm(__)m)



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