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エレファントカシマシⅡ


非常に驚くことがあった。

四月のある日、ふとスマホを見ると信じられない量の通知が来ていた。
どうやら以前に書いたエレカシについてのnoteに大量のいいねが押されたようである。

ちなみにエレカシとはエレファントカシマシというロックバンドのことである。大勢の人に対して「エブリバディ」と呼びかける英語教師のような人がボーカルを務めていたら、十中八九それだ。




僕のnoteは、Twitterで繋がっている友人が時間があるときに見てくれるレベルのものなので、いいねの数は多くて10程度のものなのである。それに対して100やら200やらのいいねが突然付いたので、ぶっちゃけビビった。しかも書いたのはもう2年くらい前のことだ。

前回は思っていることをかなりストレートに書いたので、もしかしたらエレカシファン界隈の人に怒られるんじゃないかとすら思ったが、まあなんやかんやたくさんの人に見られるのは嬉しいものである。加えて、この間のアリーナツアーで4年ぶりくらいに生でエレカシの音楽を聴けて、テンション上がってるのもある。
かようなまでの自分の単細胞さに、少々の恥じらいを覚えるものの、今日は突然のちょいバズという名の四月の風に背中を押される形で、エレカシの曲を紹介しようかと思う。

尚、このnoteは完全に趣味で書いているものなので、今回も感じたままに書かせてもらうが文句は言わせない。だれも俺には近よるなっ🐘



①奴隷天国


まずは1993年に発売されたアルバム「奴隷天国」のリード曲、「奴隷天国」である。

この曲はなんと言っても歌詞が特徴的であり、


太陽の下 おぼろげなるまま
右往左往で あくびして死ね yeah


という衝撃的な一節から曲が始まる。「死ね」と「yeah」で韻が踏めるなんて今まで気付かなかった。フリースタイルラッパーも真っ青な灯台下暗し的な発見である。
また曲中では「夢や希望と同情を乞うて果てろ」だの、「生まれたことを悔やんで果てろ」だの、「しかばねめ」だの、謎に豊富な語彙でもってこちらを責め立ててくる。兎にも角にもリスナーに死んで欲しいようだ。

しかし考えてみるにこの歌詞、芸人のリアクション芸やクレヨンしんちゃんのげんこつシーンが消え去った令和においては、もう余裕でコンプライアンス違反なのである。例えるならジダンの頭突きのような、誰がどう見ても完全にレッドカード案件なのだ。
他人に対して、「死ね」なんて言葉は使ってはいけない。そんなことミヤジだって分かっているはずである。曲に乗せてメロディアスかつリズミカルに言っても、ダメなものはダメ。ではなぜそんな曲を紹介するのだろうか。

それは僕が、この曲は唯一エレカシにしか演奏できない曲であると思うためである。というのも、なかなかに酷いことを言われているのに、そこに対して有無を言わせない、説得力というか切迫感みたいなものを感じるのだ。

別にエレカシに心酔していて、歌詞の内容の全てが正しいなんて盲目的な考えは持っていないが、ミヤジのあまりの真剣さ、迫力に何も言えない、言うことが出来ないというのが正直な感想だ。他人に「死ね」なんて言われても、それを裏付けるだけの気持ちの本気さを感じるため、こちらは受け取るしかない。もしかしたらミヤジの気持ちを表すには「死ね」という言葉以外あり得ないのかもしれない。そう思わされる。

また、奴隷天国をコンサートで演奏した際は、空間全体が異様な雰囲気に包まれる。なにしろミヤジに大声で「死ねーーー!」と叫ばれている中、みんながみんな大喜びで片腕を振り上げているのだ。自分が全ての記憶を消されて、急に奴隷天国を演奏している会場にワープさせられたとしたら、やばい宗教の黒ミサかなんかに巻き込まれたと考えることだろう。
また、曲の終盤ではセリフの様な感じで「何笑ってるんだよ。何頷いてんだよ。そこのおめえだよ。おめえだよ!」とミヤジがこちらにブチギレてくる語りかけてくるシーンがあるが、これ音源を聴いていない初見の人は普通にトラブルかなんかだと思うのではないか。

しかし、それらは全てミヤジの放つとんでもない迫力から成るものであり、納得せざるを得ないものだと思う。そしてこの曲を披露するたびに、音源以上のピリつきを毎回発現させるミヤジには確かなオーラ及び演技力を感じる。伊達に何本もドラマ出てないなと思う。奴隷天国は、もはやエレカシなりのミュージカルと言っていいだろう。

上記の意味で、奴隷天国はエレカシにしか歌えない、他人がカバーすることすらできない非常に特徴的な曲であると思う。是非一聴してみて頂きたい。もし過激な言葉に気分を害してしまったのなら、気分転換に日常系アニメかなんかを見て右往左往であくびでもしていて下さい。



②なぜだか、俺は禱(いの)ってゐた。



次はこの曲について書きたい。正確には「禱って」という漢字表記なのだが、Apple Musicにおいては「祈って」になってしまう。外資系だからか。

これは2006年発売の「町を見下ろす丘」のラストを飾る曲である。この曲はタイトルが非常に特徴的である。
なぜだか、歴史的仮名遣いが採用されている。というかこのアルバムはなぜだか、どの曲も歴史的仮名遣いで歌詞が書かれている。ちなみにミヤジ本人のInstagramもそれで書かれている。
しかしそれが意外と癖になってしまい、僕は時々友人とのLINEにおいても絶対伝わらないだろうなと思いつつも、この文体を真似してまうことがある。なぜだか、俺は癖になってゐた。


この曲は、エレカシの中で最も好きな曲の内の一つに入ると思う。というのもやはりその歌詞にある。


素直に今を生きられりゃあ、どんなに、
どんなにいいだらう。
素直に生きてゆけりゃあ。


奴隷天国で客に向かって「死ね」と叫んだり、客にヤジを飛ばされれば「うるせえ馬鹿野郎。」と返したりしていた男に、こんなことを言われるとよりグッとくるのである。
不器用な男の本音に触れられた喜びというか、「あんた本当はそんな風に思っていたんかい。」と、いつも栗を持ってきてくれてたのがごんぎつねだと分かった兵十のような、言い様のない温かみを感じざるを得ない。

思うに、これは以前に流行ったツンデレ文化と同じ構造を持っている気がする。初対面から自分に好意的な人間よりも、最初は嫌われていながらも徐々に自分に対して好意を示されるとより嬉しいというアレだ。それをエレカシは1988年のデビューから2006年までのおよそ18年間をかけてやってのけたのだ。

通常のツンデレは、ツンからデレまでせいぜい1年程度のものであろう。短期間であるからこそ、嫌われていると思いながらも関係を絶やすことなく交際することができる。しかし、エレカシはその18倍だ。あまりにも長すぎる。
人間の人生を長くて100年 wow wowと考えても、単純計算で18倍、およそ1800年生きる人間のツンデレ期間である。長い目で見過ぎである。もはや仙人じゃないか。仙人ってツンデレを弄することあるのか?ツンもデレも無いから仙人なんじゃないのか?

しかし、それだけ引っ張られれば引っ張られる程、効いてくるというものである。恋愛漫画では18年間もツンをされれば打ち切り必至であろうが、バンドであればそれが出来る(一応レコード会社に首を切られはしたが)。
「素直に生きる」はJ-popにありふれたフレーズであるが、18年間素直になれなかったバンドに歌われると話は違ってくる。元気玉は長く溜めれば溜めるほど、強く、大きくなるのだ。

また、「素直に生きられりゃあ」という歌詞は同アルバムの一曲目「地元のダンナ」にも見られる。ここから、「素直に生きる」というのがこのアルバムの一つのテーマなのではないかと感じ、その一貫性もまた良い。


同曲の演奏は全体的に落ち着いているものの、内に熱いものを感じる。なんかディズニー行った後の帰り道のような、文化祭の後片付けしてる時のような、興奮の終了に伴う冷静・静寂のような雰囲気がある。オアシスの「Don't look back in anger」とか雰囲気似てるんじゃないか。そして、2番が終わった後の空に抜けていくようなギターソロがもうとんでもなく良い。石くんは超絶テクニックというよりは味のギタリストなのだなと強く感じる。


また、非常に高いキーで絞り出すように歌うAメロと、低く優しい声で歌うBメロのコントラストがとても心地よい。生命賛歌やコールアンドレスポンスを歌う人とは別人のような、繊細な歌声なのだ。僕の中のアンミカが「歌声って200色あんねん。」と語るのが聞こえてくるような気がする。


と、ここまで良いとこづくめなのだがこの曲について一つだけ嫌な点がある。とにかく歌いづらいのだ。
この曲は音域がA2〜D5までのおよそ2.5オクターブあり、それを裏声なしで歌い切る必要があるのでパンピーにはほとんど歌えないのである。こんなに良い曲なのに自分でしっかり歌うことが出来ないというのが非常に悔やまれる。これほどの良い曲を他人に歌わせまいとするエレカシの態度からは、ツン期間の継続を見て取れなくもない。


自分で上手く歌いこなすことが出来るのであれば友人にカラオケで披露すればいいのだが、それが出来ないため、せめてここでこの曲の良さを伝えたいと思い、今回書いた。是非聴ひてもらゐたゐ。


本当はまだ書こうと思ったが、思うままに書き進めていったら4000字近くなってしまったのでここでやめることにする。まだ書きたいことのある曲はいっぱいあるので、気が向き次第また書こうと思います。でも、期待はしないでほしい。HUNTER×HUNTERの連載開始くらいの、ほぼ0に近い期待値が丁度いいのです。


終わります。
これ↓もいいよね。

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