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なんの変哲もない日常によりそっていた音楽

自分が今までライブに最も足を運んだアーティストって誰だっけ、って考えたら、実は、KANさんでした。ライブは20歳代の頃から30歳代の前半にかけて、特によく行ってました。あれだけ好きなマッキーじゃないんです。すみません槇原さん。

90年代ポップスを代表する名作の一つです。若者よ、ぜひ聴くべし!


KANさんとの出会いは御多分に洩れず、「愛は勝つ」。この曲、著名な某アーティストが「初めから最後まで全部がサビ、みたいな曲。こんな曲書けません」なんて絶賛していましたが、本当にそうですね。ご本人も「ベートーベンのような曲を作りたかった」みたいなことを言ってはったような記憶がありますが、まさに「歓喜の歌」のような破壊力。そりゃレコード大賞に選ばれるよな、って曲。ヒットした頃は、中学生。思春期真っ只中な世代でして、「やまだかつてないテレビ」で、ヤマハのCP-80を叩くように弾くKANさんの姿を毎週見ては、ピアノでその真似事をしてました。あー懐かしい。「野球選手が夢だった」も当時はCDレンタルで借りてきて何回も聴いてました。収録されてた「1989」って曲の引用元がBilly Joelなんてことも知らなかった頃。

「愛は勝つ」のヒット後、世の中的には一発屋的な感じになりつつありましたけど、その後に出た「イン・ザ・ネイム・オブ・ラブ」というシングルと、「ゆっくり風呂につかりたい」というアルバムがさらに良くて、わりとよく聴いてました。
このCDに入ってる「永遠」「ときどき雲と話をしよう」、あと「プロポーズ」はとりわけいいですね。
KANさん、洋楽のロックポップスに特に精通されていて、有名な曲の引用やイメージコピーも多いので、70s〜80sの洋楽を知りたい人にはとってもいい方位磁針になると思います。



同時期くらいに、FM802という関西ローカルのFM局で始まった「MUSIC GUMBO」という番組のDJをするようになり、そこから毎週のようにラジオを聞くようになります。
ちょうど槇原敬之と隔週でDJをしていた時期があり、お互いが毎週曲のワンフレーズを作って繋いでいく企画があったりして、どうやっても槇原節に持って行かれるのを「悔しいな〜」と笑うKANさんを聞くのが毎週楽しみで(笑)。

そんな時期があった後、大学生以降はしばらく聞かない時期があって、20代後半になって、KANさんがフランス留学から帰ってきて、サイトがリニューアルされたのがきっかけで、また活動をチェックするようになり、そこから過去のアルバムを買い漁るようになりました。

そんな時期に買ったアルバムで、うちのCD棚で最もお気に入りのアルバムの1枚がこちら。

ピアノ弾き語りのみのアルバムで、 KANの真骨頂である、どこか俯瞰しているような歌唱、繊細さをユーモアで茶化したような歌詞の世界を存分に味わえます。
このアルバムはファンサイト限定で販売されたもので、現在は市販されていないもの。今となっては本当にレアアイテムになっちゃいました。
アルバムのタイトルにもなっている「なんの変哲もない」日常生活の愛おしさや日々の生活で見え隠れする孤独や切なさを絶妙な表現で歌っています。
ちなみに余談ですが、このアルバムは私が妻に結婚しましょうかと伝えた際に、プレゼントとして差し上げました。ゆえに現在このCDの所有権は妻です。(すごいプレミアついてるらしいけど売り飛ばさないでね)
数ある名曲の中でも、このアルバムに入っている「君が好き胸が痛い」「50年後も」は、とりわけ好きな曲。

ところで「ポップス」ってすごくストイックな音楽だと思うんです。
耳馴染みがよくて親しみやすくて、すぐに口ずさむことができる、一見とても簡単だったりわかりやすいものだけど、実は、相当に緻密に計算されていて、一手間ふた手間かけられている。
KANさんの作られる音楽は、そんな音楽だなあと思います。
めちゃくちゃ面倒臭いことやってるんだけど、それを、何もなかったかのようにさらりと聞かせる。なんてかっこいいんだ。あと、「songwriter」「regrets」なんかも、好きな曲。
「songwriter」が収録されているこのアルバムは、初めてKANさん聞く人にはオススメかなあ。とにかく名曲揃い。揃いすぎてて泣きます。


名だたるミュージシャンがファンと公言してやまないKANさん。音楽家に愛されるミュージシャン、ってかっこいいよなあと思います。
自分も大好きです。
The Beatlesも、Billy Joelも、Elton Johnも、Michel Jacksonも、KANさんの音楽を通じてさらに好きになっていった感じ。


不在となったことに実感が湧きません。
KANさん自身が直接近い距離にいたわけではないから、亡くなられてしばらくしてから知らされたから、つい最近までSNS更新してたりラジオにも出てたりしたから、いろいろあるんだけど
なにより、プレイリストでいつものように聴いている音楽だからなのかもしれません。
多分これからも折りに触れ聞き続けます。

最近聞き返しているお気に入りは、弦楽カルテットとピアノによるクラシカルスタイルの編曲で聴かせるセルフカヴァーアルバム。
クラシックピアノがベースで、ストリングスアレンジに特別思い入れがあるKANさんならではのこだわりが詰まっています。まあとにかく演奏する人大変だろうな、って譜割り。
出自がクラシックである自分にとっても大好きなやつです。

そうそう、槇原好きな私としてはこのアルバムも挙げておきたい。

このアルバムの8曲目「車は走る」は、同業者である槇原敬之の楽曲を理論的に分析して再構築した曲、、と書くとなんだか小難しいですが、まんまマッキーのイメージをそのままコピーしたような曲。というか、マッキーの曲よりマッキーぽい(笑)。
真面目に遊ぶこういう発想、清水ミチコやタモリの芸にも通ずるところがあるなと思います。こういうユーモア溢れる曲もあるところがKANさんの魅力。

ああ、こうやって書きながら昔のアルバム聞き返してたら、より実感が湧いてこないです。
ひょっこり、ライブやりますって告知がまたありそうな気さえしてきます。


今頃お空の上で盟友だった小林信吾さんとか、ライブでずっとキーボード弾いてはった矢代さんと会えてるのかな、会えてたらいいですね。

たくさんの素敵な音楽と笑いをありがとうございました、KANさん。
新しい曲を聞けないと思うと寂しすぎるので
今はどこか遠くに旅にでも出たのだと思うことにしよう。


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