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雨宿り

眠りの底から覚醒へと、ゆっくり浮上していくのがわかる。瞼の内側、波の無い水がわずかに白んで、私は朝が来たことを知る。

一息、天井に向けて深く息を吐く。昇っていく泡のように静かなその音を、戸外の雨音が次々破っていく。遮光カーテンを閉め切ったままの室内、そこに留まる柔らかな暗闇が、私の身体を慈しむ。

闇の膜の向こうで、雨がしきりに地を打つ音がする。屋根を、窓を、様々な音階で鳴らす。私は布団を頭まで被り、膝を抱えて丸くなる。

今はどんな音も聞きたくなかった。アスファルトが、屋根が、傘が、人が。それらのどれもが、濡れてしまうのを見たくなかった。

再び闇の中へ沈む。深海を目指して、この雨が止むまで。

本、映画、音楽など、数々の先達への授業料とし、芸の肥やしといたします。