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セールスイネーブルメントに潜む罠。未経験者だからこそ気付いたHowより大切な心得

皆様、こんにちは!

カスタマーサクセスプラットフォーム『commmune』を提供するコミューン株式会社にて、ビジネス部門 (Mkt-IS-FS-CS) 横断組織のマネージャーをしている長洲 (@koki_nagasu) です。

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カスタマーサクセスの What・Why・How が正しく認知され、業種/業界/企業問わず「企業とユーザーが融け合う社会を実現する」ことを目指し日々奮闘しております。

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さて、セールスイネーブルメント Advent Calendar 2021も中盤に差し掛かり、皆様の中で「セールスイネーブルメントって大事だな、うちでもやりたいな」という気持ちが芽生えてきた頃かと思います。一方で、同時に「自分にできるだろうか…」という不安を抱いた方も多いのではないでしょうか。セールスイネーブルメントを任されたものの実はご自身の営業経験が豊富でない方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、私からは「セールスイネーブルメントに潜む罠」と題しまして、セールス未経験者が知見・偏見を持たずフラットな目線でセールス組織強化に取り組んだ足跡の一端をご共有できればと思います。
結論から申し上げると、セールスイネーブルメントにおいては、むしろセールスの経験が豊富でない人・セールスチーム外の人の目線が入ることが非常にポジティブに働くと考えています。



セールスイネーブルメントに取り組んだきっかけ

コミューンはおかげさまでT2D3を上回るペースで成長を続けており、2021年9月には19.3億円の資金調達を発表させていただきました。

さらなる事業成長の加速化のため全方位で採用を拡大しておりますが、特にセールスチームは成長速度を大きく左右する最注力部門として、急ピッチで採用を進めていきました。

一方で問題となるのが採用後の話です。それまではフィールドセールス (FS) はインターンからの新卒を含めた数名しかおらず、全員が代表高田によるOJTという名のブートキャンプにより一人前へと成長していっていました。つまり、まったくスケーラビリティのないモデルでした。一気にメンバーが倍以上になることを考えると、入社後の垂直立ち上げを実現する仕組みを早急に整備する必要がありました。

そうした経緯でイネーブルメントに着手したものの、まだあまり科学されておらずそこかしこに罠がありました。私が気付いた/ハマった罠の一部を以下にシェアさせていただきます。


セールスイネーブルメントに潜む罠たち

第一の罠:セールスは共通言語があるようでない

一言で「セールス」と言っても、その言葉の示す領域は多岐にわたります。
(下記は英語として正しくないですが雰囲気を伝えるためですのでご容赦ください)

・What :有形商材、無形商材 (それぞれ中身も多様)
・Who  :個人、法人 (toC事業者、toB事業者、公共 etc.)
・When:新規、既存 (アップセル、クロスセル、エクステンション)
・How  :組織で決められた営業プロセス + 個々人のTips

全員が新卒でその企業でのみ営業経験を積んできた、ということであれば問題ないのですが、多くの企業では多様なバックグラウンドを持つセールスメンバーが共存していると思いますので、セールスイネーブルメントを 「Howの型化に向けた仕組みづくりやトレーニング」に閉じて捉えてしまうと、誰もが正しく享受できる仕組みにならない可能性が非常に高いです。

私がこのことに気づいたのは、イネーブルメントに着手すべく、手始めに当時セールスチームにてまとめられていたNotionを読んだ時です。
セールス経験がない私にとっては、行間が広すぎる (=解釈の余地がありすぎる) と感じました。総論何を言っているのかは分かるが具体的にイメージをしようとすると絞り込めない。様々な項目について読み進めていく中で、「あ、皆それぞれ自分の中の常識は端折って伝えているんだな」と結論付けました。

共通認識を醸成し型化を進めていく上では、各メンバーの過去のセールス経験と現在のセールスの違いを加味した設計をすることが重要です。

例えば、当社プロダクト『commmune』はいわゆるBtoB SaaSではありますが、導入企業は自社での利用に留まらずcommmune上で「顧客コミュニティ」というエンドユーザーが参加・交流する場を構築しています。そのため業務支援系SaaSに比べてステークホルダーが多く、さらに多様なステークホルダーに応じてcommmune活用の目的 (ゴール) も多岐にわたります。

そうした違いを鑑み、イネーブルメントに際しては「いかにツール売りから顧客およびその先のエンドユーザーのサクセスまでを見据えた個別提案に進化できるか」を最重要テーマとして検討を進めています。


第二の罠:セールスイネーブルメントはセールスチームで完結しない

The Model が浸透し始め、同時にSFA / CRMツール等による営業情報・顧客情報のデータ連携も進んできました。
それ自体は素晴らしいことである一方、データの価値をなくさないためにも常に部門間での整合性を担保し続けることが求められるようになっています。
セールスイネーブルメントにおいてオペレーションの磨き込みは切り離せない要素ですが、ことデータ管理や情報連携に関しては他部門への影響を十分に加味してアップデートさせなければなりません


あるチームの最適解は、基本的に他チームにとっては最適解ではないのです。


私がセールス未経験者ながらにセールスイネーブルメントをどうにかこうにか主導できているのも、日々横断組織として各ビジネス部門と接することを通して俯瞰的な視点を持っていることが大きいです。

たとえば営業 (FS) の型化を進めていく際にも、「あれ、これって IS時点で必要な情報取れないのでは?」「ここで○○がはっきりしていないとCSがサクセスできそうか判断つかないのでは?」といったことに自然と思い至り軌道修正を図ることができています。

トライ&エラーができることも重要ですが、特にリソース制約の大きいスタートアップにおいてはなるべくエラー (手戻り) が発生しないように視野を拡げながら検討を深めることも同じように重要です。

コミューンのように横断組織がない場合、セールスイネーブルメントといえどセールス以外のチームからも一人ずつ関わってもらうことが成功確度を高めることに繋がるのではないでしょうか。


第三の罠:取り巻く環境の変化も加味しないと成果を正しく測れない

これは事前に気づけなかった罠ですが、十分な検討の末ついに施策を実施しても、「〇〇をするようにしたので来月には成果が出るだろう」と決めつけてはいけません。その間社外はもちろん社内でも刻々と変化は起こっており、その影響を受けたことにより想定した結果と大きく乖離する場合があります。施策実施後に得た結果が良かった場合もそうでない場合も、本当に施策の効果によるものなのかは冷静に見極めることが重要です。
以前、フィールドセールスのある指標が想定より芳しくなく「施策ミスかな…」と落ち込んだのですが、よくよく見るとインサイドセールスからの商談パス方針が (さまざまな事情が重なり) 結果的に悪い方に転んでしまったのが原因、ということがありました。インサイドセールスが悪いことをしたわけではなくその時のフィールドセールスの状況との噛み合わせが悪かったのだ、というのがまた難しいところです。


セールスイネーブルメントは、効果を最大化させるためにはより広い組織の動きを加味しなければならないが、同時に複雑性を増すことにも繋がります。最初から最高の結果を目指すのではなく、全体感は念頭に入れながらも一歩ずつ積み上げていく意識で臨むことが実効性担保に繋がるものと思います。今回のセールスイネーブルメント Advent Calendar 2021には先人の試行錯誤の結晶が詰まっているかと思いますので、ぜひご自身の組織に使えそうなものから使う、くらいの身軽さで第一歩を踏み出してみてください。



コミューンにおけるセールスイネーブルメント進捗

コミューンにおいては現時点でイネーブルメントを大きく5つの要素に分解して考えています。

1. 営業プロセスの再定義およびデータ連携体制の構築
2. 最速で1人前となるまでのオンボーディングプログラム設計
3. 営業成果を最大化するための型化 (プレイブック作成)
  └ アクション最適化だけでなく、提案力強化にもトライ
4. マネジメント・コーチング強化
5. 武器づくり (営業資料等)

これまでに1および2を一旦ある程度進め、現在は3,4に着手しています (5は継続的に実施)。
外部の力も借りながら一人ひとりのメンバーに対しヒアリングを実施し、各営業フェーズで商談を前進させる際に意識していることや Key Action が何かを棚卸しし、体系化を進めております。

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(まだ参画したばかりの人も多いため) ヒアリングは10名に満たないメンバーにしか実施しておりませんが、それだけでも "知" が集積していく実感があります。私は自らも一部商談に同席しているので、微力ながらそこで得たものも加えて進化させていきます。

また、3を進めていく過程で既に1,2についてアップデートが必要そうな箇所が見えてきているため、併せて検討の俎上に上げております。

例えば、商談オンライン化の弊害としてセールスメンバーのスケジュールが隙間なく商談でいっぱいになり各商談のネクストアクション等の情報入力がおざなりになってしまっている現状があるので、商談後30分は別の商談が入らない仕組みにすることを検討しています。

イネーブルメントにおいて情報入力は最重要ですが、あくまでヒトの時間は有限であり、やることを決める際には同時にやらないことも決めなければならない (何かとトレードオフになる) ことは忘れてはいけません。際限なくやることが増えていってしまうので…


さいごに

イネーブルメントに携わって感じるのは、一度整備して終わりでなく進化させ続ける必要があるということ、そしてその機会は想像以上に早く高頻度にやってくるということです。大きい転換点としてはサービスの進化、ターゲットの変更、プライシング等の戦略変更 などがあり、それ以外にも周辺部門で何らかの変化があった場合にも影響を受けます。現時点での最適解を求めながらも、設計時点で次の進化がどういう方向にいくかをイメージすることが重要です (相当難しいですが…) 。

私自身試行錯誤の日々なので、ぜひご覧いただいている皆様と色々とお話させていただきたいです!

また、ビジネス部門横断組織がどういったものかご関心のある方ともカジュアルにお話したいです。セールスイネーブルメントは重要な要素ではありますが、チームとしてはもっともっと広いスコープの課題と向き合っていますので、キャリアの幅を拡げる絶好の機会をご提供できるかと思います。

追記:ビジネス部門横断組織についてNoteにまとめました。


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