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映画「Nomadland(ノマドランド)」を観て:VANLIFEの光と影を鮮やかに描いた作品

気付いたら桜も散り始め、卒業式の写真もSNSにちらほら。春という、終わりと始まりの季節が今年も訪れたことを、私たちに教えてくれます。

そして、今日はそんな”終わりと始まり”を感じられる映画、「Nomadland(ノマドランド)」を観てきたので、その感想を綴りたいと思います!(※ネタバレは含まないのでご安心下さい)

Nomadland(ノマドランド)とは

原作である、ジェシカ・ブルーダー著「ノマド: 漂流する高齢労働者たち(Nomadland: Surviving America in the Twenty-First Century)」を映画化したのがこの作品です。

第78回ゴールデングローブ賞でドラマ映画賞と監督賞を受賞し、アカデミー賞最有力の作品として、いま世界中で話題の作品となっています。

主演女優のフランシス・マクドーマンド(Frances McDormand)が原作を読み、その内容に衝撃を受けて、映画化の権利を購入して、映画化に踏み切ったそうです。

そして、遂に日本にも上陸し、一昨日3/26(金)に公開されました。


Nomadlandのあらすじ

企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーンは、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。(Nomadland公式HPより)

こちらがその予告編です:

また、メイキング映像はこちら:


Nomadlandを観た感想

そして、遂に本日、チケットを握り締めて映画館へ駆け込みました...!

あっという間の110分。観終わった瞬間、映画の世界観に吸い込まれてしまい、なかなか現実に戻ってくることが出来ませんでした

まず、率直に感じたことは、想像以上のリアルさ、ノンフィクションのドキュメンタリー映画だった、ということです。

この映画は、今世界中でムーブメントが起きている、車を拠点にする「NOMAD」というライフスタイル、「VANLIFE(バンライフ)」という文化の光と影の2つの側面のうち、"影の側面"にフォーカスしています。

*「VANLIFE(バンライフ)」についてまとめた記事はこちら:


あまりにリアルな「VANLIFE」の世界を再現していること、エンドロールに実名で出演してる方々が多数いたことに驚き、映画を観終わった後にまさかと思い、調べたところ、実際に映画に出演しているVANLIFER(バンライファー = バンライフをしている人々)は、主演女優と男優以外はほぼすべてが、本物のVANLIFERが起用されていました。

そのため、本当に車を拠点にしながら生活をしている人々とそのVANが、この映画では登場しあるがままにその姿が描かれています。


VANLIFE(バンライフ)の文化的背景と社会的意義

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それでは、VANLIFEの"影の側面"とは、一体なんなのでしょうか?

それは「社会的弱者を救済するセーフティネットとしてのVANLIFE」です。

もともと、VANLIFEという文化が米国で広まった背景は、この映画にもあるように、2008年に起こったリーマンショックです。

この資本市場の崩壊を契機に、米国では数多くの人が生活苦になり、家賃を支払って生活することが出来ない人々、いわゆる「車上生活者」を多数生み出しました。Nomadlandの主人公はまさにこの1人です。


他方、「VANLIFE」という本を執筆した、フォスター・ハンティントン(Foster Huntington)という、元ラルフローレンのデザイナーがいます。

彼は、同じくリーマンショックを経て、VANLIFEをはじめ、車に滞在する新しいライフスタイルの生みの親ですが、彼が世界に広めた生き様はまさにVANLIFEの"光の側面"で、「自由に生き方を選べる人が、より自由に生きるための新たな選択肢としてのVANLIFE」を提唱、そんな現代版アメリカン・ドリーム的な思想は、若者たちの心を鷲掴みにし、無数のインフルエンサーを生み出しました。

・Instagramのハッシュタグ「#vanlife」はもうすぐ1000万件にも及びます:

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常に物事には2つの側面があると言われますが、VANLIFEという文化にはこの光と影の2側面があり、いつも話題になるのは光の側面。影の側面については、これまで中々スポットライトを浴びることがありませんでした。

しかし、この映画ではこのVANLIFEの光の影のコントラストをこれでもか?というほどに鮮やかに表現します。


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例えば、映画の冒頭に「RVパーク」という施設が出てくるのですが、これはVANLIFERが滞在可能な車中泊専用の施設です。

ロードトリップの拠点としての機能のみならず、社会的弱者を救済する生活インフラとしての意義があります。そして、米国では企業が滞在費用を負担し、車上生活を送る季節労働者を受け入れています。


また、生活苦によりVANLIFERになった人のうち高齢者が大きな割合を占めるという、SNSでは実感できない現実をこの映画では突きつけます。

そして、高齢者の多くが、人生を通じて数々の別れ・喪失を繰り返しており、行き場のない感情を癒すために、そして人間としての尊厳を守るために、VANLIFEを通じて、自然を愛し、動物と繋がり、孤独な自分を受け入れているのです。そのリアルな様がこの映画のテーマです。

「セックス・ドラッグ・ロックンロール」を根本的思想にしたヒッピー文化ともまた違う、ユートピアを求めて放浪する自由主義。

予告編でも出てくる、この映画に登場するセリフは、まさにその現実を象徴しています:

One of the things I love most about this life is that there's no final goodbye. / この生き方が好きなのは、最後の"さよなら"がないんだ。(予告編より)


Nomadlandが私たちに訴えるもの

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この映画を観た多くの人は、車上生活者ではないでしょう。

決まった仕事があり、毎月決まった金額の給料が振り込まれ、家賃を払って住む家がある、いわゆる"安泰な"暮らしをしている人がほとんどだと思います。私もその1人です。

しかし、この映画が、私たちの心の琴線に触れるのは何故なのでしょうか?


私の答えは、Carstay株式会社という、VANLIFEの普及啓蒙を行う会社の代表の責務として、ここ数年間で世界的に急速に広まったVANLIFEの影の側面に目をそらしていけないという使命感を味わったことでした。

キャンピングカー文化が普及している米国ですら、車上生活者を送るVANLIFERは社会的弱者として扱われる、という事実が想像以上に胸を抉りました。これが文化が浸透してない日本では、一体どんな扱いをされるのか?

特に日本では新興文化ということもあり、この両側面の線引きが曖昧で、もともとVANLIFEの自由さに憧れてはじめてみたものの、結果的に生活苦に陥ってしまった、という若者も少なくないと感じています。


私たちの会社のスタンスは、常にVANLIERの味方でいる、ということです。これは、光と影の側面関係なく、ということをこの際に明言しておきます。


では、具体的に会社として何ができているのか?

月1万円から住める車中泊施設「バンライフ・ステーション」を先日発表しましたが、まだまだ13施設と、社会インフラと呼ぶにはまだ程遠い規模です。


自由に生き方を選べる人が、より自由に生きるための新たな選択肢としてのVANLIFE

社会的弱者を救済するセーフティネットとしてのVANLIFE


どちらもVANLIFEという文化の本質であり、価値だと考えます。

そして、この両方に対して、会社として出来ること、やらなければならないことを明確にし、これから社会性と事業性を両立できる事業を生み出していかねばならないと、そうこの映画を通じて益々感じました。


ぜひあなたの答えを、映画館で見つけてみて下さい。

本当におすすめの映画ですので1人でも多くの人に観てもらえたら幸いです:


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました*

Carstay株式会社では、ミッションである「Stay Anywhere, Anytime|誰もが好きなときに、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界をつくる」を実現するため、国内最大のキャンピングカー・車中泊スポットの予約サービスを運営しています。企業さま・自治体さま・メディアさまと是非連携させて頂きたく、また新たな仲間も募集しておりますので、下記URLより、ぜひお気軽にお問い合わせ頂けましたら幸いです:https://carstay.jp/ja/contact

2021.03.28


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