新宿ジャックドウ

歌舞伎町の裏路地で新宿ジャックドウとふちに書かれた茶封筒を拾った。

中に入っていたA4の黒ずんだ紙切れ。

そこにこんなことが書かれていた。



喜怒楽は風
哀だけは澱

「錆」

綿あめをちぎっては食べちぎっては食べ

カップ麺のフチ割り箸虚ろに残る己みたいだ

早寝して早起きできず頭痛てぇ

冬の露窓に横線ひくもなんもならない

ボッコリとあいた穴だけただある日

千切れたしおりだけが残されている本はない

虫の音より遠く大きい工事音

蛍光灯が高速で過ぎていくワープできねぇかなあの夜に

大股広げ異国の地下鉄縮こまっちゃったじゃねえかよ

んだよさっきから否定ばっか

10年前のゲロを思い出す靖国通り

レッドブル立て直せない飲み過ぎ

ととのうってなんだ深夜のサウナ大雨涙

卓球のラケットさえも握れないかろうじて球

スマホのライトだけの部屋夜中音無し

天井がまるで天井ではなくなる夜

はああ?って3度圧かけられた

いっそのこといっそのことやっぱやめて

いつの時代の紙幣だよ自販機の紙屑

やるせなさだけで千鳥足になる夜もあるなんてシラフだぜ

ぎいこぎいこのこぎりがかゆい

目が逝ってる財布落とすし免許証入ってるよ

別にいいならいいけど追いかけねぇから

いいかたという突っ込みにイラつく言い方じゃねえよ

ポケットティッシュのがわだけ残る広告の紙とともになんて儚い中折れのコンドームとどっちが重いだろうなんて

4人組の20代男子と飲み屋で隣合わせはしご酒につき合う道すがらこれは三角関係どころの騒ぎではない

正座の後の足より痺れて前に進まない人生

見てしまった掌の血爪が食い込んで

死んだように眠る死んだようにバス停のベンチ

グッシャリとしたウコンの空き缶カラス

ねじ曲がるゆがむドス黒い路地裏沈んでいく

掴もうとした空間がスカッと無になるなんだこの闇は

うっすらと影が残る踊り場死臭がする

何を人の話で盛り上がってんだよその銃はすぐにてめえの喉元にやってくんぞ

ボッコとした孤独の穴穴

夕方まで寝てしまった怠い体を起こす力は足にはなく手で起き上がる窓を少し開け風にあたる生あたたけぇ

どこにもはまらないジグソーパズルのピースつうか欠片これどこだ

壊れちゃないのに止まった目覚まし

地面に叩きつけられた誕生日プレゼント

あぁ3時間後は銀蔵

摩擦が痛い消しゴムと古びたノート

掠れがすれの声煙草吸いすぎ大音量ソウル

フリック入力も滑るうまくいかない通じない朝焼け

食えないのにとんかつ屋ご飯大盛りとりあえず味噌汁すする

ああキャベツまじい

いったい何本あるんだ折れたビニ傘小雨アスファルト

やっべ右目見えねえ地面二段構え

聴く気がねえのに話しかけんじゃねえってどやされてる隣のやつそういや俺も聴く気はねえ

あれ空ってこんな暗かったっけ

角度で虹みてえにフレアするこの光だけが楽しみだ夜の

雨で膨らみすぎたジャンプがある花壇先週もあったな

新宿の朝通勤階段こぎみいいリズムリズムリズム俺だけ違う

電車連結のドアぐれえには重いぞ俺の命たぶん

わりいどく力もねぇんだわ

子守唄がリフレインする重症だなこりゃ

揺れる揺れる電車で身体持っていかれる自分に心底ムカつくああっ

ブチブチブチと引きちぎられた何か

どんぐりのじゃねえどんぐりと背比べ

目深にキャップマスク目閉じる

このボタン押したら人生終わるやつ

窓あけてくれたのむたのむたのむ

大きな犬と海岸を散歩そんな現実と向き合えない自分はただただわちゃわちゃ海岸に寄生する

ピッカピッカピッカ明るいのは信号機だけ他は誰一人として

ゲロの海に寝る男まるでバリアかのように人が避ける

アイスピックで刺してくれこの腕を

ころがるエアポッズ片方だけぐしゃり

100人中99人がスマホの画面に目線を落とす夜俺だけその風景を見てる

沈黙が美しいのは美しい環境にあるときだけだここの沈黙はただの地獄

職人は魚によって包丁を変えるらしいほうそうか人によっても包丁変えてもいいかも

ああこの人は脳のどこかが壊れちゃったんだただそれだけ哀れとかはねぇよ良くもねえけど

繊細なさぁテリトリーってのがあんのよこの街にも気がつかなかった?

ステンレスの引っ掻き傷ふた筋

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