#43  ひじ

 4月の下旬の土曜日、長男と子供が帰ってきた。5歳のはやたと3歳のりつは今年から家の近くの保育所に通園している。「あたらしい保育所はどう?」と私が聞くと、りつは、「やさしい子もいるしこわい子もいる」と言った。私は「そうやな」と言ったものの、新しい保育所でのりつの気持ちはわからなかった。

りつは、相変わらず『ひじ』が好きだ。りつは、ひじを伸ばした時にできる皮膚のたるんだ柔らかいところが大好きだ。りつが「ひじ、ひじ」というと、私たちは注射を打つ時のように袖口をまくり上げる。すると、りつはひじをなでる。ひじをつかむ。時々ひじを爪でひっかくこともある。以前通所していた保育所に慣れたころ、りつは先生のひじをさわっていた。大人のひじをさわるのが心地よい気持ちになるのだろう。

夕食を終え、入浴を終え、パジャマ姿のりつと、私はソファーに座ってポケモンのYouTubeを見ていた。りつが「ひじ、ひじ」と言った。「ひじか?ちょっと待って。」と言って、私は左手の袖口をあげて腕を出した。りつはすぐに、わたしの腕のたるんだところを触りに来た。しばらくすると、りつは目をとじ、母乳を飲むように下のくちびるがかすかにうごいていた。そのあと、りつはこっくりこっくり眠っていった。

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