#66 ポニーテール

「ただいま~」りこが学校から帰ってきて言った。「おじいちゃん、りこ変わったと思う」「そうかな~」と私が言うと、「ここを見て・・・」と顔を右に向けた。「ほんまや、髪の毛切ったん?」

りこは腰まであった自慢の髪の毛を切って、ポニーテールにしたのだ。「おばあちゃんもびっくりするわ。せやけど、どうしたん?何かあったん?」と私が聞いた。「ママに髪の毛が長いので切りなさいと言われたわ。」

「カットしてもらうときはどんな気持ちやったん?」と私が言うと、「もうその時は覚悟決めてたわ。」とりこは言った。「へえ~。覚悟?」「そやで、美容院に着くまでは、いろいろと考えていたわ。そら小さい時からず~っと伸ばしていたんやから。しかし、ママとは、腰まで髪の毛が伸びたら切るわと約束していたしな・・・」

「美容院では、は~い髪の毛を切りますよと言って、すぐに髪の毛短くなったわ。髪の毛切ったら、絶対にさびしくなると思っていたけど・・・・。せやけど、髪の毛切ってもらって、楽になったで。」

「次の朝、学校で友達になんて言われるか気になったやろ。」と私がいうと「それは、だいぶ気になったわ。髪の毛が長いほうがよかったと、絶対に言われると思ったわ。3年の時、友達と髪の毛の話をしたことがあったわ。その時ゆかちゃんは、ママに言われてショートカットにしたけど、ほんまは、りこみたいに髪の毛を伸ばしていたかったっていってたしな。さきちゃんも、りこは髪の毛が長いのが似合うと言ってくれてたしな。」

次の日、朝の会が始まる前に、りこは椅子に座って、一人で本を読んでいた。そこに友達が来て、「りこ、髪の毛切ったん」と言った。ほかの友達も「かわいい」「いい感じ」「似合う」とも言ってくれた。私が、「それだけ?」と言うと、りこは、「髪の毛の話はそれだけやったで。もっと『なんで髪の毛切ったん?』とか、『切られている時、悲しくなかったん』とか聞かれると思ったけど・・・。案外、人の髪の毛ってどうでもええんやな~と思ったわ」

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