白色

昔、こんなことがあった。
こんがりと焼けた肌色をした女の子が立っていた。
にかりと笑うと 歯と歯のすきまにポツポツ黒い穴が目立つ。
彼女は白い服はきらいと言った。
隣の男の子はどうしてと尋ねた。
彼女はおしりのしっぽを振りながらこう答えた。
「だってだんだん歳をとると髪が白くなるでしょ。
最後に残った骨も真っ白でしょ。
おまけに煙突から出る煙も白いし。
白い服なんか着てるとうっかり一緒にのぼっていっちゃう。」
よく見ると彼女のふわふわの髪はところどころに白が混じっている。
「お葬式に黒い服を着るのは、上に行かないように、土に踏ん張るためなのよ。
どこかの遠い国は白い服を着るらしいけど、きっと彼らは軽く飛んでいかない秘密の方法を知ってるのよ。死者と一緒にめいいっぱいお祝いして、そして土の上に戻ってくるの。たまに戻ってこない子を心配したお母さんが、黒い服を着せたのよ。」
男の子は少しイライラして言った。
「でも結婚式には白い服を着るよ。それに新学期も、新入式も、新しいことを始めるときはパリッとした白いシャツを着ると気持ちがいいよ。」
女の子は不思議そうな目をして言った。
「白は循環を司るから、そうでしょ?生まれて、朽ち果てる。両方とも白い色よ。太陽は万物を育て、決して近づくことはできない。全部黒く白く燃えてなくなっちゃう。」
よく見ると彼女の肌が自分より白くなっていることに気づいて、男の子は少し不安になって、その場を離れた。
女の子の尻尾はいつのまにかなくなり、絨毯を見つめていた。

男の子は、彼女が着ていた服の色を いまだに思い出せないでいる。

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