見出し画像

すずめのがっこう






マンハッタン島の西を流れるハドソン川からの風が風景をいっそう青くしている。
直線だけでできたビル街を吹き抜けてゆく冬の終わりの強風に、ボクは吹き飛ばされそうになっている。
でも、ちょっと注意して耳をすませば、ガラスとコンクリートでできたパズルのような大都会に生きる・・・すずめの声が聞こえてくる。
ボクはそっとすずめのがっこうの教室のドアを開けてみる。

何羽いるんだろう、ここマンハッタンに・・・そしてこの地球上に。
星の数ほどに思えてしまう。
すずめ。
何を食べ、何を飲み、365日を過ごすんだい?
いつ起きて、まずすることは何なんだい?
音楽の時間と朝ご飯、どっちが先? 
朝ご飯を食べる場所を、どうやって知る? 社会科の授業で情報交換とかしてるの?
気になるなー。だってほら、すずめくん、みんな痩せてないんだもん。すずめの学校の給食システムは相当のものだと思うんだ。

家族はいるの? 先生は? それともキミたち集団はトモダチ仲間?
ケンカすることも時にはあるかもしれないけれど、基本的に仲良しだよね。
放課後にはみんなで楽しそうにおしゃべりしている。

今日はこんなことがあって・・・アレ食べて・・・やっと冬が終わりそうね・・・羽休めできるステキな窓辺みつけたよー・・・明日一緒に行ってみる?・・・連れてってー・・・ワタシもいきたーい・・・。

ってなわけで、仲が良いのは十分にコミュニケーションしているからだって分ったよ。それが秘訣なんだね。
ああボクたちも見倣わないと。
最近は・・・人間のボクら・・・スマホばっか見て、てんでバラバラになりがち、でもさ・・・キツイいち日が終わって、晩ご飯の時ぐらい食卓を囲んで話せたらいいな。「ぴーちくぱーちく」とまではいかないかもしれないけれど。

あーそうそう、授業が終わる前に質問がありまーす。
今日ボクがあの3階建てのアパートの前を早歩きで通り過ぎようとしたら、みんな気持ちよさそうに日向ぼっこしててさ、ボクに挨拶してくれたでしょ。
あの時、何て言ってたの? 
だれか通訳してくれないかなぁ・・・


ボクに何か言いたげな 日向ぼっこのすずめ




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?