イジメの歴史的分岐点

 あの~、イジメと言えば宝塚歌劇団の問題が、今はメインストリームなんでしょうけど。
 あそこでイジメがあったか無かったか。

 「何を今さら!」
と、私などは思うんです。
 歴代の、宝塚歌劇団を卒業されて女優さん、タレントさんになられたOGの皆さん、全員、今までのインタビューやらトーク番組なんかで“証言”されてますやん?
 「(宝塚の上下関係は)厳しかった。キツかった。それに立脚した規則や掟も含めてシンドかった」
って。
 まぁ、あくまでもエピソードトークとして語られていて、彼女達に“告発”する意図は無かった筈ですが。
 問題になる前からダダ漏れだったって事です。“真相”はね。

 さて、今、私は58歳なのですが、実は今現在『イジメ』とされているものの発祥に立ち合っている世代なんです。
 所謂『アラ還(around 還暦)』世代がね。
 そして、『イジメ』を生み出した訳では無いものの、しかし象徴的な存在となったテレビ番組があります。

 『3年B組金八先生』

 『イジメ』が起きる以前に社会問題となっていたのが【校内暴力】。全国の中学・高校で、生徒が教師、気に入らない生徒に対して過激な暴力行為をはたらく事が横行しておりましてね。
 では【校内暴力】は何故起きたのか?
 簡単にまとめますと、我々世代というのは“ニューファミリー(もはや戦後ではない)”と呼ばれた年代の直下でありまして、即ち父親が『家庭内の絶対君主』から『家族の一構成員』に格下げされた年代の影響をモロに受けた。
  で、これは父親ばかりではなく、世の中の偉いとされている人、階層を「そんな事ないンじゃね?」と疑問視、もしくは否定するように育った訳です。
 それに対し、学校の先生というのは1960年代の安保闘争を中心とする学生運動までは【先生様】と父兄から崇められる存在だったのに、この学生運動を学内で治め切れずに警察権力に頼ってしまった事から権威が失墜してしまった。
 しかし、特に地方の現役ベテラン教師は先生様世代の生き残りが大半でしたから、その気分のまま学校運営を行い、生徒にも高圧的に接した訳ですが、そこで偉い人の権威を否定する世代の学生たちと価値観の相違が起こり、対立が生まれた訳です。

 『校内暴力』は、かつての学生運動と同様に警察権力の介入によって鎮静化されてしまうのですが、『金八先生』第2シーズンのラストで加藤まさると仲間達が金八先生の目の前で手錠をかけられ連行されるシーンなどはまさにこれを象徴しておりました。

 更に言うと、それまでの先生様的価値観を過去の遺物としてしまったのも、実は『金八先生』でありまして、校内暴力が全盛の頃にこのドラマはスタートしており、学園ドラマですからこれを真っ向から取り上げていた。
 で、主人公の坂本金八は徹底的に生徒に寄り添う先生で、生徒の意見にも是々非々……つまり正しいと思えば大人にとって都合の悪い主張でも取り入れるし、間違っていれば生徒が納得するまでキチンと向き合うような……で正面から付き合うタイプで、これが学生年代の視聴者から爆発的な支持をうけた。

 問題は、校内暴力対応で疲弊しきった親や教師が「これだ!」とばかりに、次々と坂本金八のやり方を安易に丸パクリし始めた事なんです。
 これで当時の学生達は、校内暴力に参加する者もしない者も、劣等生も秀才も、全員が大人達を冷めた目で…何なら完全に見下すようになってしまった。

 でも、学校や世の中に鬱々とした不満を持つ者は居る訳で、それは発散しないとイカン。校内暴力は警察に捕まる事が分かりましたしね。
 捕まってしまう“先輩”を横目に、彼らは考えた訳です。
 「そうか!大っぴらに暴れるから見つかるんだ。バレないように陰で、地味にやる分には暴力にもならないから捕まらない。……先輩、俺らは上手くやるよ!!」

 私は勝手に、イジメ前夜の校内暴力時代を「BK(ビフォー・金八)」、イジメが始まってからを「AK(アフター・金八)」と読んでおります。
 ま、イジメ自体は大昔からありましたけれど、陰湿さ陰惨さ、そして根深さは従来のそれとは完全に一線を画しておりますのでね。

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