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例年にないクリスマス

残念ながら11月の規制は結果を残せなかった。毎日3万人近い新規感染者は国内で減ることがなく、そして死者も多数報告され続けた。
各地において10万人あたりの感染者を色で示すドイツの地図は、白から黄へそして赤となり、その赤の色合いも濃さを増し、真紅に染まったままだ。

ドイツ人にとって一年で一番大切なイベントはクリスマスだ。日本なら家族で祝う最たるはお正月だが、こちらはこのクリスマスなのだ。
この一大イベントを控え、11月の規制でなんとかコロナを抑え込んでほしいと私は願っていた。

メルケル首相ファンの私は、彼女の政策が功を奏してほしいとも思っていた。

そうでなくとも感染防止対策に対するデモなどが行われていたので、クリスマスに規制などをかけたらば、どれだけドイツ人の反感をかうだろうと客観視していた。

3月のロックダウン時彼女は、カメラをじっと見つめ静かに話しかけてきた。テレビを通しその瞳をずっと見ていた私は、彼女の瞳が一度も私から逸れることがなかったことに心を打たれた。外国人の私でさえ彼女の発言の一言一句に耳を傾けるのだから、ドイツ国民の多くが、やはり自分たちが選んだ首相が彼女であることは正しい選択であったと再確認したのではないだろうか。

数日前、彼女はマイクの前でいつになく声を荒げ拳をにぎって演説していた。
「一日の死者が590人などは私には受け入れがたい。祖父母と迎えるクリスマスが今年最後ということなどあってはならない。」と語った。

今年のクリスマスに視点を置いて客観視していたわたしは、その言葉を受け、シンプルなことを見落としていたことに気づいた。

クリスマスは毎年やってくる。

来年彼女は政界から退くという。まだまだ彼女という人の言葉を聞いていたかったし、人となりを見ていたかった。非常に残念だ。

買い物に行ったついでに例年賑わうクリスマスマーケットを通りかかった。
毎年11月中旬からクリスマス前日にかけ各地で開催されるこのマーケットは、賑やかで活気があり且つ華やかで美しかった。
今年は早々に中止を発表した都市あり、そのまま開催されたところありだった。

毎年ぎっしりと販売小屋で埋まっていたスクエアには、かろうじて数店の小屋があり、そこには11mのクリスマスツリーが聳え立っていた。ぼっちだ。その様はなんだか滑稽にさえ感じるほどだった。

クリスマスの風物詩グリューワインは、ご当地のマグカップに入れられてカップ代込みで販売されている。このカップはお土産に最適だし、要らない人はカップを返却すればカップ代が返金されるのだが、今年は色気のない紙コップだ。

グリューワインとは甘みと香辛料の入った温かいワインで、とても身体が暖まるので、寒い中クリスマスマーケットを見廻るのに最高の飲み物なのだ。普段甘いアルコールを好まない私だが、この時ばかりは必ず飲んでいた。
バーカウンターを挟んでみんなでこのワインをワイワイ飲んでいたのだが、今年はカウンターはないし、各々距離を保って心許ない様子で飲んでいて、その様子に寒ささえ感じる。

私が訪れたときはまだそのように飲むことができたが、この数日後それも禁止された。

なんとか感染を免れ日々通学していた息子は、先週金曜日に帰宅し、この日の通学が年内最後になったと私に通達した。
本来は22日までだったので、あと10日ほどなんとか持ちこたえてほしいと送り出していたが、拍子抜けしたというか肩の荷がおりたというか。

しかし在宅学習の必要があり、その間テストもあるらしく、息子としてはまだ荷をおろせずにいるが。

来年のクリスマスは彩ある季節感を感じたい。

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