目を癒すストーカー

会社に私好みのイケメンがいる(世間一般的にイケメンかは問わない)
毎朝会社に行ったら、必ず彼の位置を確認しそこから自分の座る位置を考える。今日は彼の見える位置で仕事をするか、あえて背中向きにするか...

初めて彼を発見したのは、今の会社に行き始めて1ヶ月経った頃だった。今でこそ彼の名前はわかるが、当時は何の情報も持っていなかった。
フリーアドレスとは言いつつも、チームで座る位置はなんとなく決まっているので近くに座ることは難しい。まして隣なんて...
幸い島は近かったので話し声は聞こえる。さらに幸運なことに、彼のチームはすごく仲が良い。雑談ベースの会話が多いので、漏れ聞こえる話の中に彼の情報がないか、真剣に仕事をしながら聞き耳を立てていた。

しかし、なかなか情報がゲットできない。視覚情報はどんどん増えていくのに肝心の個人情報が全然掴めない。ウォッチング始めて1ヶ月で得られた情報は、

とりあえず薬指に指輪はない
チームリーダー的なポジション
役割の割には年齢が若いからか、他のチームのおっさん方にやっかまれる(それを爽やか〜に切り返してる姿が、これまた...)
会議が多くてなかなか席にいない
朝早く、夜遅い
といった情報だけだった。

そこから2ヶ月くらいこれといった情報はゲットできず、仕事の疲れを癒す存在として目への潤い提供と、聞き耳能力の強化を続けていたある日のこと
いつものように彼のチーム内で談笑が始まった。
すると突然

「俺の娘もさ〜」
!?!?!?!?
(中略)
「子供2人いるよ。男の子と女の子」

そうか、そうですか、やっぱり結婚されてるんですね。そりゃぁ、そうですよね。もうすぐ40歳なのか、もしくはちょい越えてそうですもんね....と多少ショックを受けつつも予想通りだった。

むしろそんなことよりも、私は彼の名前が知りたい。
どうやったら、どうやったら...どうやったら!彼の名前はゲットできるの?

間が悪いんだかなんだかわからないが、一番最初にわかりそうなものなのに、いくら経っても名前の情報だけは得られずにいた。

その間に、ぼけーとトイレから出た瞬間に彼が通ってばっちり目が合い、驚きすぎて相手のこともびっくりさせてしまったり
最近太った〜ってサラダダイエットを始めた彼をみたり(全然長続きしなかったよう)
いつの頃から、セーターを羽織るような季節になり
彼の外出頻度は増え、ウォッチング機会が春より減った頃

ついに、ついに、私は彼の名前をゲットした。
それも、彼のいないところで。

彼のチームに美人な素敵なお姉様が1人いる。たぶん事務的なことをされている方で、基本社内にいる。その方が電話口で

「岡本なら、たった今出ました」

と。

岡本さん!

あーやっと知れた。あなたの名前は岡本さんだったんですね。
そこに岡本さんが居るわけでもないのに、思わずPCから目を挙げてお姉様のほうを見てしまったよ...。

こうやって思い返してみると、自分気持ち悪いですね。ストーカーみたい。
よく少女漫画でヒロインが男の子とうまくいき始めると、ヒロインに嫌がらせをする陰険な子が出てきません?
蓋を開けてみると、影からずっとその男の子を見ていて、ずっとその人が好きだったってオチなわけですが...。そういう彼女たちがやっていることって、私の今回のように、こうやって外から、ちょっとずつちょっとずつ情報を集めていくんでしょうね。それこそ、もっと回りくどいやり方で、地道に。そういう粘り強さみたいなものはすごいなと急に思えました。
自分は名前を知ったらミッションコンプリート気分になってしまって、これ以上積極的に情報を得ようという欲はなくなりました。粘り強さはないです、ええ。

さて、名前も知れたし自分の行動がいかにキモいかも認識したが...
私はこれからも "岡本さんウォッチング" 続けます。
目の癒しを求めて!

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