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金曜の夜と「パラサイト」

映画『パラサイト 半地下の家族』を観て
感じたことなど。



金曜日の楽しみ。
子どもを寝かしつけたあと、おやつを片手に、夫と一緒に映画を観る時間。
平日に積もったほどよい疲れと金曜の夜の開放感があいまって、映画の世界に引き込まれます。

夫は恋愛ものには興味がない、私は血飛沫が飛ぶようなホラー、スリラーはお断りなので、たいていはアクション、コメディ、ファミリー系を楽しく観ています。
映画から恋愛を除くとなると、選択肢が狭まるんだけど。そろそろ夫には恋愛映画の解禁を譲ってほしいところ。

最近、金曜日の夜に観た作品で印象に残っている『パラサイト 半地下の家族』。
基本的には、金曜日の夜っぽい、金曜日の夜観るにふさわしい(?)ものを選ぶようにしていて、この日もアカデミー賞受賞作品という帯の華やかさに惹かれて、パラサイトを観ることにしました。


序盤は小気味よいコメディ映画。
韓国ドラマが好きな私は、ああこれは好みのやつだと思いながら、絶妙なテンポ感に引き込まれていきます。
中盤くらいだったかな、これコメディですよね…?と、どんどん冗談では済まされない展開になってきて、あ、これはヤバい。かなりこれは、と気づいた時には、鮮やかなスリラー映画になっていました。

観終わってから知ったのですが、パラサイトのジャンルは「ブラック・コメディ・スリラー」。
家族の絆が描かれているから、ファミリー系ともいえるのかな。
ジャンルの横断が滑らか。
序盤のコメディから終盤のスリラー展開への流れが滑らかすぎて、もうこれ以上のスリラーは勘弁してくれえ、と思った時は残り30分。観ることをやめられませんでした。
ありきたりな感想だけど、作品の組み立て方が抜群で、こんな映画、他にはないと思ってしまう。

でも夜に観るには、スリラー要素が強すぎた。
前述の通りスリラーが苦手な私の心臓は、ジェットコースターから降りた直後のよう。
観終わってからも動悸が30分は続いて興奮で寝るどころではなく、結局心臓と脳みそが落ち着くまでに3時間かかりました。
かといって、朝から観るのが良いかとそれもどうかと思うし、パラサイト、いつ観るのが正確なのかな。


ここから、ちょっとネタバレを含む、内容に突っ込む話になります。

高台に住む裕福な家族が開いたパーティーに、裕福な友人たちが招かれる。
楽器を奏でたり、シェフと談笑したり、パーティー会場の美しい庭で、皆思い思いに過ごしている姿を、半地下で貧しく暮らす主人公が目の当たりにして、圧倒されるシーン。
パラサイトは韓国社会の格差を取り上げている映画なので、このシーンはおそらく、Wi-Fi泥棒をしながらスマホをつついて過ごす主人公の日常との対比を描かかれているところです。

暮らしの豊かさは、必ずしも格差によってグラデーションがつくものではないと思います。
お金で買える、お金をかけた過ごし方以外にも、主人公が「優雅だ」と呟いたような過ごし方をすることはできるはず。
だけど、このシーンで主人公が圧倒されてしまったのは、お金持ちの暮らしを目の当たりにしたという点だけでなく、パーティーで過ごす人々の暇つぶしのとしての選択肢、手数の多さも含まれている気がします。

「人生どうせ計画どおりにいかないのだから。無計画でいいのだ、息子よ」と言う、穏やかで良い人で無職の父親。その家で暮らす主人公が持っていない選択肢を手にしている人たち。

このシーンに妙に気持ち悪さを覚えて、後から映画のこと考えていた時に、あ、これ私だ。私は子供の選択肢を絞っている最中だった、と気づいて、気持ち悪さが腑に落ちました。


昨今、子供の得意を伸ばすとか、好きなものを見つけてあげようというようなことをよく耳にするので、夫とも、好きなことを見つけてあげたいね、という話をしていたところ。
これが好きかな?あれが好きかな?と考えていると同時に、きっとこれは我々が得意ではないから遺伝的に考えても得意ではないだろうと見積もったり、これは後々何の役に立つのかと浅い考察をしたり。

好きと得意を見つけてあげる、見つけてあげるというのもおこがましい話だけど、さらにその前に、悪気なく選択肢を絞る作業をこちらが始めてしまっている。

映画では格差を浮き彫りにする表現として、このシーンが使われていたけど、現実世界でもこれは言えることで。
何かに繋がらなくてもいい、本人にとって豊かだと思える過ごし方を本人がどれだけ知っているか、という視点はあっていいと思いました。


映画を観終わった後も映像が頭にこびりついて離れない、もう1ヶ月も前に観たものなのにまだ鮮やかなパラサイト。

ほんとは集中して観て、その後サッと気持ちよく眠れる作品が良いんだけど、観終わった後の反芻も好きなので、今週末の作品選びも悩むところ。 





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