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昔とった杵柄(きねづか)はまだまだ健在。

この4月から、母(81歳)と二人で料理教室に参加している。
市の生涯学習センターでしている隔週の「野菜ソムリエの腸活クッキング」だ。


ことのはじまり

母の習い事は、隔週のお習字と、週1回の体操教室。
どちらも20年以上通っていた。
しかし、今年になって、お習字の先生が高齢(90歳)を理由に3月で教室を閉じるという。
お習字は宿題があり、書いていかねばならない。
お習字は好きだけど、体調の悪い時はそれもしんどいようで、「もうやめようかねえ」なんて言うこともしばしば。
時々若い人たちとランチもしたりして、楽しい時間でもあったのだが、、、。
「ほかのお習字教室を探したら?」
言ってはみたものの、今さら他の先生というのも81歳にはハードルは高いようだった。

そうこうしていたら、週1回の体操教室の先生が転んで骨折したらしく。
こちらもしばらくの間、お休みになってしまった、、、。

なんとタイミングの悪い!
母のルーティーンが(病院以外)無くなってしまったのだ。
出掛けないと、人と会わないと、あっという間に老け込んでしまうじゃないか。
唯一ラッキーだったのは、新年度の講座案内がちょうど市の広報誌に載る時期だったこと。
母が参加出来そうな講座を幾つか勧めてみたのだが、イマイチいい顔をしない。
新しいことを始めるのは、私でも多少の勇気はいる。
まあ、無理もないか、、、。

しかたないので、運転手も兼ねて私も母と一緒に料理教室に通うことにした。

母の料理

母は、今も料理はまめにするほうだが、昔はとても手の込んだ料理をしてくれた。
家の近所にとても有名な料理教室があった。
知る人ぞ知る本格和食の料理人の方が引退して故郷に戻り開いた料理教室で、プロの方も通っており、母もそこに長年通っていたのだ。
鱧や松茸、ウナギや自然薯。
およそ家庭料理ではない食材を母はいとも簡単に料理してくれていた。
今も松茸の季節になったら土瓶蒸しを作ったり、脂ののった鯖があればしめ鯖を作り、父を喜ばせている。

そんな母だが、最近は料理の手際が悪いのだ。
悪いと言っても我が家の娘たちには決して負けていないと思うのだけど、年々徐々に時間がかかる様になってきたのは本人も自覚があるようで、「もう駄目よねえ」と笑っている今日この頃だった。

料理教室第1回

野菜ソムリエの先生は、白いシャツに白いエプロンをつけたオシャレな先生だった。
お年は、、、分かりにくい。65くらいかな?
オシャレなTVのお料理番組に出ていそうな美魔女で、でも気取っていなくて、カラカラとよく笑う素敵な先生だ。

申し込みの時、受付の人に、
「高齢の母のお出掛け先を作りたくて親子で通います。母はリウマチで調子の悪い時もあるので、親子で同じテーブルにしていただけると助かります。」と言っておいた。
だからか。
「楽しんでされてくださいね。」と先生。
、、、ああ、有難い。いい感じの先生だ。

ところが、母。
「先生、〇〇美容院行かれてません?」
「私もどこかでお見かけしたと思ったんです!そうですか、〇〇ですか。」
母と先生は私を置いて意気投合(笑)

お料理は、お野菜のいろどりプレート、季節のお魚のグリル、スープ。

母はとても楽しかったようで、帰りにお料理に使ったアンチョビと白ワインビネガーを買い、夕食にもう一度作って父にふるまったようだった。
(ちなみに、父のお昼はカップラーメン!笑)

昔とった杵柄が、、、

料理教室第2回。
この日は母の調子がリウマチのおかげで絶不調だった。
朝から手が痺れていて、包丁が持てない。
朝食は父が作ったらしく、「今日は食べに行くだけじゃわ~。」と母。
「それでもいいよ。今日は私が頑張るけん、大丈夫。
材料費払ってるんだから休むともったいないよ。」と私。
ブツブツ言う母を引っ張って連れて行った。

教室に着くと、先生が待ってましたとばかりに話しかけてきた。
「Ⅿ(母)さ~ん!」とニッコニコの先生。
「私、この間からずっと考えてて。
美容院も同じだけど、それだけじゃない、どこかで絶対ご一緒したことがあるって、やっと思い出しました。
Ⅿさん△△先生の教室に行かれてましたよね?」

あ、もう30年も昔のあの料理教室。

先生はほかの生徒さんに、母がすごい料理教室で先生の助手のような立場だったことを説明した。
「この間の時も、初めてのわりに手際が良いし、盛り付けも手馴れていて。
ただ者じゃない、って思ったんです。
もうⅯさんに私が教えることなんて何もないですよぉ~」と、ものすごい持ち上げかた。

、、、おいおい、先週は私も頑張ったよ。

その時、母の目がキラッと光った。
気分を良くしたのか、それまでの朝の母とは別人だった。
この日のメニューは、ヘルシー油淋鶏、キノコの中華スープ、キウイの腸活ヨーグルト。
朝、包丁が持てなかったとは思えない、油淋鶏のタレに使う野菜のみじん切りを一手に、あっという間に切り終えた。
、、、おいおい。
包丁が持てないから行きたくない!って、朝からグズグズ言ったのはどなたでしたっけ?

先生の盛りつけお手本

人は幾つになっても、褒められると嬉しいんだね。
頑張れちゃうんだね。

、、、やればできるじゃん!

お母さん、昔とった杵柄はまだまだ健在ですね。

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