青二歳

リーマンフィクションにチャレンジしてます。

青二歳

リーマンフィクションにチャレンジしてます。

最近の記事

黄昏の橋を渡れない男_28

深い絶望に包まれたアキラは、自らの命を 絶とうとする決意を固める。 「もういいや。」 子供のような一言が彼の唇を抜ける。 孤独な闇に閉じこもりながら、彼の心は 不可避の選択を受け入れていく。 そんな状況だったが、友人たちは いつも通りに彼に接してくれる。 彼らはアキラの内に渦巻く苦悩や 苦しみを知る由もない。 彼らの冗談や世間話はアキラの心を 一時的にでも解放してくれる。 その些細な刺激が、彼の絶望をわずかに霞める。 しかし、アキラは自らの心情を友人たちに 打ち明けるこ

    • 黄昏の橋を渡れない男_27

      アキラの日々は、かつての色彩を失い、灰色のヴェールに包まれていた。 朝の光さえも彼の心には重く、目覚めること自体が苦痛であった。 彼の世界では、生きる希望を見出せる光はどこにもなく、自らの存在そのものが重荷となっていた。内面での戦いも、日増しに激しさを増していった。生きることの意味を見つけ出そうとする試みは、いつしか虚しさを帯び、彼の心をさらに暗い淵へと引きずり込んでいった。 夜が訪れるたび、アキラは不眠の苦悩と対峙した。ベッドに横たわりながらも、安らぎへと導く門はいつも

      • 雨の日の一服🚬は至福のひと時。憂鬱な月曜日も嫌にならない。

        • 黄昏の橋を渡れない男_26

          アキラの世界は、かつての温かみを失い、次第に冷たい灰色の影に包まれていった。 彼が長年築いてきた人間関係は、妻の背信と職場での過酷な扱いにより、崩れ去る砂の城のように崩壊してしまった。 信じていたもの全てが根底から覆されるという経験は、彼の心を深い孤独感で満たした。 かつては笑い声で溢れていた会社の廊下も、今やアキラにとって無言の圧迫感を与える場所となった。 友人や同僚たちは、彼の苦境を知りながらも、目に見えずとも確実に彼から距離を置き始めた。 会話は形式的なものに変わり、目

        黄昏の橋を渡れない男_28

          黄昏の橋を渡れない男をここまで書いて。

          本作品を桜が咲くころまでに書き終えようとしてましたが、多忙の日々でまだ60%ぐらいまでしかできませんでした。 noteに投稿する方々の継続力に感服しております。 少しづつ続きをあげていきますので、温かい目で見てもらえれば幸甚です。 また、時間を作ってエッセイも投稿させていただきます。 日々の寒暖差が大きいので、皆様ご自愛ください。 では、また次回。

          黄昏の橋を渡れない男をここまで書いて。

          黄昏の橋を渡れない男_25

          アキラにとって、仕事はかつて安らぎの場所だった。長年勤め上げた部署では、彼の能力が認められ、同僚との絆も深かった。 しかし、運命のいたずらか、彼はある日、他の部署への異動を命じられる。 この変化は、彼の人生に予期せぬ暗雲をもたらすことになった。 新しい部署での生活は、最初から困難を極めた。受け入れられない視線、聞こえてくるささやき。 そして、何よりも彼を苦しめたのは、新しい上司からのパワハラだった。冷酷な命令、理不尽な批判、絶え間ない監視。 彼の存在自体が否定されるかの

          黄昏の橋を渡れない男_25

          黄昏の橋を渡れない男_24

          アキラは苦悩が絶えない中、子供たちの将来について深く考え込んだ。 彼は離婚すれば子供たちが受ける影響を心配し、自分が犠牲になることで子供たちの幸せを守ろうともがいた。 しかし、その思いとは裏腹に、彼の心は不安と焦燥に満ちていた。 家族との日常生活を過ごす中で、アキラはますます自分自身との葛藤に苦しんだ。 妻や子供たちとの関係に不安を感じながらも、彼はそれを隠し、現実から逃れるような振る舞いを続けた。 しかし、その逃避が彼の心身を疲弊させ、次第に彼の心には疲労感が満ちていった。

          黄昏の橋を渡れない男_24

          再会のファミレス

          昨日、中学の同級生と食事会を行った。 当初は飲み会を予定していたが、予定が合わず食事会という事で、集まれる人間で行われた。 食事会とは言ってもファミレスで久しぶりに顔を合わせてご飯を食べる程度の事。 仲のいいメンバーは全員で7人。家庭の事情で来れないメンバーもいたが、来たのは、自分を含めて3人。 自分と保育園からの腐れ縁のA。中学三年の時に同じクラスになって仲良くなったB。 時間と場所を決めて現地集合。自分はAに迎えに来てもらい、車内で世間話をした。 一年ぶりだったAは白髪

          再会のファミレス

          仕事の入門書と桜咲く牡丹雪

          春先の雪が静かに舞い降りる。 桜の花が開くこの時期に雪が降ることは珍しく、美しさを感じさせる。 まるで、自分の人生における特別な章が始まる予感を告げるかのようだ。 私が18歳の時、レストランで見習いとしての日々を過ごしていた。それは、まるで人生の入門書をめくるような、新鮮で充実した時間だった。 職人の世界。18歳の自分はとにかく色々な事をやった。いい先輩にも恵まれた。 色々な事を教えてくれた。 例えば「見て覚えろは、時代にそぐわない。けど、見て自分で考えてみろ。必要なこと

          仕事の入門書と桜咲く牡丹雪

          黄昏の橋を渡れない男_23

          飛び降りる前の数か月前。 アキラは偶然、妻の不倫を目撃することになった。平日の昼下がり。何も特別な事もないそんな日の事だった。 信頼していた妻の行動にアキラは、自らの目で確かめた事実の前で言葉を失った。 彼の心は、妻の裏切りによって深く傷つき、その痛みは言葉にできないほどだった。 妻に対する質問は、感情の爆発というよりも、疑いを確信に変えるためのものだった。 しかし、妻の反応は予想外だった。 謝罪の言葉一つなく、ただ黙って彼の言葉を受け止めるだけ。その沈黙は、アキラにとっ

          黄昏の橋を渡れない男_23

          黄昏の橋を渡れない男_22

          夜が深まるにつれ、家の中は静寂に 包まれていった。 その静けさの中、妻はアキラに近づき 全ての壁を乗り越えるかのように 彼を優しく抱きしめた。 彼女の腕は、温かく、そしてどこか懐かしい 安堵感を彼にもたらす。 彼女の声は震えていたが、その震えは 純粋な愛情と後悔で満ちている。 「ごめんね。苦しませて」という言葉は 彼女の深い悔恨と、アキラへの 深い愛を伝える。 普通の夫婦であれば、二人の間の強い絆と 未来への希望で満たされる。 しかし、アキラの心の中では、その言葉が 遠

          黄昏の橋を渡れない男_22

          3月11日の前日

          3月11日。この日は、日本にとって忘れられない、刻まれた日だ。私にとっても、特別な意味を持つ。13年前のあの日、私は偶然にも有給休暇を取り、映画館で一人映画を観ていた。 映画の途中で、大震災が起こった。家族を迎えに行く途中の車内で目にした津波の映像は、今も私の記憶に鮮明に焼き付いている。 それから13年が経ち、世界も私の人生も大きく変わった。妻とは別れ、子供たちは独立し、私は一人の生活を送っている。そんなある日、車検の代車でFMラジオを聞いていたら、偶然にもブルーハーツが流

          3月11日の前日

          黄昏の橋を渡れない男_21

          数日後、アキラの退院の日が訪れる。 しかし、彼の去り際は祝福されたものではなく、まるで逃亡者のように静かで、急ぎ足だった。 死にきれなかった人間にとっては、周りの目も気になるところだ。 彼の隣には、言葉を選ぶことすらおぼつかない妻が運転する車が待っていた。 助手席に座るアキラに対して、妻は無言を保ち、その沈黙は二人の間に重くのしかかる。 車窓から見える景色は、季節の変わり目を告げるかのように移り変わっていくが、アキラの心情には何の慰めにもならない。 かえって、彼の内面に深く

          黄昏の橋を渡れない男_21

          黄昏の橋を渡れない男_20

          彼の心は複雑な感情の渦中にあり、痛みと寂しさ、そして何よりも自責の念に満ちていた。 "つらい"という言葉が、彼の唇からか細く漏れ出ると、その声には測り知れないほどの苦悩が込められていた。 一人になりたい、この混沌とした感情と向き合いたい、そんな雰囲気がひしひしと病室に満ちていた。 父はその細い声と息子の顔に浮かぶ葛藤を理解し、優しく言葉をかけた。 「今はゆっくり休んでくれ。他の事は考えなくていい。 できる限りはやっておく。」 その声には、息子への深い愛情と理解が込められて

          黄昏の橋を渡れない男_20

          黄昏の橋を渡れない男_19

          父親は少し間を空けて、さらに話を続けた。 「警察は、アキラが川に落ちた場所から少し上流で見つかったことにも触れていたんだ。 理論的・現実的な証拠はないけれど、おそらくアキラが本能的に泳いだのだろうと警察は言っている。」 アキラはその言葉を聞いて、心の中が更に混乱に陥った。自分が絶望の淵で自らの命を絶とうとしたその瞬間、生きるための本能がまだ彼の中に残っていたという事実に、彼は驚きと同時に強い自責の念に駆られた。 死を選ぼうとした自分と、生きようとする本能の間で、アキラの心は激

          黄昏の橋を渡れない男_19

          黄昏の橋を渡れない男_18

          医師が退室して間もなく、アキラの父が入ってきた。その静かな感情が、部屋の空気がふわりと変えた。 彼の足音はほとんど聞こえず、その存在感だけがアキラの意識を引き寄せた。 彼は息子のベッドの横にゆっくりと腰を下ろし、深いため息を一つついた。 その顔には、長い時間をかけて蓄積された心配と愛情が混じり合っていた。 「アキラ、少し話をしようか」聞き慣れていた穏やかな声で始めた。父の言葉は慎重に選ばれており、息子への深い配慮が感じられた。 「昨日の出来事について、医師から聞いたよ。アキラ

          黄昏の橋を渡れない男_18