天岩戸伝説 戸隠神社行
いつぞや銀座で出し物を見た。外国の人のパーティーの座興でバーレスクが披露された後、身長180cmの制服に身を包んだ男性が車座に進みでた。ベネチアンマスクに金髪角刈り。ステップを踏みながら彼はジャケットを脱いだ。続いてシャツのボタンを一つずつ外し、シックスパックの白い体がダークライトに浮かぶ。音楽に合わせボディービルダーのポーズをとりながら、ズボンのベルトに手が伸びる。場が一瞬で熱を帯びた。彼はベルトを放り上げズボンを脱ぐ。身につけているのはボクサーパンツ一枚。踊りながらついにボクサーパンツに手がかかり、悲鳴に近い歓声が上がった。熱狂したお姉様がおひねりを差し出す。その下は、嗚呼っ!黒いレザービキニ。そこでパフォーマンスは幕に。出し物だけど出さない?!オトナの夜でございました。
人の世の楽しみはいつも変わらず、現代はもちろん古来日本でもストリップは楽しまれていた。古事記には岩屋に引きこもった天照大神を誘い出すため、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が行った。
(抜粋)
胸 乳を 掛 か き出 い だし、裳 も の緒 をほとに忍 し垂 れき。しか くして、高天原動 とよ みて、八 百万の神共 とも に咲 (わら) ひき。
天宇受売命(あめのうずめのみこと)の捨て身のパフォーマンスにより、世界に光が取り戻されたのでした。天照大神が隠れていた岩屋の戸を放り投げてできたのが戸隠山とされる。山麓には、小林一茶が
下下も下下 下下の下国の涼しさよ (げげもげげ げげのげこくのすずしさよ)
と詠んだ故郷、柏原があり、ナウマン象でお馴染みの野尻湖が広がる。戸隠は奈良時代より修験道で僧坊が築かれ、江戸時代には善光寺や諏訪神社とともに保護され、由緒正しい地である。戸隠神社は、山全体が神社となっていて、宝光社・中社・奥社の三つの社を中心に神官の集落と蕎麦屋と洋風のカフェが点在する。
標高1200m。空が透き通っていて、路地には色彩の濃い高山植物が咲く。林芙美子は戸隠の名物は霧と言ったが、透き通った空気が戸隠の名物と思う。三つの社へは「神道(かんみち)」という古道があり、木立の間を近道してお詣りできる。
天宇受売命は舞楽・芸能・防火の神様として火之御子社に。
中社は、知恵の神で神楽を創案したという天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)が祀られている。中社の狛犬たち。
宝光社の狛犬たちは、アルカイック。
宝光社。学問や技芸を司どる天表春命(あめのうわはるのみこと)が祀られている。木鼻は北信地方で活躍した彫刻師の手になるもの。
戸隠神社のハイライト。奥社。
饕餮文(とうてつもん)のような狛犬。キングダムの敵キャラか。
奥社に祀られているのは天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)。天照大神が隠れた天岩戸をこじ開け、戸隠山を投げ飛ばした大力の神。
鏡池と戸隠連峰。
忘れていけないのは、長野県には熊が住む!戸隠山のクマは賢いから人を襲わないと土地の人は言う。されど熊鈴は持つべし。鬱蒼とした遊歩道を茂みのざわめきにおののき歩いた。これでは真昼の肝試し。
戸隠名物といえば蕎麦。うち立て切り立ての几帳面な四角いお蕎麦。3時間待ちも珍しくないので早朝に予約を入れてから参詣するのがセオリーである。
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