【TVCM・PR動画歴35年の映像クリエイターが語る「売れたPR動画」のシナリオライティング事例】

(1)はじめに

このnoteでは、私の映像制作や編集経験から導き出された「PR動画におけるシナリオライティング」のコンセプトについて書いています。

「あ〜なるほど!そういう考え方をすればいいんだ!」というヒントを、私(小松)が脚本・演出したPR動画や既存のTVCMなどを素材として、わかりやすく解説しています。
また、動画のシナリオについても、実例の文章を元に「誰に」「何を」「なぜ?」「どんなベネフィットを?」などのポイントを説明しています。

【簡単な自己紹介】
私は”小松健二(こまつけんじ)”と申します。詳しいプロフィールは後述しますが、20歳でTVCM制作会社に入社して映像業界に飛び込んで以降、ビデオ編集室のエディター、その後のPR会社では映像をメインとしたクリエイティブディレクター。退職後はフリーランスとして映像全般のプランナー&ディレクターとして現在に至ります。
映像業界歴は、およそ35年になります。

映像の記録媒体はフィルムからビデオテープ、そしてデータカードへと移り変わっていきました。また、CGやビデオエフェクトの発展により「映像の見せ方」や「クォリティ」は格段に進歩しています。

しかし、人が商品やサービスにお金を払う「動機」は普遍的です。
『つらい悩みから解放されたい』『問題を解決したい』『もっと豊かになりたい』『人に認められたい』・・・このような人間の『欲求』や『心理』は、時代が移ろうとも変わらないものです。
現に30年前のTVCMでも、見ると今だに「商品が欲しくなる」「心を動かされた」という作品はたくさんあると実感しています。

例題に出てくるコンテンツは、かなり古いものが多いですが、「小松自身が制作に関わった作品」「コンセプトをわかりやすく説明するための作品」という点を重視してチョイスしていますので、ご理解ください。

(2)コピー機が変わるとオフィスが変わる?

まずは、こちらの絵コンテをご覧ください。

新1A
新2
新3
新4A
新5
新6

これは今から25年くらい前に私が企画・脚本(シナリオ)・演出した、某コピー機メーカーPR動画のシナリオを再現したものです。かなり古いですが、「実際に売れたシナリオ」の例として紹介しました。
少しまえに別のPR動画を作って営業したのだけど、全然売り上げに結びつかなかったので、当時私が勤めていたPR会社に新作の依頼が来て、私がクリエイティブ全般を担当しました。
まえの動画を見せてもらったところ、一言でいうと「オシャレでスタイリッシュ」な感じ。すらっとした男女のモデルがスーツを着て颯爽とオフィスを動き回る。当時はまだ高価だったCGも多用しており、どちらかというと「イメージ動画」という印象。
しかし、直感的に「これじゃ売れないな」と思いました。コピー機の”機能”の訴求に終わっていたからです。

ビデオ編集室のエディター時代、多くの経験を積むと、編集した通販インフォマーシャル動画を見て「これは売れるな」「これは売れないな」というのがだいたい分かるようになり、後日べつの商品で編集室に訪れた担当者に聞くと、その判断はほぼ当たっていました。

売れるか売れないか?分かる理由。一番のポイントは「企業目線で作られた動画か?」「消費者目線で作られた動画か?」です。
まえのコピー機の動画は「どうですか?このコピー機、すごいでしょ」という作り。(メリット訴求のみ)

一方で新作は「消費者目線」で作りました。(ベネフィット訴求)

“書類のコピー”という単純作業のせいで、優秀な従業員が「非生産的な」業務に追われている”現状のオフィス”
         ↓新しいコピー機を導入すると
誰がやっても変わらない単純作業は機械(新しいコピー機)に任せ、コピー作業を最小限の手間で済ませることにより、本来の仕事に集中できる。その結果、従業員が「生産性の高い」業務に集中することができる!

人が商品(サービス)を買う理由…それは「悩みや問題を解決したい」あるいは「毎日をもっと快適に過ごしたい」「もっと豊かな暮らしがしたい」からです。そのポイントにきちんとアプローチしたシナリオであれば商品は売れます。

ピーター・ドラッカーの著書に「マーケティングとは販売を不要にすることである」という名言があります。
これは「企業側が商品を販売する」という思考ではなく、「顧客が求めている”価値”を提供すれば、『売れてしまう』」という考えです。

ちなみに新作の動画で営業したところ、コピー機の売り上げ(リース契約)が約5倍になったと聞きました。

(3)”実際に商品が売れた”PR動画の実例

実例A)これも私(小松)が脚本・演出したインフォマーシャル作品を絵コンテ風に変換したものです。

まずは内容をご覧ください。これは松下電器(現Panasonic)が開発した携帯電話用アプリ「位置検索サービス」のPR動画。子供の携帯にGPS機能付きのサービス「どこでも知り隊」を有料でインストールしておくことにより、外部(自宅パソコンや両親の携帯など)からの発信で子供の居場所がわかる…という商品です。

スライド1
スライド2
スライド3

クライアントの当初案では「機能」と「料金プラン」の説明が長かったんです。つまり「売り手の主張」が強かった。
のですが、これを…
『子供の居場所を検索できることにより、お母さんの心配事を解消するため』に存在する商品である。…というストーリーに変えました。つまり「買い手のベネフィット」を明確にしたのです。

一般的に、商品メーカーは自社商品のメリットにこだわります。実際、苦労して開発した商品なので、アピールしたい気持ちは分かるのですが。

技術系の人は「機能」を言いたがり…
営業系の人は「価格」(安さ)をアピールしたがる。
ついでに言うと、年配のお偉いさんは「会社の歴史」にこだわります。むかし作った会社案内のビデオで、創業当時のセピア色の本社社屋などが映し出されただけで、涙を浮かべるお偉いさんもいましたから(笑)

「自分たちの言いたいこと」を言うのではなく「なぜ(WHY)その商品がユーザーに必要なのか?」から考えることが重要なのです。

ここまでをまとめますと…
「売る側が主体ではなく」「ユーザーの問題点、困っていること、悩み事が優先」→ そして、それを解決できる方法(商品)がありますよ!という流れにすることです。

1)ユーザーの不安や問題点を明確化「小さな子供がどこにいるのか?常に心配」
2)解決案の提示「”どこでも知り隊”という商品があります」
3)理由「GPS機能により、お子様の居場所をいつでも探知できるので」
4)具体例「使用方法は簡単です。アプリをダウンロードするだけ」
     「帰宅が遅い時にはすぐに検索開始→公園にいるのね!」
5)メリット「料金もお手頃です。ひと月30回使用で263円」
6)ベネフィット「無事に公園にいる子供と会うことができました」

これらは、商品(サービス)のPR動画やシナリオライティングにおいて、共通する構成です。
☆「どこでも知り隊」実際の動画はこちらからご覧ください

実例B)
数年前に、PR動画の”シナリオのみ”を依頼されて書いたものです。
商品は「グリミス」という子供向けの安全グッズです。
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ご存知でしたか?
小学生の交通事故は、夕方から夜間にかけての暗い時間帯にもっとも多く発生しています。
塾や習い事が終わって、暗い夜道を帰ってくるあなたのお子様に対して、どんな安全対策をされていますか?

タイトル【キラッと光ってお子様の安全を守る「グリミス」】

交通安全先進国と言われるスウェーデンにおいて、知らない人はいないと言われるほど実績と認知度の高い交通安全グッズ「グリミス」をご紹介いたします。

「グリミス」は、スウェーデン生まれの交通安全グッズ。身に付けるだけで、事故に遭う確率が格段に減るだけでなく、お子様が自ら「自分の命を守ろう」という意識を芽生えさせることができる商品です。

交通事故が、夕方から夜間にかけて多く発生するのには理由があります。薄暮の中で運転するドライバーからは、歩行者の存在がとても見づらいのです。その結果、車が歩行者にかなり近づいた状態で、ようやく歩行者に気づくのでブレーキが間に合わなかった…という実例が確認されています。

ドライバーに自分の存在を気づいてもらうためには、歩行者自身が薄暮の中でも目立たなければなりません。
そのための手段として暗い中でも目立ちやすい「反射材(リフレクター)」
を身に付けるのが、最も手軽で有効と言われています。

交通安全教室などで、このことを知っている子供もいます。でも反射材を付けると「カッコ悪い」「恥ずかしい」と思っている子供が多いのです。

「グリミス」は「そんなイメージを変えたい。子供が自ら進んで付けたいと思う商品にしたい」という思いで、スウェーデンのお母さんが開発した商品です。

その特徴は3つあります。

1つ目は、豊富なデザインのバリエーション。
動物・乗り物・オバケなど…子供が好きなデザインが100種類以上。ポールチェーンで簡単に脱着できるので、朝、家を出るときからでもアクセサリー感覚で付けていただけます。

2つ目は、反射性能。
ドライバーに気づいてもらっても、ぶつかる直前では意味がありません。
「グリミス」は、ヨーロッパの国際規格をクリアする高性能な反射材を使用しており、125メートル先からでも視認される性能を持っています。
つまり、夜間の道路でも自動車のヘッドライトを「グリミス」が反射。その光をドライバーが認知し歩行者の存在に気づくことで、交通事故を未然に防ぎます。

3つ目は、実績と認知度。
本場スウェーデンでは、知らない人はいないと言われるくらい認知度の高い「グリミス」。日本でも8年前から販売しているロングセラー商品です。
多くの類似品が出回る中で、アマゾンのリフレクター部門では今でも売上ナンバーワン。その認知度と実績を評価いただき、自治体や大手企業のノベルティとして数多く採用されています。
また最近では、小学校に寄付したり、小さなお子様のいる顧客にプレゼントしたりする企業もあります。

(自治体・企業採用例=ロールスーパーで表示)
・JA共済
・COOP共済
・ベネッセコーポレーション
・コールマン
・三井住友海上火災保険
・積水ハウス
・神奈川県警
・愛知県警
・京都市
・海上自衛隊
ほか多数。

夜間の交通事故対策に、あなたのお子様にもぜひ「グリミス」を付けてあげてください。

その際、大切なことは「お子様と一緒に選ぶ」ということです。一方的に買い与えるのではなく、お子様自身が気に入ったものを選ぶことによってお子様は商品に愛着を持ち、自分から付けようとするでしょう。それが、自分の命を自分で守る…という意識を持つキッカケになれば幸いです。

こちらの商品一覧から、お子様と一緒にお気に入りのデザインを選んでください。

グリミス商品カット



「どこでも知り隊」(2分45秒)と「グリミス」(3分30秒)のシナリオをご覧いただきました。
どちらも「小さな我が子の安全を願っている」というお母さんに向けての商品です。そしてどちらも『この商品を購入することによって、子供の安全確保につながり、私(お母さん)も安心できる』という”ユーザー側のベネフィット”をメインに構成されているのが分かると思います。

もうひとつ、まったくテイストの違うシナリオの実例をご紹介いたします。

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20歳の時…
はじめてできた彼と初のデート。はじめて入ったお店は当時流行りだったカフェ。
彼が扉を開けてくれたとき、すれ違いざまにカフェから出てきた素敵な大人の女性。
胸元には”オープンハート”のネックレスが輝いていた。

一瞬、彼の視線がそこに向けられたのがわかった。
少し、嫉妬した。
でもホントに素敵な女性だった。

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あれから10年後…
ずっと憧れていた、あの”オープンハート”が今、私の胸元で輝いている。
会計を済ませた彼が、カフェから出てきて、こう言った。
「この店の味は、今でも変わらないね」
「ええ、そうね」と、私。

目の前には、ちょうど10年前の私たちのように、楽しそうにお店に向かってくるカップルの姿が。
(指先でオープンハートに触れながら)
「あのときすれ違った、あの素敵な女性に、少しは近づけたかな?」

なんて…うぬぼれかしら…(微笑)

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これは、およそ20年前に、地方のとある宝飾店からの依頼で私が書いた60秒TVCMのシナリオです。
一部地域にしかオンエアされない限定のTVCMでした。(”オープンハート”というのは仮称です)
そのブランドのネックレスは高価であり(中心価格20万円以上)その宝飾店でも月に2~3個しか売れていませんでした。
ところが、 このTVCMが放送されて一週間で、なんと30以上の予約オーダーが入ったそうです。

このシナリオのギャラですが 、私は当初15万円を提示しました。
しかし、CMが大好評で反響も大きく、何より商品がたくさん売れたため、”成功報酬”として10万円プラスしていただき、結局”25万円”をシナリオライティング料としていただきました。

このシナリオ(によるTVCM)で、なぜここまで高額商品が売れたのか?おそらくそれは、ユーザーである女性たちの『心を動かした』からでしょう。

(4)YouTube動画広告のシナリオ例

現在のYouTube動画広告では、頭の6秒で「私に関係ある内容だ」(他人ごとではなく、自分ごとだと直感する)と思ってもらえないと、すぐにスキップされます。

以前のPR動画が、ある程度イメージやストーリー性を重視しているのとは違い、YouTube動画広告のような短編作は最初の数秒で視聴者(ユーザー)を引き留めなければなりません。

次の例は、私が勝手に考えた架空のセールス動画のシナリオです。

0402マット絵コンテ色付き1
0402マット絵コンテ色付き2

はい、非常にストレートで無駄のない構成。まさに「ザ・TVショッピング」という形ですね。
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『みなさ〜ん、昨年から続くコロナ禍の中、“自粛太り”していませんか?』
→してるしてる!(私のことだ・自分ごとだ)

『おウチでゴロゴロ…一日中、テレビを見たりスマホゲームで遊んだり…テレワークによる巣ごもり生活で外出が減り、運動不足になりがちですよね?』
→うんうん、まさにその通り!(共感)

『そんなあなたに今こそオススメしたいのが、この「おウチトレマット」です!』
→へえ〜どんなのだろ?(商品に興味がわく)

『「おしり筋トレ」や、「足下ろすだけ腹筋」など、今話題のトレーニングもラクラク!』
→あ、気になってたエクササイズ!(使用感をわかりやすく)

『ではここで健康管理の専門家である、小林先生にお話を伺いましょう』
小林先生「加齢や運動不足によって筋肉が衰えると、免疫力が低下し、体全体の抵抗力が弱くなる…」
→専門家の意見(権威性・説得力)

『たっぷりサイズでありながら柔らかい素材ですので、使用後は折りたたんで家具と家具の隙間に収納できます。
トレーニングメニューを詳しく解説した冊子とDVDが付いていますので、運動が苦手な方もすぐに実践できます。これで運動不足を解消し、イキイキとした毎日を過ごしましょう!』
→商品のメリット・ベネフィット

『本日お申し込みの方に限り、お値段は¥12,000!』
→緊急性・希少性をアピール
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次もセールス動画でよくある例として「知ってましたか?」を2パターン紹介します。

1)商品は女性用の骨盤補正ベルト
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「知ってましたか?男性は決してぽっちゃり体型が嫌いなわけではありません。お尻が”ぶよ〜ん”と垂れ下がったような、だらしない体型が嫌いなんです」
→ええっ、そうなの? 知らなかった〜 続きが気になるわ〜

2)商品は布団用ハンディクリーナー
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「知ってましたか?あなたは毎晩、寝具に潜んでいるダニと一緒に寝てるんです!
→ええっ、知らないわよそんなこと!

「おたくの息子さんや娘さん、この時期になると咳や湿疹、アトピーに悩まされていませんか?」
→あ、そういえばウチの子、背中がかゆいって言ってる!

「実は、その原因の多くは”布団に生息するダニのフンやダニの死骸”にあったのです」
→イヤ〜っ、そうなの?! どうすればいいの?

「ダニを含む寝具についたハウスダストを3分で90%以上除去できるハンディ布団クリーナーをご紹介します」
→そ、それ、ください! 今すぐに買います!

とまあ、そんなにうまくいくとは限りませんが(笑)
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最後の例として「質問から始まるパターン」これは、最後に答えを持ってくることによって、最後まで見続けないとならない…という構成です。

1)商品は女性用美容クリーム
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「さて質問です。この女性、何歳に見えますか?」
→たぶん実年齢よりもかなり若く見えるんだろうけど…幾つなのか気になるわ〜
女性のモノローグ
「普段の生活ですか?特別なことはしてないんです」
「睡眠はたっぷりとります。朝食はバランスよく、食べ過ぎず」
「駅までは少しだけ歩幅を広く、早歩きを意識してますね」
「ランチは同僚と近くのお店で。特にカロリーなどは気にしてません」
「帰りはスーパーに寄って夕食の買い出しです。主人も私もお酒が好きなので、夕食は軽くおつまみを作る程度ですね。あとはビールです(笑)」
「あ、特別なことはしてないって言いましたけど…一つだけありました。それはお風呂上りにABCクリームとDEF保湿液を顔全体にていねいに塗り込むことです」
「これのおかげで、翌朝目覚めた時、お肌がしっとり、ぷるんって感じなんです。これを始めてから、同僚からも「透明感が増した!」なんて言われてしまって…」
「私のトシですか?55歳です」
→ええっ、てっきり40代前半くらいかと思った!ホントに普通の生活なのに、あのクリームと保湿液だけで、こんなに若々しい肌を保てるの?
私も試してみようかしら
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”普段通りの生活”なのに、「ただひとつクリームを塗る」だけで若いお肌が保てる・・・というベネフィットですね。

(5)リフォーム店の企画立案とシナリオ

これは一番最近の案件です。
あるリフォーム会社(A社)から、PR動画の企画とシナリオの案件がきました。
ご存知のようにコロナの影響で巣ごもりやリモートワークが増え、それに伴ってリフォーム需要の増えています。しかしA社は折り込みチラシを行っているものの、問い合わせすらほとんど来ないので、地元でPR会社をやっている友人に相談したところ、友人は「短い動画を作ったらどうか」と提案し、私に依頼がきたのです。

さっそくA社のチラシやホームページを見たところ、ほとんど「カタログ」のような内容。トイレやキッチン、バスルームなど、取り扱っているリフォーム商品の写真がずらり。
そして文章はと言えば「リフォーム、何でもお任せください!」
私は、『あー確かにこれじゃ問い合わせは来ないだろうな~』と感じました。
マーケティングやコピーライティングの世界では「何でもできる」は「何も訴求しない」と言われています。
私はまず、リフォーム関連の書籍やネットで「リフォームやリフォーム会社に対する消費者の声」をリサーチし始めました。

すると、2つの大きなコンセプトの柱が見つかりました。
一つ目が「リフォーム会社に対するマイナスイメージ」です。
「電話で問い合わせたら、逆にしつこく営業された」
「お店に相談に行ったら営業マンに囲まれ、契約するまで返してもらえない雰囲気だった」
二つ目は「消費者は自分の家にリフォームが必要だと気付いていない」です。特に床下の木材の腐敗や、水回りの水道管の老化や汚れは外からは見えません。

この結果から『リフォーム店に親しみやすさや安心感を与えるため、店の女性スタッフに顔出しで話してもらい、その内容に対応した動画又は静止画素材をインサートする』という構成を考えました。
そもそもの依頼が「動画の予算はあまりないので、自分たちで撮影し、編集ができる知り合いに頼むので、凝ったものは必要ない。施工例などは過去に撮影した素材を使ってほしい」ということもあったので。

そして、以下のようなシナリオを考えました。

S#1『こんにちは。私はABCリフォームの小松美和子と申します。入社7年目のリフォームアドバイザーです。
いきなりですが、お客様に質問です。「このところ家の水道代が少しずつ増えている」なんてことはありませんか?
「増えている」と感じているのであれば、原因は“水道管の老朽化”の可能性が高いですね。

S#2『塩化ビニール製の水道管は年を追うごとに、もろくなってきます。それに加え、弱い地震や少しの地盤沈下でも小さな裂け目から水漏れを起こし始めます。しかも一度水漏れが始まると止まることはありません。水圧によって、どんどん裂け目が大きくなってしまいます』

S#3『修理方法としては、水漏れしている箇所だけ補修することもできますが、根本的な解決にはなりません。しかも一度の補修で数万円の費用がかかります』

S#4『であれば新しい水道管を引き直すほうが確実で、将来的な費用としては安く済みます。当社ABCリフォームは、特にこのような水道管の工事を得意としており、施工実績も豊富です』

S#5『まずはお早めにお電話ください。家にとって水道管は、トイレ・台所・浴室・洗面台など、毎日の暮らしに欠かせない屋台骨と言えます。ある日突然…「トイレの水が逆流してきた!」「台所の水漏れが止まらない!」「脱衣所の床が濡れている!」となったら慌ててしまいますよね?

S#6『毎日の暮らしを安心して送れるよう、早急な処置をお勧めいたします。では、お電話お待ちしております。(ご来店お待ちしております)』

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いかがでしょうか?
実際に水道代が増えていて「ドキッ、ウチのことだ」と思い当たったり、“トイレの逆流”を想像して、慌てて電話をかけてくるお客様は少なくないでしょう。
このように、動画の視聴者に「自分事にする」「行動を促す」というストーリー展開が不可欠なのです。
冒頭のリフォームチラシのように、キッチンやバスルームなど、ただきれいな写真を載せているだけでは、人は行動しないのです。

実際にこのシナリオ通りに完成した動画の反応は非常に高く、現地調査員が足らずにてんてこ舞いだったそうです。

ちなみに、このシナリオ以外に以下のような訴求ポイントも考えました。

『トイレリフォームを検討すべき、7つの危険な兆候とは?』
『水道管の劣化は、水漏れによるムダな水道代につながります』
『ヒートショックは高齢者だけの問題ではありません』
『バリアフリーは元気なうちに!結果的に転倒事故が防げます』
『お宅の可愛いペットは今の環境に満足していますか?』
『テレワークをもっと快適に!狭いスペースでも書斎は作れます』
『ご存知でしたか?木材を使った寝室は空気がきれいです』

これらも、「あ、これウチのことだ」「えっ、そうだったの?知らなかった」「そうか、早めに手を打たないと」と、自分の家に思い当たることがあった場合、『とりあえず一度相談してみよう』となる確率は高いでしょう。

(6)USP Unique Selling Proposition

ご存知かと思いますが、USPとは「自社の商品やサービスが持つ独自の強み、他にはないウリ」という意味です。

昔からある概念ですが、今、ネットの世界ではあらためてUSPが重要視されています。
以前のホームページはテキストと写真が中心で、ページ滞在率も高い状況にありました。
ところが現在は企業のホームページやECサイトには動画の導入が増え始めています。するとユーザーは長い文章よりも手っ取り早く動画を見て、興味がなければ別のサイトに移動してしまいます。つまり”長い文章は読まれない”のです。
その動画にしても、あまり長いと最後まで見てもらえる保証はありません。ということは、動画がスタートして数秒内にその商品やサービスのUSPを訴求し、独自性を訴求する必要があります。

例えばアパレル商品の場合、まず動画によるUSPやベネフィットでユーザーを引き付けておいて、詳しい情報(素材・カラーバリエーション・サイズ揃え・価格など)は、そのあとでゆっくりとサイトの文章や写真を見て読もらう・・・というイメージです。

その動画は例えば、以下のようなシナリオはどうでしょう?

s#1)冴えない服装の女性がお店に入る
s#2)商品の服を手に取り、試着室に入る
s#3)着替え始める(視聴者はワクワクする)
s#4)カーテンが開き、大変身した女性が表れて、その独自のデザイン性に周りの客が驚く!(視聴者も驚き、商品に興味がわき、詳しい情報を読み始める)

展開としては良くある「Befor→After」パターンですがインパクトは大きい。秒数は15秒程度ですが、一瞬で商品をアピールできますね。

(7)企業目線より「ユーザー目線」

自分の会社のこと、自社の商品のことを、社内にいる人間は意外と理解していない…という例は少なくありません。そういう場合、PR動画を作る際も、自社の商品を愛するあまり、「ウチの商品は素晴らしいです!」という「企業目線」のアピールとなってしまい、「消費者目線」を置き去りにしがちです。私が関わった分かりやすい例をひとつご紹介しましょう。
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PR会社の社員だった頃の案件です。ある家電メーカーから新商品の「ホットプレート」のPR動画の企画を依頼されました。
クライアントが真っ先にアピールしたのは、ホットプレートの「高級感」「高性能」「高機能」でした。

「牛肉や車エビなどの高級な食材を用意し、高い温度でジュージュー焼くシズル感」「付属のたこ焼きプレートも嬉しい」「鉄板の耐久性もアピールしたい」「省電力も…」という意見が出ました。それを聞いた私は「う〜ん、まあそうだな〜」という思いと「何かが抜けてないか?」という思いがありました。

クライアントの意見を踏まえて、社内のリサーチ部門に「ホットプレート」に対する市場調査を依頼しました。
すると「ホットプレートに対する要望」で上位を占めたのが…
「子供と一緒にワイワイ焼きたいのでプレートは大き目がいい」「子供の好きなハンバーグやウインナー、目玉焼きを焼きたい」「後片付けは楽な方が良い」という声でした。
そこには「高級食材」「耐久性」「省電力」という文字はほぼゼロ。
そうです!先方のプランの中に欠けていたのは「ユーザー(家族)の思い」でした。

親にとって、子供と一緒に目の前で食材を焼いて食べるという喜びとは…
「高級食材が美味しく焼ける」「付属品が充実」「省電力」という「商品のメリット」よりも、「子供達の楽しそうな笑顔が見たい」という「ベネフィット」の方が強い…という仮説にたどり着いたのです。
そのリサーチ結果を受け、『自宅のリビングで親子4人が笑顔で話しながら、子供の好きな食材をワイワイ楽しそうに焼いている映像』がメインのシナリオを書きました。
インサート映像には…
「プレート上に具材をキレイに並べるお母さん」
「不器用そうにハンバーグをひっくり返す男の子」
「目の前でパチンと跳ねたウインナーにおどろく女の子」
「それを見て大笑いするお父さん」
などを入れ込んで構成し、『子供と一緒におウチで鉄板焼き』というキャッチコピーとともに提案したところ、それが採用されたのです。
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同じような例をもうひとつ紹介しましょう。
新しく発売されたビデオカメラがありました。それを深夜や早朝にオンエアされる通販番組で紹介したのだが、反応が悪い。
ということで、新たなインフォマーシャル(コマーシャル+インフォメーション)のシナリオを依頼されたのです。

その番組の映像を見てみると・・・残念ながらやはり『売り手目線』でした。

「最軽量790グラム!」「超コンパクト設計!」「光学15倍ズームレンズ!」「大容量バッテリーで連続90分撮影が可能!」「今ならこの三脚もお付けします!」
これを懸命に訴えている男性バイヤー・・・想像できますよね?(笑)

クライアントにその通販番組の視聴者層を聞くと、深夜は30代中心の若年層。早朝はご年配、いわゆる”おじいちゃん+おばあちゃん”世代が多いとのこと。

色々リサーチしたところ、そもそも若者は通販番組でカメラ類を買うことはめったになく、カメラ専門店(今でいう家電量販店)に足を運び、実物を手に取って選ぶ・・・ということが判明。

だとすると、ご年配の方をターゲットにできないか?と考えました。
しかし、この年代の方々がビデオカメラを買う理由があるだろうか?
旅行に行くにも写真で十分だろうし、わざわざかさばるビデオカメラを持っていく理由は乏しいのではないか。

そこで私は実家に電話をかけ、父親(当時60代後半)に「ビデオカメラって欲しいと思う?」と直接聞いてみました。すると答えは「おまえに孫ができたら撮ってあげたいかな」という答え。(当時、私はまだ独身でしたが)
「それだ!」
アイデアがひらめき、書いたのが以下のようなシナリオでした。


『おじいさん、おばあさん、お孫さんの成長って楽しみですよね?特に運動会などの行事で元気な姿を見るのは幸せですね!

運動会ではお父さんがわが子の活躍をカメラに収めています。お母さんはその隣で声援を送っています。
しかし、その微笑ましい光景をカメラで撮っている人は・・・いませんね。
親子三人で楽しそうにお弁当を食べている微笑ましい風景も・・・だれも撮ってはくれません。
そうです!あなたが撮ってあげればいいんです。

新しく発売されたこのビデオカメラをご紹介します。
手のひらにすっぽり収まる小型サイズで、女性でも片手で持てる軽さです。
操作も簡単。見ていてくださいね。
まず、この電源ボタンをオンにします。そしてこのようにカセットを入れたら、もう準備完了。あとはカメラを構えて、この赤い録画ボタンを押すだけ。
ズームレバーを動かせば、遠くのお孫さんの姿もバッチリ撮ることができます。

いかがですか?あなたのお子さんと、可愛いお孫さん。家族そろった姿をぜひ”あなたが”撮ってあげてください!』

・・・・・・・・・・・・・
だいたいこんなストーリーですが、反応が悪かった前作との違いは明らかですよね?
「家族3人の映像を撮ってあげることができるのは・・・そう、おじいちゃん、あなたしかいないんですよ!」
というメッセージは、三人の光景をビデオカメラに収めている「いいおじいちゃんの自分」を想像させるものです。

約一か月後にオンエアされたこの映像によって、狙い通り高齢者からの注文が殺到した・・・との報告をいただきました。

(8)WHYから始めよ!

世界的な大規模講演会TED(Technology Entertainment Design)でのプレゼンテーション動画が1700万回再生されたことで話題になった、作家でありコンサルタントでもあるサイモン・シネック。彼が提唱するマーケティング理論が「ゴールデンサークル」(WHYから始めよ!)です。
ゴールデンサークル(下図)とは、Why(なぜそれをするのか)、How(どうやってそれをするのか)、What(具体的に何をするのか)に基づいて構成されている概念です。

why本サークル

《WHYから始めよ! サイモン・シネック 日本経済新聞出版社》

この中に、以下のような一文があります。

『大半の組織や人間が、円の外側から内側に向かう順番で、つまりWHATからWHYの順番で考え、行動し、コミュニケーションをはかっている。もっともな話だ。いちばん明確なものから始め、いちばん不明瞭なものに向かっているのだから。私たちは自分のWHAT(していること)は説明できる。時にはHOW(手法)も説明できる。ところが、そうしているWHY(理由)を説明することはめったにない。しかし傑出した企業は違う。傑出したリーダーも違う。かれらは、内側から外側へと向かう順番に考え、行動し、コミュニケーションをはかっている』

そしてシネックはアップルを例に出して、WHATから始まる広告文とWHYから始まる広告文を比較しています。

一般的なパソコンの広告コピー
WHAT「我々は素晴らしいコンピューターを作りました」
HOW「美しいデザイン、シンプルな操作方法、取り扱いも簡単」

??「一台、いかがですか?」

・・・・・・・・・・・・・・
アップルの広告コピー
WHY「現状に挑戦し他者とは違う考え方をする。それが私たちの信条です」
HOW「製品を美しくデザインし、操作性をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しました」

WHAT「その結果、素晴らしいコンピューターが誕生しました」

二番目のメッセージの方がコンピュータを買いたくなるはずだ。ここからわかることは、『人々は、あなたのWHATを買うわけではない。あなたがそれをしているWHYを買うのである』

『WHYから始めよ!』の意味とは…
「なぜ?」その商品は存在するのか?
「なぜ?」その商品を売るのか?
「なぜ?」その商品を欲しいと思うのか?その商品を使うことによって、何がどう変わるのか?を伝えることです。

・・・・・・・・・・・・・・・

これを”どこでも知り隊”に当てはめてみると…

WHY「親の目の届かないところで、自由に行動したがる小さな子供のことがいつも心配」
HOW「離れているところからでも、子供の居場所が分かるような手段はないかしら?」
WHAT「子供の持つ携帯に、GPS機能を備える”どこでも探し隊”という位置検索サービスはいかがですか?」

このインフォマーシャルを制作したのは13年前。当然、サイモン・シネックの理論は世に出ていません。しかし、これ以降に紹介するCMもそうですが、『なぜその商品が生まれたのか?』『なぜ消費者はその商品を必要とするのか?』という本質を考えたとき、だいたいのストーリーは「WHY」から始まっているのです。

(9)ターゲットとメッセージは明確に(a)

私(小松)が入社したTVCM制作会社のクライアントで一番の大口企業は『サッポロ一番』でおなじみのサンヨー食品。もちろん私も新人の時から制作に関わってきました。
ここでは、定番商品である”サッポロ一番塩らーめん”と、当時の新商品であった”桃李居(とうりきょ)”のCMを比較し、ターゲットとメッセージがぴったりはまっているパターンと、ハズしてしまったパターンの比較をご覧いただきます。
まずはサッポロ一番塩らーめんの15秒CMです。

スライド1

もう何の説明も必要無いくらいシンプルな内容ですね。
「季節の野菜がたっぷり入った美味しいラーメンを、子供に食べさせてあげたい」というお母さんの心情をストレートに表現しています。

ターゲットとメッセージが明確です。加えて「季節の野菜」とか「旬の野菜」という抽象的な表現にとどまらず、「白菜・しいたけ・にんじん」という具体的な名称を言うことにより『あ、こういう野菜を入れれば美味しい塩ラーメンが作れるんだ!』という明確なイメージを伝えています。

テーブルから野菜がニョキニョキと伸びてくるインパクトのある映像と、軽快で子供でも口ずさめる親しみやすいジングル…まさに昭和の名作です。

(10)ターゲットとメッセージは明確に(b)

1981年に明星食品から発売された”中華三昧”。インスタントラーメンとは無縁だった「高級感」を打ち出したことで大ヒットを果たし、ライバル各社でも類似商品を発売し始めました。
その中の一つが、サンヨー食品が発売した”桃李居(とうりきょ)”です。

スライド2

このCMは、当時は売れっ子だったCM監督をはじめ、優秀なスタッフで中国ロケを行って撮影されたものです。
私(小松)はロケにこそ行きませんでしたが、帰国後の編集助手など仕上げ作業に関わった作品です。
だから…というわけではありませんが、あえて厳しい物言いをさせていただきます。

サッポロ一番シリーズと同じサンヨー食品の商品ですが…
はっきり言ってCMの意味がよくわかりません。主張がボケてしまってます。
確かに映像は綺麗で迫力もあります。しかしながら…コンセプトもターゲットも絞れていない。誰に向けて何が言いたいのか?

これはいわゆるBパターンの作品で、Aパターンはコックさんが中華鍋でエビや野菜を豪快に炒めるシーンがメインでした。テロップでは確か「本格四川風」とかナントカ…(Aパターンの映像も探したのですが見つかりませんでした)
そもそも「特製完熟麺」とか「本格四川風」とか言われても、メインターゲットである主婦層にはピンとこないわけですよ。
それに普通の主婦は家の台所に中華鍋なんて無いでしょうし、あったとしても重い中華鍋を振ることも難しいでしょう。

これは個人的な意見ですが、”商品自体の位置付け”が不明瞭であったのも事実だと思います。
こんなこと言ったらサンヨー食品さんに怒られそうですが「とりあえず中華三昧みたいな感じの本格・高級っぽいラーメンで」的な発想?(サンヨー食品さん、すみません)で作ったとしか…?

で、オンエアされた後の結果はというと…
CMはオンエア数も少なかったせいか、まったく話題にならず…
商品の売り上げも芳しくなかったようで、早々と売り場から消えてしまいました。

高い予算を使って、一流のクリエーターが制作したにもかかわらず、コケた作品例ですね(苦笑)
当時は「ただ中国ロケに行きたかっただけなんじゃなの?」なんて意地悪な声もウチの社内ではチラホラと…。

でも…こういう例は広告業界では少なくないようなのです。
※YouTubeチャンネルで詳しく解説しています。

(11)”モノ”より”コト”を売れ

これから紹介するのは、広告界のカリスマである佐藤可士和さんが手がけたCMの代表作である、”ホンダ・ステップワゴン”のTVCM(1996年)です。

スライド3

この画期的なCMにより、同価格帯・同性能のライバル車を置き去りにして、ステップワゴンだけが大ヒットしました!
改めて見てみると大胆な演出です。
車のCMなのに、車が出てくるのは15秒中ラストの”3秒”のみ。しかも画面の左下にちっちゃく登場してるだけます(笑)
この案で「よくホンダの担当者もGOを出したな〜」と、その決断力にも脱帽です。

このCMが成功した理由は、いうまでもなく「子供と一緒にどこ行こう!」という強いメッセージでしょう。
クルマの性能・外観・内装など《モノ》には一切触れていません。しかし「子供と一緒にクルマで遠くに遊びに行きたいな〜」《コト》(WHY)という消費者(主に父親?)の深層心理にガッツリ訴えるだけのものがあります。※YouTubeチャンネルで詳しく解説しています。

一方、ライバル社のCMはというと…

新しいミニバンができました!→WHAT
室内は広々!3列シートにスライドドアも!→HOW
週末は試乗会へどうぞ!→???

売り手側(メーカー)の一方的なアピールに終始しています。
まあ、短いCMでメッセージを伝えるよりも、実物を見て乗って欲しい…という思いは、わからなくもないのですけどね。

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ちなみに…下記は2019年からオンエアされているSUBARU「フォレスター」のCMから抜き出したカットです。
ステップワゴンのCMは1996年ですから、23年の開きがあります。
映像表現は全然違いますが、『子供と一緒にどこ行こう』と『もっと遠くへ。もっと家族と』は、似たようなコンセプトと思われます。
★子供に「見たことのない美しい景色を見せてあげたい」「新しい(未知の)体験をさせてあげたい」という父親の思いが込められていますよね?
見る人に「伝わる」コンテンツとは、昔も今も普遍的なものだ…と証明されているような気がします。

フォレスターCM

(12)インサイトとは?

マーケティング用語で『人を動かす隠れた心理』『消費者自身も気づいていない無意識の心理』というように表現されます。分かりやすく言うと…
「それは気づかなかった」「言われてみれば確かに」「そうそう、そうなのよ!」などという感情ですね。
最近のCMで、このインサイトをうまく表現しているな〜と思ったのは、靴のネット通販サイト『ロコンド』です。

スライド6

実はこのCM、自宅で妻とテレビを見ていたら、たまたま流れたのです。妻はこう言いました。
「そうそう、お店で靴の試着ってなんかツラいのよね。店員さんもそうだけど、他のお客さんにジロジロ見られているみたいで、落ち着いて選べないのよ」さらに「これだったら自分の部屋で色々な服に合わせてじっくり選べるからいいかも!」と言ったのです。
それと「靴を脱いだ瞬間、足、臭わないかな?って気になる」とも言ってました。
女性消費者の深いところに眠っていたニーズを掘り起こした…良いアイデアだと思いました。男性からは、なかなかこういう発想は出ないですからね。

(13)私(小松)のプロフィール

さて遅ればせながらですが、私のプロフィールをここでご紹介いたします。

小松健二(こまつけんじ) 
1961年7月18日生まれ 神奈川県横浜市出身

最終学歴 日本電子専門学校 音響芸術科卒業

レコーディングエンジニア志望も、当時は花形の職業。大手レコーディングスタジオへの就職は競争率が激しく、やむなく撤退。

赤坂の中堅TVCM制作会社に入社
前述したように「サッポロ一番シリーズ」などのCM制作に関わる。

音楽雑誌や教則コンテンツ制作販売の㈱リットーミュージックに入社
社内のビデオ編集室エディターとして、編集に関わった作品は、TVCM/企業・商品PRビデオ/通販インフォマーシャル/求人・社員教育・研修関連/ミュージックビデオなど、800本超。

渋谷のPR・マーケティング会社に入社
クリエイティブディレクターとして、映像制作を中心にマーケティングやコピーライティング、イベント・展示会の企画運営、企業CIにも携わる。
1994年、バブル崩壊とともに会社が消滅

以降、フリーランスの映像クリエイターとして現在に至る

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企画・脚本(シナリオ)・演出した主な映像作品(VP=ビデオプロモーション)

・通販インフォマーシャル動画 多数
・東急建設「地下都市開発プロジェクト」VP 
・三井海上火災保険「新保険商品営業法ビデオマニュアル」VP
・電源開発「奥清津第2発電所」 VP   
・フジマック「フードケータリングショウ」 オープニング映像
・NTTファシリティーズ 「NTT武蔵野新研究棟」CGによるVP 
・東急建設「渋谷・桜丘町プロジェクト」VP
・アールビバン「クリスチャンラッセン展示会」オープニング映像
・福井県 他JV「福井駅北陸新幹線導入シミュレーション」CG 
・日本フラボノイド協会「記念式典」オープニング映像
・映画「HogiーLala(ホギララ)」メイキングビデオ
・BS朝日「DoggyBagの恋するアジア」番組ディレクター 
・訪問介護入浴車「取扱説明ビデオ」
・東京都「東京Ours'96(都市博中止による代替イベント)」記録映像 
・フジテレビ「アナウンサーによる朗読劇『ラブシーン』」舞台監督(のちにDVD発売)
・高速増殖原型炉「もんじゅ・バーチャル体験システム」VR映像
・アイネット「IDC新社屋紹介」VP 
・THK「会社案内・商品PR映像」国内版・海外版(アメリカ・ドイツ・フランス・中国)VP多数
・東京消防庁「消防博物館」PR映像
・パナソニック「GPS位置検索システム・どこでも探し隊」TVCM
・明治乳業「明治ブルガリアヨーグルト新商品発表会」ステージ用映像
・ダイワ精工「フィッシングショー」ステージ用映像
・埼玉水上公園(越谷・上尾・川越・花咲)「園内施設紹介映像」
・フジテレビアナウンス室企画による販売用DVD「自作自演」
・映画「チェスト!」(松下奈緒主演)メイキング映像 
・合同出版「原爆詩集 八月」出版PRのYoutube映像
・経済産業省・資源エネルギー庁「バーチャル最終処分場」説明用CG映像
・群馬銀行「遺産相続」PR映像
・ジーグレイブ出版「スポンジ・ボブ英語教材」販売用DVD
・宮城県被災者用娯楽施設「みんなの家」竣工記念映像
・グローブライド「ダイワグレマスターズ全国決勝大会」記録映像
・認知症ねっと「認知症予防・改善トレーニング」映像
・日本タッチケア協会「赤ちゃん向けのマッサージ方法」書籍+DVD
・公園墓地・春秋苑「屋内御廟」紹介映像
・music.jp「世界の名作・デジタル紙芝居」web用ムービー
・青山学院大学オンラインクラシックコンサート
・NHK技術研究所オンライン講義     …など多数あり

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

自分で書いていて改めて思ったのですが…
消費者(ユーザー)は、「心の豊かさ」にお金を払っている…ということ。

『元気に遊びまわる子供の居場所が、いつでも分かるという”安心感”』
『成長する孫をビデオカメラに収める”喜び”』
『子供に野菜たっぷりの美味しいラーメンを食べさせてあげられるという”幸福感”』
『友達とおいしいお菓子を食べながらワイワイ話す時間が”楽しい”』
『子供と一緒に遠くに遊びに行けるという”ワクワク感”』
『ダイエットに成功して自信を持って合コンに行けるという”優越感”』

これらを満たす動画コンテンツを作るための土台となるのが「シナリオライティング」です。

第1章「はじめに」にも書きました。
『CGや動画エフェクトの発展により「映像の見せ方」や「クォリティ」は格段に進歩している現在ですが、「動画を通して”人に”伝えたいこと」は普遍的であり、30年前の作品でもいまだ通用する作品はたくさんあると実感しています』…と。

最後に少しだけ自己アピールです。
撮影や編集は技術ですので、ある程度学べば身に付きます。しかし”動画のシナリオライティング”は多くの映像制作経験やマーケティング知識が必要です。今後ますます増えていく動画コンテンツ。

動画制作はもちろんのこと「企画」「シナリオ」「コピーライティング」単体でのお仕事もお任せください。

お待ちしております。

小松健二 ken63miwa@icloud.com


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