サブスクリプションサービスの法人税法上の取り扱い

1、近年広まりを見せるサブスクリプション
サブスクリプションとは、もともとは新聞や雑誌の定期購読を意味する言葉でした。一般的には、定額制で継続課金を前提とするサービスのことを意味します。このため、電車の定期券や会員制スポーツクラブも広い意味ではサブスクリプションといえます。

近年はIT関連以外の企業も導入を推進しています。例えば、航空分野では指定の路線への搭乗と宿泊をセットにしたサービスや、防災分野では食品会社が数か月おきに備蓄食料の提供を行って災害に備えるサービスなど、2020年から2021年にかけて次々に目新しい商品の登場が見込まれています。
 
これらの例から、サブスクリプションの世の中への浸透が肌で感じられるところです。人口減少という状況の中、経済成長が停滞する日本にあってサブスクリプションは市場規模の拡大が見込まれる例外的な分野ともいえます。ちなみにサブスクリプションの市場規模は2018年には約6000億円であったものが2023年には約9000億円に上昇すると見込まれています。数字の上でも急速な拡大が推察されます。

2、サブスクリプションの税務上のポイント
急速な広まりを見せるサブスクリプションですが、これまでの販売モデルと比較すると、サービス運営の難しさも見えてきます。

たしかに、消費者にとってサブスクリプションは一括購入による大きな支出を回避できるメリットがあります。しかし、企業にとっては常に一定水準以上のサービス提供をし続けなければならず、思いのほか企業努力が求められます。

つまり、従来の小売業のように製品を売り切りにするのではなく、継続的にサービスを提供して顧客満足度を維持し続けることが求められるのです。これは企業にとっては大きな負担です。顧客との継続的な関係性。これは良くも悪くもサブスクリプションの特徴を示すところです。

そして、この継続性から派生する問題点が指摘されています。特に、サブスクリプションに関する税務上のポイントとしては、法人税上の取扱いがあります。法人税法ではサブスクリプションであっても一般に公正妥当と認められた会計処理の原則に従って処理されます。

ただ、サブスクリプションの継続性という点から益金として算入すべき時点が問題となるのです。この点については、役務提供が完了した時点というのが原則となります。

具体的に示すと、サブスクリプションによるサービスの提供が「期間に応じた継続的なサービス提供」であれば、そのサービス提供期間が完了するごとに益金として算入することになります。これに対して「ライセンスの販売という形式をとる売切り型のサービス提供」であれば、売上が出た時点での益金算入ということになります。

このように法人税法上サブスクリプションの取扱いについて特段の定めはなく、会計基準と法人税法上の扱いに違いはありません。

ただし、新収益認識基準の導入に伴い、法人税法でも収益計上のタイミング及び計上できる収益金額について見直しが行われています。この動きは新収益認識基準の導入に合わせたものであり、多くの中小企業にとっては今すぐ関わってくることではないですが、今後の動向の推移には注意が必要です。

3、まとめ
サブスクリプションは急速な拡大を見せていますが、実務上は税務をはじめとする諸制度が実際のサービス提供に追いついていない面も否定できませんこのため、担当者の方にとってはサブスクリプションの特徴を把握したうえで、税務や会計の処理を適切に行わなければならず、難しい面が多いです。

もっとも、サブスクリプションは「物を所有せずにサービスだけを享受したい」という消費者マインドの変化を背景にしており、この流れが変わることはないでしょう。そうだとすれば、日頃から情報収集を綿密に行い、制度への理解と自社での適切な運用に努めるしかありません。

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