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住宅地の巨大集落へ~下野谷遺跡

さて今回は、あこがれの場所へ、あの人たちに会いに行ってきたお話を。

ふと東京でできた自由な時間に何をしようかと考えて、西東京市に行くことにしました。以前から行きたかった、国史跡「下野谷遺跡」です。
まずは西武新宿線田無駅からバスに乗り、西東京市の郷土資料室へ。

もともとは小学校だったらしい

ここは西東京市西原総合教育施設という建物にあり、どうやらかつての小学校を再利用している様子。心身障碍者の作業施設も同居しているようで、ちょうど昼時でにぎやかく、元気に挨拶をしてもらいました。
2階が資料室で、5つの展示室(教室)に分かれています。下野谷遺跡の概要や土器などが展示されているのですが、おや?この手作り感は。出土品の展示に専門的な解説や、最新の植物圧痕から探る食生活の研究もあるのですが、地元小中学校の児童・生徒が展示作業に参加しているのです。地域とともに育ち合う博物館活動を目指す私としても、これはとても参考になるものでした。

地元の児童・生徒が一緒に展示をつくります

考古以外の展示室も面白いので、ついつい見入ってしまうのですが、おっと、のんびりしていると約束の時間に間に合わない!と再びバスで駅に戻り、目的の東伏見駅へ。

駅前で出迎えてくれたのは、しーた と のーや。そして・・・西東京市教育委員会の、亀田直美さん。
駅から遺跡まで、某有名タレントがブラブラする番組さながら、地形などを確かめながらゆっくりと案内していただきました。遺跡を訪ねる時は、こうやって周辺を眺めながら、地形を確かめながら行くのがいいですね。どうしても自家用車で乗り付けてしまうと、遺跡の佇まいが実感できないものですから。
史跡公園の中では、ジオラマや写真などを使い、亀田さんのわかりやすい説明をお聞きします。遺跡の案内というのは、どのくらい地下のモノや、当時の情景を想像してもらえるかがポイントなのですが、住宅地の中の遺跡ですから、とても難しいと思うのです。けれどさすが、さすが!本当にわかりやすく、楽しくお話してくれるのです。


この台地の上に下野谷遺跡が広がっています
やってきました下野谷遺跡


わかりやすい立体模型

史跡公園は、ただいま絶賛工事中!春には縄文時代中期の復元家屋が2棟、完成するようです。こちらも最新の知見に基づいた計画に沿って進められるとのこと。


ただいま工事の真っ最中!

それにしても驚くのは、この街の中に遺跡があるということ。もっとも街なんか後からできたのだから、縄文人も現代人も住みやすいところに住んだというだけのことなのだけど、山麓の遺跡を見慣れた目には、その景色そのものが新鮮というか驚きなのですね。縄文と現代の共存。ある意味では、私たちの生活のすぐ足元に、5千年前の暮らしが眠っていることを、これほど強く実感できる場所もないかもしれません。
いま私の富士見町でも、遺跡の保存・保護に向けた動きを加速させています。「遺跡を守る」と口では簡単に言えますが、その最前線に立つ我々にとって、現実は本当に厳しいものです。ましてやこれだけの開発の中にあっては、並みの努力では進められません。小さな一筆も未来に残し伝える大切な一歩なのです。

遺跡保護を仕事にしている人が見たら、鳥肌が立つ光景

古墳のような目に見える構造物を持たない縄文集落を保存し、そこで当時のことを学ぶためには、どのように保護を進めて整備していくのが良いのか、よく考えるのです。復元家屋や建物をたてたり、地面に遺構の表示をしたり、当時の植生を復元したり、この下野谷遺跡でも公開している最新のVR技術を用いたアプリによる体感だとか。私は周囲の景観を守ることも大切なことだと考えていますが、下野谷遺跡の実践は環境の中でどのような手法が良いのか、丁寧に考えられていて本当に勉強になります。


案内していただいているときに、近所の方が通りかかりました。「こんにちは、うるさくてすみません、工事、もう少しですから」とすかさず挨拶する亀田さん。ご近所さんもにっこり笑って「いいんですよ~」と仰る。
この距離感、大切なのは地域の生活の中に遺跡があることの、この距離感だと思うのです。史跡公園の管理は大変です。土地に関する制約はもちろん、落ち葉や人々の声、虫の発生や犬のフン等々・・・。地域の人の理解と協力がないと、遺跡は守れない、しかも都市型の遺跡であればなおさらです。だからこそ、イベントを開催したり、 “ムラびと”制度をつくったり、とにかく大勢の地域の方々が参加して、遺跡のことを知り、好きになり、地元の誇りとして、自らが育て守るという活動につなげる必要があります。それがこの下野谷遺跡では、しっかりと進められていました。


「この遺跡には、特別な土偶や、すごい土器はないの。普通のムラ。でも住みやすかったから、大勢の人が1000年以上も生活していた、そんな素晴らしい場所なんです。」そう言って亀田さんは笑います。
そう、それは現代の私達にも伝わるし、それこそが幸せなのだと、私たちの未来も照らしてくれるのだと思うのです。あわただしい日程だったけど、元気と勇気をもらいました。

ありがとう! しーた のーや そして亀田さん!


家族もいる!


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