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蕾を摘む

一つ、恋を終わらせた。

恋とは呼べないくらいの短い期間だったが、それでも常に愛おしく想っていたと思う。

カメラロールを遡っていたら、彼が友人とじゃんけんをしている動画が残っていてそこに映る彼の笑顔がすごくすごく輝いていた。彼が顔を赤くして目を細めて笑っている姿が大好きで、みんなで笑っていても自然と彼に目が行く。地元のことが大好きで、仲間を大切にしていて、中心になって何かをする人ではないけれど、みんなから愛されている所も好きだった。
この人の魅力を私だけが気づいていればいいのに、とか微笑む先が私だったらいいのに、と何度も思ったけれど、誰が見ても魅力的な人だと思う。彼はいつも男の子から羨ましがられ、女の子を虜にしていて結局、私もそのうちの1人だったのかもしれない。 

彼にしか目がいかなくて、引き込まれていきそうになる感覚ははじめてだったから、しばらくはこれが恋だと気付かなかった。こんなにも笑った顔が頭から離れないことなんて今までなかった。彼が笑う先を知りたいと思った時に「あぁ私、彼のことが好きなんだ」と気付いた。

彼に惹かれている間、私は何もできなかったけれどそれでも友人としての関係を深められたからよかった。好きを伝えてこのまま会いづらくなるよりも、友人としての関係を続けて、また夏に会える方がいい。彼とまた、夏に会う約束ができただけで十分。それ以上を望んだら、進めてしまったら、これまでの関係が一瞬で崩れてしまいそうな気がした。

あなたの笑った顔がすごく好き。
その一言だけでも伝えるべきだったかな。それさえも言えないほどこの恋は進んでいなかったけれど、彼がこの町を出て行った後もずっと想っていたし、元気でいてほしいと願っていた。この恋を自分の中で一春の思い出にしたとしても、また夏に彼に会えばその笑顔に惹かれると思う。いつか、友人としてあなたの笑った顔が好きだと伝えたい。いつまでも笑っていてほしいと。笑い方を忘れたらいつでも会いに来てと。

drunk text/Henry Moodie

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