少し肌寒い夏の訪れ

こんにちは。文章書くのも少しずつ慣れてきました、ふうたです。

コロナでずっと家にいるので、歌詞の考察がはかどりますね笑

今回はEP「謳おう」より、「保土ヶ谷バイパス」です。

岩沢さんの名曲は弾き語りが煌りますよね...雰囲気がすごく好きです。

この曲を解釈する前に注意しなければならない点は、Aメロとサビで時間軸が異なることです。

つまりサビは全て現在形で描かれていますが、Aメロは過去の時制で描かれています。つまりこの曲は、自分の過去を回想している曲だということです。

過去形で描かれるAメロから、主人公の過去を探ってみることにします。

"流れ出る涙の意味を知りたくて いろんな人に出逢いました
時に傷つくことも そしてかけがえのない物も あなたに貰いました"

時々無性に泣きたくなることがありますよね。悲しいとき。虚しいとき。嬉しいとき。

涙は人を強くするだとか優しくするだとか言いますけど、実感できるものじゃありません。

どうしようもないほど辛くて流した涙、途方もない努力が実った喜びで流した涙。わざわざ出る必要もない涙が一体何のためになるのか。

"意味を知りたくて"人と出逢ったというよりは、いろんな人と出逢った過程で、涙の意味を知りたいと思うようになったのではないでしょうか。

出逢った人たちの中には、自分のことを傷つけてくるような存在も、本当に大切と思える存在もいたはずです。

そんな存在は、人生に良い意味でも悪い意味でも色をつけます。

その一つ一つの色が、今の自分を形成している。ふと振り返るたびに、流した涙とともにその色を思い出すんでしょう。

"雨降る夜は一人立ち止まり これが全てと知らされました
向こうにあったはずの星屑のことなど忘れて 
これが全てと知らされました"

すごく辛い時とか、不安に襲われた時、これから進む先に待っている小さな希望一つ一つの輝きに気づけないことがあるんですよね。雨雲に遮られてしまっては綺麗な夜空なんて見えません。

そして幾度も絶望を覚悟します。

もう自分には何もないんだ、進むべき道は断たれたんだ。

"これが全て"。それ以上のものはどこにもないんだって、そう思うとやりきれなくなってしまうんですよね。

"少しの言葉の方がいい それが嘘でないのなら"

言葉はいつだって、嘘を引き連れてやってきます。

もちろんそこには建前だとか恥じらいだとか、その人それぞれの理由があります。

もちろん自分自身も、様々なやむをえない理由で嘘をついてきたのであろうと思います。

でも、そんな自分を振り返っていい思い出だったなんて思うことはないはずです。

自分を伝えようと余計な言葉を話して嘘をついてしまうくらいならば、本音をほんのちょっと話せるくらいの方がいいんです。

振り返ってそう思うほど、これまで自分は多くの嘘をつき、嘘をつかれて生きてきたんだと感じてしまうんでしょう。

"退屈なことばかりだと繰り返しているうちに 
随分時間が過ぎていました"

"退屈"なのは、本音でぶつかっていないからでしょう。振り返れば様々な理由をつけて自分の気持ちに嘘をついてきました。

意味を持たぬ言葉が紡いだ時間はあまりにも早く過ぎ去り、気づけばもう戻れないところまできてしまったのかもしれない。

振り返るたび、迷うんでしょうね。あの時の判断は間違っていたんじゃないか、どうしてもっと素直になれなかったのか。

戻れるはずもない時間をさまよう、そんな時間も時には必要なんです。

"過ぎゆくままに時の流れの中で いろんな自分を探しました
僕は失敗したんだとその時思っていたら 僕はここにいました"

"いろんな自分を探し"たのは、結局本音の自分を見つけられてないから。もしくは、どの自分が本音なのかわかっていないから。

本当に自分がやりたいことを探して、様々なことに挑戦してみたんでしょう。でもどれもしっくりこなかった。本当の自分だとは思えなかった。

でも、いろんな自分を知ることで、初めてわかることもあるんです。

どんな自分も、紛れもない自分であること。

嘘をついた自分も、うまくいかない自分も。泣いてる自分も笑ってる自分も。

全部ひっくるめて"僕"なんだと、いろんな自分を経験して初めて気づくんです。

振り返ってみれば、自分のあり方を模索したことも、自分というものを見つけたことも、すべてが"僕"の人生を形作ってきたんですね。

"どうにも割り切れないことがあるんです どうにもやりきれないんです"

"僕"は、これまでいろんな人と出会い、いろんな悲しみを経験し、いろんな自分を探してきました。そしてそのすべてが、今の"僕"を形成していることも、わかっているはずです。

それでも心の中では、本当に今の自分でよかったなんて納得できない時があります。

あの時こうしていたら、もっとより良い「今」になっていたんじゃないか。

存在しえない別の「今」のことを思うたび、耐えきれなくなるんでしょう。

"だから今日はそっと回り道を"

それでもまだ、叶わなかった別の自分のことを思ってしまうのは、そこに本当の自分が、探し求めていた自分の姿が、存在すると思っているからではないでしょうか。

たとえ苦しくても、やりきれない思いに襲われても。いつかのことを思い出してしまうんでしょう。

いつもならまっすぐ帰ってしまうところだけれど、今日はもう少しだけ。遠回りして、自分を探していたい。

"少し肌寒い夏の訪れ"

この部分だけ、曲の中で異色なんです。これまでは全部、主人公の回想シーンや、気持ちを表すシーンだったのに、この部分だけが情景描写なんですから。

曲の中では一切登場しませんが、"肌寒い"というのは風の存在を暗示しています。

車に乗って走っていれば、もちろん風を感じます。

きっと風が、主人公に様々な気持ちを、出来事を思い起こさせたんじゃないかなと思います。

楽しかったことも、辛かったことも。

夜風を浴びるたび、自分を見つめ直すんです。

今夜は少しだけ遠回りをして、夜風にあたっていたい。

少し肌寒く感じるくらいが、ちょうどいいんでしょうね。


もうすぐ夏がやってきます。

夜風が心地よくなる季節になりますね。









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