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妄想日記⑰もしも私がおじさまだったら。

ブランデーを紅茶に1垂らし。
もう1垂らし。
あと1垂らし。
そんなことをしていると、インターフォンが来客を知らせた。
ドアを開けると小夜がいた。
「ポスト見ました。ノートと原稿用紙の追加、ありがとうございます」
サイドの髪を三つ編みにしてハーフアップにしていた。
耳元がさみしい。
「あれで足りるかい?」
「はい。たぶん、暫くは。読書感想文は簡単に書けるのですけど、小説はなかなか。ほら、私、働いたことがないでしょう。見てきた世界が狭くて。学生の話ばかり書いてしまうんです。だから、聡一郎さんは退屈してしまうかもしれません」
「いいじゃないか。楽しみにしているよ」
「はい。期待に応えられるよう頑張ります。それでは行ってきます」
「待って」
戸惑う彼女を尻目に俺は部屋の奥へ行った。古い引き出しからイヤリングを取り出す。
「これを」
「え?」
小夜の耳に星型のイヤリングを優しくつけた。キラキラと揺れている。
「似合うよ。あとで鏡で確認してごらん」
「ありがとうございます。こんなことしてもらったの、初めてでドキドキしています」
ふっくらとした頬が見る見る赤くなってくる。
その頬にキスしたくなるのを抑えて、俺は彼女を図書館に送り出した。

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