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緑が地に満ち 従わせ もたらしたもの

海の中に最初の生物が生まれ、光合成をするバクテリアが生まれ、そのなかから光合成の副産物として酸素を発生するシアノバクテリアが生まれたのが、今から約27億年前のこと。
やがて、光合成をするシアノバクテリアを体内に共生させた生物から植物が生まれます。

大気の中に酸素が満ちはじめると、上空の酸素が紫外線のはたらきでオゾンに変化。オゾン層が形成され、生物にとって有害な紫外線を吸収するようになると、酸素を使って呼吸をし、活発に動くことのできる好気性生物が生まれ進化していきます。生物の地上進出は約4億5000年前に始まりました。

地球において生物の地上進出を可能にしたのは植物であり、植物が太陽のエネルギーを使ってつくる有機物は、食物連鎖の出発点となります。
植物の光合成がなかったら、地球上には酸素も有機物も生まれていませんでした。

私たちも無意識に絶えず行っている「呼吸」。息を吸って体に取り込まれた酸素は、細胞内で有機物を分解し、エネルギーを生み出します。生物が多細胞になり、身体を大きくするためには莫大な量のエネルギーが必要です。
地球に最初に誕生した生命は、増殖に酸素を必要としない嫌気性の細菌であったと考えられていますが、嫌気性代謝では十分なエネルギーが確保できないため、複雑な生物へと向かう進化の波に乗ることができませんでした。

多くの生物は酸素がなければ生きていけませんが、酸素は反応性が高く、生物を構成する有機物を酸化するという毒性も備えています。
呼吸によってエネルギーが生み出されると、細胞などにダメージを与え身体を酸化させる活性酸素も生成されてしまいます。生命維持や成長の隣りには老化や病気の原因が潜んでいるのです。
人は体内に蓄えられている糖、タンパク質、脂質を燃焼させてエネルギーに変換しているのですが、それはつまり、生きていくために私たちは常に燃え続けているということ… まったく、命の灯とはよく言ったものですね。

地球に酸素ができたことは植物の大きな功績なのですが、植物自身にとって都合の良くない奇妙な反応も引き起こしています。
光合成細菌は空気中の二酸化炭素をつかまえる「ルビスコ」という酵素を獲得したのですが、ルビスコは二酸化炭素だけでなく酸素もつかまえるという性質があります。捕らえられた酸素によって光呼吸が行われるのですが、この呼吸はエネルギーを生み出さず、むしろエネルギーや器官を消耗し、光合成のスピードを低下させてしまいます。なんだか折角得られたエネルギーを無駄使いしているようにも見えるのですが、これを阻害すると植物は枯れてしまうとか…
他にも、光合成に必要な太陽光ですが、あまりにも強すぎると光合成システムを損傷させる光阻害という害悪となってしまいます。

植物は生きるためのエネルギーを光合成で得ていますが、植物が受ける太陽光のうち、光合成に使える光(光合成有効放射)は約45%。そのうち光合成によって化学エネルギーとして固定される割合は、光合成有効放射の持つエネルギーの5%くらいだとされています。
という事は、浴びた太陽光のほんの数パーセントしかエネルギー転換出来ていないことになります。
そのため植物は、エネルギーをなるべく使わないよう動かずに生きるという方法を取ることになりました。自らの能力とエネルギーを効率よく活用して環境に適応していかなければ植物も生きていけません。

植物は動けないからこそ、動物以上に環境に適応しなければならないのですが、生息環境から影響を受ける一方、環境に影響を与える「環境形成作用」も持っています。

じっと動かずに生き続けることで繁栄を築いてきたように見える植物ですが、共生によって葉緑体が移る性質があるため、むしろ植物として生存しているのではなく、あえて「植物になる」「植物化する」のだとも言われています。

植物的な生き方、植物として生きることを選んだ生物たち…

地球上に最初に酸素を作った植物の祖シアノバクテリア。
確認できる証拠からは27億年前に出現したとされていますが、最も古い推定によると約37億年前にまで遡るといわれています。
宇宙の年齢が約138億年といわれているので、そのおよそ1/4もの間、生息し、ついには地球を生命溢れる星へと導きました。

偉大なる生命の祖に改めて感謝。

参考文献:
植物が地球をかえた! (植物まるかじり叢書 1)
葛西 奈津子 著 日本植物生理学会 監修

日本植物生理学会 監修 植物まるかじり叢書 2-5
2 植物は感じて生きている
3 花はなぜ咲くの?
4 進化し続ける植物たち
5 植物で未来をつくる

2022年9月23日 秋分

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