見出し画像

2022年 JFL_第26節を終えて

大阪・奈良そしてカズ

 全30節で行われる JFL 日本フットボールリーグも26節まで進み、コロナ感染などで少しバラついた消化試合数も完全に揃った。注目の「J3参入」可能性のあるチームも、(残り4ゲーム全敗でもしない限り)現在2位のFC大阪と3位の奈良クラブの2つにほぼ絞られた。
 JFL からJ3に参入するには、リーグ戦の上位4位以内、かつJリーグ百年構想クラブの中で上位2位までという二つの成績条件と、プロのサッカークラブとしての自律的経営能力を問う二つの条件合わせて四つの条件をクリアする必要がある。
 既に述べたように、大阪と奈良の両チームが「成績条件」を満たすことはほぼ確実なので、問題は後者の条件に絞られる。その一つは運営法人の収入と負債に関するもので、こちらは予め対策可能なことから、本気でJを目指すチームであれば問題ないはずである。
 実は、意外にと言うか結構厳しいのが二つ目の条件「リーグ戦におけるホームゲームの観客動員が1ゲーム平均2000人以上であること」なのである。2019年のリーグ戦では、4位となった武蔵野がこの観客数がクリアできないことを理由に2020年に向けての参入申請自体を取り下げている。その後、2020、2021年に上位となって翌年参入した宮崎やいわきは、新型コロナ対策で無観客開催を迫られたことでこの条件が外され、ある意味救われた形でJ3に進んでいる。
 では、26ゲームを消化した時点でちょうど半分の13がホームゲームであった今年の大阪と奈良はどうなのだろうか。 JFL の公式記録によれば、それぞれのホームゲーム観客数の合計はFC大阪が 24,181人、奈良クラブが 31,144人となっていて、奈良クラブは2ゲームを残して既に平均2000人超えを達成している。またFC大阪も最終節のホームゲームのスタジアムを 26,000人収容の花園第一に変更し動員を強化することで、もう1ゲームと合わせてあと必要な「5819人」は確実に達成すると見られているので、この両チームが揃ってJ3に進む可能性は非常に高いと言えるだろう。
 ところで、このホームゲーム観客数を見ていると奇妙なことに気付かされる。それは大阪にも奈良にも極端に観客数の多いゲームが一つだけあって、どんなに極端かと言うと、FC大阪の合計 24,181人のうち半分の 12,152人、奈良クラブの合計 31,144人の46%にあたる 14,202人がその1ゲームで集めた観客なのである。
 実は、その対戦相手は共に鈴鹿ポイントゲッターズというチームであり、鈴鹿はさらに参入1年目で下位に低迷するクリアソン新宿というチームがなんと国立競技場(確かに新宿区にあるが)で開催したホームゲームにも対戦相手として登場、そのゲームで 16,218人という JFL の観客動員新記録を達成しているのである。
 言うまでもなく、鈴鹿ポイントゲッターズにはあの三浦知良が所属している。そして疑いもなく、これらの大観衆は「カズ=三浦知良を見たい」として集まった観客だったのである。チームとしての鈴鹿は運営会社の不祥事によって百年構想クラブの資格を剥奪されているので、仮に優勝してもJ3には参入できない。また、55歳となった三浦知良も流石に衰えは隠せず、ゲームに登場するのは終盤の15分程度に限られている。
 それでも、彼にはこれだけの観客を惹きつける「力」がある。それは決して単なる「名前」や「伝説」ではなく、実際にピッチ上に飛び出してくる彼の全身から発散される活力や、サッカー小僧そのままの笑顔が人々の心を鷲掴みにし、たとえ15分だけでも観客全てを幸せな気分に引き込んでくれるからである。実はFC大阪のゲームでは彼はコンディションの問題でメンバー外だったのだが、開始前からピッチ上に姿を現して満員の観客に全身で応えていた。
 すなわち、今年FC大阪と奈良クラブが順調にJ3に行けるのは「カズのおかげ」と言っても過言ではなく、今年の JFL の活動の全てに渡ってカズの貢献が大変大きなものであったことは間違いないのである。たとえ JFL の中位チームに所属していても、彼は間違いなく日本サッカー界の「宝」である。

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?