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小説 まとめ

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自作の小説をまとめました。ほとんどは2分で読める短編です。
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記事一覧

辺境の惑星

(な、何だこれは……)  ビリーは黄金のビリケン像を眺めて唖然としていた。 なぜなら、少し…

4

妖(あやかし)

短編ですが2分では読めません。 2013年の第一回『さばえ近松文学賞2013 恋話(KOIBANA)』で…

7

未来の生、永遠の死

「先生、私たちは生まれ変わったの。この新しい世界で、面白可笑しく生きていきましょうよ」 …

7

花火と観覧車

 花火は嫌いだ。花火に限らず、夏のイベントには、なるべく関わりたくない。理由は私の二大ス…

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Open

 ユニコーンは待っていた。  深く暗い海の底で、遠い潮騒と、己の鼓動の音を聴きながら。  …

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Message

 ふふっ……クスクス……。 “ 笑ってる。小さな女の子……由奈(ゆな)? “  江里(えり)は…

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すきま

 めったに外泊しない奥さんが、郷里の同窓会とかで、今夜はお留守。家にはあなたと私、それに高校1年と3年の、2人の女の子だけ。子供たちはとっくに手なずけてあるから、全く問題ないわ。今日こそあなたに、私の魅力を徹底的にわからせてあげる。  足音を忍ばせ、あなたの部屋にそっと近づくと、扉の下から明かりが漏れていた。いつものように就寝前のひと時、一人でパソコンで遊んでいるのね。  私は前足で扉を叩き、とっておきの甘えた声であなたを呼んだ。  次の日。仕事から帰るなり私を抱き上げ、

熟成

 去年の12月に良枝が風邪を引いたとき、40年連れ添った夫はこう言った。 「普段から体を鍛え…

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赤いキツネと緑のタヌキ

 赤いキツネは考えていた。  暗い。ここはひどく暗い。見上げても星さえ見えない……。  で…

6

メリークリスマス  〜全ての魂に安らぎあれ〜

 11月下旬。冷えて澄み切った街の夜空に、クリスマスのイルミネーションが華やかな彩りを添え…

6

猫ちがい

「近頃の若い者(もん)は」とか口にすると、それだけで年寄り扱いされるから、言いたくはないん…

9

月夜の火鉢

真夜中の公園から、香ばしい匂いが漂ってきた。 餅だ! 間違いない。正月によく食べる、白く…

6

夢見るロボット

 吾輩はロボットである。名前はまだない。出荷前だからだ。倉庫にずらりと並んだ同型のロボッ…

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夢の国の木馬

 そこは、子供なら誰もが憧れる夢の国でした。広い敷地に様々な遊具や乗り物がそろい、立派な洋風のお城や、緑の森もあります。楽しい音楽、甘〜いお菓子。子供たちは、まるでおとぎ話の中へ入り込んだような気分になり、幸せな一日を過ごすのでした。  広場には、12頭の木馬が回るメリーゴーランドがありました。馬たちの轡(くつわ)や鐙(あぶみ)は金色で、ピカピカに光っています。手綱や鞍は、それぞれ赤や緑、黄色や青など、鮮やかな色彩で飾られ、それはそれは華やかでした。  馬たちは皆、自分の