飛浩隆「自生の夢」読了、覚書


飛浩隆『自生の夢』(2019/4/15読了)

星雲賞受賞作二編を含む短編集

海の指/星窓/#銀の匙/曠野にて/自生の夢/野生の詩藻/はるかな響き

「銀の匙」から「自生の夢」含む「野生の詩藻」までの連作がなんと言っても面白い。ウエラブル書字端末cassyが作り上げる新たな言語世界が既存のweb世界、ひいては現実を崩壊させていく。その引き金になるのが「忌字禍(イマジカ)」。忌字禍はすべてのテクストに含まれる非言語性の何か。書いては捨てられる何かに動的なシステムが加わることで既存の文字を食い複製してすべての書字活動を崩壊させる。これに対抗しようと復活させられたのが大量殺人者間宮潤堂である。間宮潤堂は言葉で人を殺すことができる能力者ある。忌字禍に食われ死亡した早逝の詩人アリス・ウォンは間宮との対面を果たす。二人の邂逅で間宮の真の姿が明らかになる。

連作の中でも中核となるのが星雲賞受賞作「自生の夢」。2009年に早逝した伊藤計劃に寄せられた短編だが、web空間のテクストがAIによって他律・自律的に生成されていく様が体感できてとにかく楽しい。建築的な言葉遊び。そこに伊藤計劃の分身?だと思われる間宮潤堂の登場で、ゾクッとさせられた。「死ぬのが早かったねえ」というアリス・ウォンの言葉にほろり。私の貧困な想像力では忌字禍の正体がいまいちつかめず悔しいけど、時間をおいて再読したい一冊として覚えておこう。

#SF #飛浩隆 #自生の夢 #SF大賞受賞作




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