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初めて会う人を訪ねて、行ったことのない精神科病院に行くということ


3人姉妹の末っ子だとか、ヤングケアラーだったとか母子家庭で育ったとか、育った家族に関する自分のアイデンティティみたいなものは、何かしらみんなあるんじゃないかと思う。

僕の場合それはいくつかあって、自死遺族であり、父子家庭でもあったりするのだけど、一番しっくりくるというか、今の自分にとって大きな意味を持っているのは「精神病院に入院した人」の家族だということ。

亡くなった母も僕が生まれる前に精神病院に入院したことがあったようだし、祖母や兄も、何度か精神科に入院していた。入院する前にたいてい警察にもお世話になったから、「警察や精神病院によくお世話になった家族」とも言えるかもしれない。


4年くらい前からボランティアを続けているNPOの方に、この前インタビューをしてもらって、自分の家族について語らせてもらった。

大阪精神医療人権センターというNPOで、面会を希望する大阪府下の精神科病院に入院している方を訪問して話を聞くボランティアをして、かれこれ4年ほどになる。

といっても、間1年半くらいはコロナで面会もできなくて、2ヶ月くらい前に久しぶりに面会に行った。

これまで行った病院は3つ。オンライン面会をあわせても、面会した人は10人も行かない。たいていは一人の人に、月に一度くらいのペースで継続的に面会に行く。

家族が入院していた病院も合わせたら5ヶ所くらいの病院にお邪魔させてもらった。どれも大阪府の病院なんだけど、建物の築年数も、病院の規模も雰囲気も、匂いもそれぞれ違っていて、もちろん病院のある地域もバラバラで、新しい病院に行くのは毎回楽しい。


家族でも友達でもない人が面会に行っても、人権センターのボランティアだと伝えると病院の方は快く中に通してくれて、毎回もうひとりベテランのボランティアさんとふたりでいくので、あまり緊張もしない。

今日はどんな人とおしゃべりできるんだろう。どんな背景で入院をして、どんなことに悩みや不満を抱えているのだろう。

いつも楽しみでわくわくしている。


誰でも入れる場所じゃないから

日本の精神科病院、中でも特に入院患者を受け入れる病院は、あまりオープンじゃないところも少なくない。都立松沢病院というところは、病院内に図書室のようなところがあったりして、比較的開かれた場所のようだけど、多くの病院は敷居が高い。

だからこそ、ボランティアを通していろんな病院に入っていけるのはありがたいことだし、接点が無い人にはおそらくあまり想像のつかないような経験ができているのは、家族が何度も精神病院に入院してくれたおかげだなと思う。


たまには遠くを眺めてぼーっとしようね。