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「約束は守らなきゃ」

 つい先日、「法制係にお電話でーす」という同僚からの呼びかけに応じ、電話に出たところ、お話が長めの紳士と接することになり、久しぶりに当惑した孤守です。

 かいつまんだ話をすれば、彼は、とある公的機関の対応に不満を持ち、改善申入れの要望書を提出したという旨の話を(3回、いや4回ほど…)され、「これに対する応答義務があるんだよね」と確認されてきました。皆さんならどう対応されますか?
 今回は、この「応答義務」にフォーカスしてお話しします。よろしくどうぞ。




 「応答義務」というのは、会話にしろ、文書のやり取りにしろ、言葉のキャッチボール(売り言葉に買い言葉になるとただの喧嘩)において、ボールを相手に投げ返す必要があるのか否かの判断になります。

 ちなみに私は「任意の申入れに応答義務を明文化した条例規則はございません。あるとすれば、道義的な部分だけではないでしょうか。」とお答えいたしました。

 我々が「応答義務」に拘束されるケースは大きく分類すれば、2つあると考えてもらって結構です。
1)法令や市町村が定める条例規則に基づく申請であって、当該申請に市町村長等が諾否の応答をすべきこととされているもの(○○市行政手続条例2条5号)
2)自らした言動と異なる行為を禁止する禁反言の法理(きんはんげんのほうり・英語では「エストッペル」と言います。)に反するもの → 相手の求めに対し、「近日中に回答します」などと約定した場合、この約定に拘束されます。




 皆さんが陥りやすい落とし穴はふたつ目の禁反言の法理ではないでしょうか。
 例えば、地方税の担当職員が、税条例の規定上は免除にならないのに、ある人に対して、特別措置の適用を受けられ税が免除になるという誤った助言を行ったとします。その人がそれを信じて土地等を購入し、事業をはじめたところ、実は特別措置の適用対象にはならないとして課税することができるのでしょうか。課税行為は、地方税に関する法令には適合していても、禁反言の法理からできないこともあり得ます。法令に形式的に従うことがかえって違法になり得ることを示しています。
 これは、決して机上の論理ではなく、実際に判例(最高裁の判決例を指します。)で採用されているケースがありますので、注意が必要です。

 相手側の誘導や恫喝に流されて、変な約束(間違い、勘違い、その場しのぎのエクスキューズであると最悪です)をしてしまうと、その変な約束に拘束されてしまいます。この禁反言の法理、契約約款の中では信義誠実の原則として謳われていますから、知らない間に皆さん、契約事務で使われているんですよー。

 ですので、そういった約束がなければ、そもそも応答する義務がないのですから、「応答しません」と毅然と答えることもできますし、行政として応えるべき事情(情にほだされた浪花節な解決になりますので、やめておいた方がいいと思います)があるのであれば、実現可能なスケジュールで応答することを約束しましょうね。

 今日のところはこのへんで。ではでは。

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