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醜く、そして美しく|アメリカン・ビューティー

今年から使い始めたSUNNY手帳には『MY WATCH LIST』のページがあり、観たい作品を24作品分書けるようになっています。
わたしが書いたのは2000年から2023年のアカデミー賞作品賞のタイトル。毎年3月に発表されるため今年の分は後から書き込む予定です。アカデミー賞には「大賞」が無いので、数ある賞の中から注目度の高い「作品賞」に絞ってみました。

『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』『シェイプ・オブ・ウォーター』の3作品は観たことがあるものの、それ以外の20作品(+1)は未鑑賞。
普段自分が観ないジャンルを観るきっかけにもなるし面白そうだぞ、ということで2000年から順番に観ていくことにしました。
1ヶ月に2作品ずつ観ていけば1年で観終わる計算だったんですが、2004年の『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』って3部作のうちの3作目なんですね。シリーズものって最初がいちばん面白いってよく言われるのにすごいことです。そういうわけなので24作+2作の26作を1年間で観られたら良いなと思っています。
でも、どうしても苦手な内容だったら潔く諦めますよ。あらすじを見た感じだと『ノーカントリー』『ハート・ロッカー』『それでも夜は明ける』あたりはキツそうな気がしています。どうかなあ。

さて、記念すべき1作目として観たのは2000年に作品賞を受賞した『アメリカン・ビューティー』。
作品賞だけでなく、撮影賞、脚本賞(アラン・ボール)、監督賞(サム・メンデス)、主演男優賞(ケヴィン・スペイシー)も受賞しています。製作はドリームワークス。

レビューに「胸糞映画」「みんな狂ってる」等と書かれていたのでそわそわしていたんですが、わたしは結構好きでした。観てから2週間、ずっとこの映画のことを考えています。

内容としては、アメリカのとある中流家庭の崩壊です。
ケヴィン・スペイシー演じる主人公のレスターが、まあ気持ち悪いんですよ。年頃の娘に対して友達感覚なことにまずちょっと引いてしまう。娘がそれで良いなら良いんだけど娘もうんざりしているんですよね。それどころか娘の友達のアンジェラに心惹かれて「ジェーン(娘)の友達なら僕の友達だ」なんて言いながら近付こうとします。ゾッとする。思わず邦画『友だちのパパが好き』が浮かんじゃった。アメリカン・ビューティーの場合は『パパは娘の友だちが好き』なんだけど。

そこから少しずつレスターの家の崩壊が始まっていきます。ファンタジーではなくちゃんと日常の延長なんですよね。
妻の不倫、友人(ジェーン)の父親を誘惑するアンジェラ、誘惑に乗っかり身体を鍛え始めるレスター、ジェーンを盗撮し続ける隣人のリッキー。

そんな映画なのに、なぜ好きだったのか。
アメリカン・ビューティーというのはバラの一種なんだそうです。美しいバラには棘があるなんてよく言いますが、人間も同じです。良い部分もあれば悪い部分もある。この映画に出てくる登場人物はみんな少しずつ変なんですが、それぞれほんの少しずつでも親しみを持ちたくなるスパイスがまぶしてあるように感じます。最初から最後まで「美」と「醜」の映画だったんですよね。美しく、醜く、だけどやっぱり美しかった。

たとえば、わたしがいちばん怖かったのは隣人のリッキーなんですが、隣の家から盗撮を続ける彼が「いちばん美しいものを観せるよ」と言って撮影した動画を観せてくれるシーンがあります。その動画を観た時に、これを美しく思う感性の持ち主なんだなあと惹かれてしまう部分があるんですよね。絶妙な良いシーン。美しい動画。

あとはやはりラストです。
この映画は冒頭レスターの語りから始まり、物語の結末が分かる作りになっています。結末が分かっていても「誰が」「どうして」「どのように」が分からないからこそ最後までどきどきします。そしていざその結末を目の当たりにした時にレスターに対して浮かぶ感情が、前半とラストで大きく異なるんですよね。
そう、そうなの、わたしはレスターのその表情が見たかったんだ。これをずっと待っていたんだ、って。そう思ってしまうんです。なるほど、これがアカデミー賞なのね、とエンドロールで少し涙してしまったほど。

「みんな狂ってる」のかもしれないけれど「みんな狂ってる」では終わらないし、胸糞なだけでも決してない。誰かに共感できるわけでもないし、特別好きな登場人物がいるわけでも無いけれど、わたしは美しい映画だなと思いました。

はあ、面白かった。これから観ていくアカデミー賞作品も楽しみです。
今日は2001年の作品賞『グラディエーター』を観るよ。

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