マガジンのカバー画像

短編小説集

9
短編小説を載せております。〈雪と記憶〉という副題はテーマの共通性を意味しているものなので、順番通りに読まなくても問題ありません。掲載物は有料設定ですが投げ銭方式です。
運営しているクリエイター

2017年4月の記事一覧

【短編小説】最果て

  ※有料設定になっていますが、投げ銭方式なので全文無料で読めます。  車両内には春さきの心地よい日光がさしている。ユウイチはいっこうにおさまらない動悸をおさえながら、寒気にたえかねてのそりのそりと窓に背中をおしつけた。むかいの席には不機嫌そうにうつむいている初老の男がすわっている。腕組みをしてまたをひろげているので、肥満気味の腹部がはっきりとうかがえた。あたたかなユウイチの座席にたいして初老の男の座席は日光があたらなくて、視覚的にもさむざむしかった。現に腕組みをする手は暖

有料
100