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短編小説集

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短編小説を載せております。〈雪と記憶〉という副題はテーマの共通性を意味しているものなので、順番通りに読まなくても問題ありません。掲載物は有料設定ですが投げ銭方式です。
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#記憶

【短編小説】雪の向こうに見るものは ~雪と記憶~

  ※有料設定になっていますが、投げ銭方式なので全文無料で読めます。  マンホールの蓋を踏み、靴底が音をたててすべった。私はとっさにバランスをとって間一髪で転倒を回避した。踏みこむ瞬間までマンホールに気がつかなかったのは、視力のわるさだけではなく、道を白一色に染める雪にかくれて見えなかったことにも原因がある。春には近場の桜並木から散りおちた花びらでいろどられ、夏には灼熱の太陽に熱せられて陽炎がたちのぼり、秋には木枯らしにのって枯葉が乱舞する。季節ごとに様相を変える近隣の路地

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【短編小説】救われた日 ~雪と記憶~

  ※有料設定になっていますが、投げ銭方式なので全文無料で読めます。  新年早そう世のなかは白銀に染まった。窓から顔をだして見わたすと、近隣の駐車場ではあらゆる乗用車が白い帽子をかぶっており、向かいのマンションも氷柱を鼻水のように垂らしている。廊下でものめずらしそうに雪景色を見やる子どものしたでは、人がとおれる道をつくろうと不慣れな雪かきに精をだしている男衆がうかがえる。欠勤したかわりに除雪にかりだされたのだろう。日ごろよりつきあいのある顔もある。私も手伝おうとしたのだが、

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【短編小説】ヒマワリの季節に ~雪と記憶~

  ※有料設定になっていますが、投げ銭方式なので全文無料で読めます。  父方の血筋は東北を起源としている。そのなかでも、ゆかりの地といわれる宮城県にはたくさんの親類があつまっている。おさない時分のタカフミはよく両親にともなわれ、北国に居をかまえる親類の家にあそびにでかけていた。思い出を語りだせばきりがないが、彼の記憶にもっとも色あざやかに焼きついているのは十歳の誕生日を間近にひかえた年末である。そのとしは地元の神奈川県ではめったにない大雪にみまわれ、たまには北国でとしをこす

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