【短編小説】雪の向こうに見るものは ~雪と記憶~
※有料設定になっていますが、投げ銭方式なので全文無料で読めます。
マンホールの蓋を踏み、靴底が音をたててすべった。私はとっさにバランスをとって間一髪で転倒を回避した。踏みこむ瞬間までマンホールに気がつかなかったのは、視力のわるさだけではなく、道を白一色に染める雪にかくれて見えなかったことにも原因がある。春には近場の桜並木から散りおちた花びらでいろどられ、夏には灼熱の太陽に熱せられて陽炎がたちのぼり、秋には木枯らしにのって枯葉が乱舞する。季節ごとに様相を変える近隣の路地